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ep 1

一話あたりの文字数はどの程度がほどよいのでしょうね。

ep. 1 start.



七転八倒という言葉をご存知でしょうか。泣きっ面に蜂でも可。


意味はもちろん、転げまわってのたうち回って苦しむことです。


要するに今の私が置かれている状況のことです。




あちこち体をぶつけたのか、交通事故の影響か、とにかく体を動かすのも一苦労らしい。

あの衝撃は一体何だったのか。

交通事故で骨に日々入ったり内臓が傷んだりしてないよな、と不安に思う。

横になったまま考えていると、誰かが私の肩を掴んで揺すって、って痛いんでやめて下さい。


(ゆさゆさ)


「う~ん、もう食べられない・・・ムニャムニャ」


まだ回らない頭で適当にボケてしまった。


「・・・?そろそろ起きてくれ。君、怪我は大丈夫か?」


薄目がちに様子をうかがうと、どうも頭の打ちどころが悪かったんじゃないかって顔してます。

スルーの達人、救急隊の隊長()です。

ちなみに私は鴨田静()だ。

中性的な顔立ちとあまり目立たないことから、たまに間違われる。何に、とは言わないが。

べ、別に顔を忘れられてるわけじゃないし?ウィットに富んだジョークだし?

・・・・・・口調のせいだとは思いたくない。


あ、隊長が心配そうにこちらを見ている・・・。


「セイって呼んで下さい。大丈夫ですよ、矢でも鉄砲でもッ・・・」


マッチョポーズしたら体中が激しく痛み、たぶんすごく顔が歪んだと思う。

図らずも大丈夫じゃないことを証明してしまった。

というか、体を起こすだけで動悸がするくらい辛いんですけど、交通事故に遭うとはどういうことか、身を以て理解させられた。

隊長さんは苦笑いしつつ、外を指差し、私もつられて視線を向けると


「だ、大自然だー・・・。(棒」


ひと通り驚いて、再び激しい痛みに身を委ねた。つらたん。

これはアレですね、ある日突然腹筋運動を頑張った翌日にくしゃみするのが辛くなる現象に近いものを感じますね。



隊長の肩を借りて救急車から降り、周囲を見回してみる。


(・・・・・・え、あの辺りにこんな大草原あったっけ?あれ、あっちには生い茂る森が見える。こんな風景、日本どころか世界のどこにもないのでは・・・)


大草原は草が1mくらいの高さまで伸びており、寝転がるには向いていなさそう。

森はどう見ても熱帯雨林ですね本当に有難うございます!

背後には乗っていた救急車が一台と、救急隊員3人がいる。

植生からして、日本ではないことが確定した瞬間だった。


(タイムスリップでもしたんですか・・・?)


呆然とするほかなかった。




隊長さんに誘導されて、後部ドアに腰掛ける。あざっす。

他の2人も集まってきたので、とりあえず自己紹介といきましょう。


鴨田静かもだせい、大学生です。通勤中ににトラックに撥ねられて搬送されてました。

骨は大丈夫っぽいですけど、動くのも喋るのも辛いんで手短にお願いします。」


3人とも苦笑いしてる。なんでだろう。解せぬ。


「俺は鷲津昭一わしづしょういち、この隊の隊長をやってる」

若宮光わかみやひかるです。救急車の機関士、運転手をやってます」

「新入りの桶屋聖おけやひじりっす。よろしくっす。

ちなみに隊長の趣味は盆栽で、光さんはハンドル握ると性格が変わるんですよ!」


すかさず隊長が頭を叩いて突っ込んでいた。


「そういうお前は、不治の病(厨二病)をこじらせてるだろう。あぁん?

この間も職場にフィギュア持ち込みやがって・・・」

「性格が豹変するだなんて、そんなことありませんよ・・・初対面の方に適当な事吹きこまないで下さい!」


女運転手はどうも引っ込み思案に見えるんだけど、ハンドル握ると性格が変わるんですか・・・。

そういうこともあるかと思うことにしよう。

それにしても良い連携プレーだ。ツッコミを入れる暇もなかった。


「自己紹介も済んだところで、一度状況を整理していただけますか?」


隊長さんが頷いたので、進行をお願いした。曰く、


「では現状を簡単に確認しよう。

君を搬送中、我々は崖から救急車ごと落下した。

直後、轟音と共に視界が暗転し、気が付いたらここにいた。

おそらく事故から半日程度経過していると思われる。

我々が目を覚ましてから30分ほど経過した。

そしてここからが問題なのだが・・・、我々は携帯電話も無線も繋がらない場所にいる。

ここにいるのは私と運転手、隊員に君を含めた4人と、あのとき乗っていた救急車が1台のみ。

車両にはガードレールで擦った形跡はあるものの、走行には特に支障はないと思われる。

今、二人が確認してくれている。

すぐ右手に見える森は、熱帯雨林らしい。

しかし左手には大草原が広がっている。

今いる地点は、ちょうどその境目だ。

少なくとも見える範囲では、この境界がどこまで続いているか不明。

加えて双眼鏡で視認できる範囲には市街地は見当たらない。

ここまではいいかな?」


要するに未開の地に居ると考えればよろしいのですね。

一応ポケットに入っていたスマホを取り出して確認してみた。

圏外だし、GPSも受信できない。衛星がないってことは、文明社会は存在しないのかな?

言われて気付いたけど、纏わり付くような熱気と湿気が名古屋の夏を連想させて、実はここは未来の名古屋なんじゃないだろうかと半ば本気で考えてしまった。タイムスリップとか。


「ふむ・・・私のスマホも圏外ですね。

気候は・・・名古屋を彷彿とさせる湿気と気温ですね。

(・・・不快だなぁ。)で、あのとき何が起こったと?」


質問したら、横合いから認めたくない仮説を提示されてしまった。


「異世界トリップってことっす!へへっ、遂に俺の右手が・・・」

「馬鹿言わないでください厨二病。妄想は頭のなかだけにして下さい」


頭の片隅をちらついていたけど、できれば勘弁していただきたいのです。

タイムスリップなら時代が違うだけで、せいぜい文化レベルが違う程度でしょ?

でも異世界トリップだったら色々と困るんですよ!

住環境は底辺と相場が決まってるし、電気がない生活とか信じられないし、そもそも生き物の解体とか好きじゃないし!

それに異世界トリップの類なら、人助けからの異世界トラックに遭遇、とか人の役に立ってからが良かった。

なんの意味もなく全く異なる環境に放り出されるとは、どういうことか。


隊員は深刻な厨二病で、王族に呼び出されることを期待していた人種じゃないかな、とアタリをつけておく。

隊員()運転手()に罵られる姿を見て、胸がスッとした。ざまぁ。

流石にこんな状況下で厨二病丸出しとかないわ!ドン引きですわ!

私の場合、これで異世界じゃなかったら恥ずかしいんでその選択肢はファンタジーな生き物が出てくるまで待ってくだしあ・・・、といったところなのだが、ここは黙っておこう。



あと、双眼鏡って私の私物じゃないですか、と隊長さんに文句しておくのも忘れない。

隊長は苦笑交じりに一言詫びると、気を取り直してこう続けた。


「ヤツは異世界と言っておるが、少なくともそれに類する状況下にあることは間違いない。

少なくともここは日本ではないことは明らかだ。

あの周辺に熱帯雨林など無かったはずだからな。

詳しい種類も分からないし、見当もつかないのが本音だ。

君にはなにか心当たりのある動植物が見当たらないか?」


「んな無茶な・・・って、あれ?

そこの地面を歩いてる鳥、どっかで見たような・・?」


あれー?どこだっけ、と首をひねるとすごく痛い。

どうも首は酷いむち打ちになっているらしい。

そういえば私を撥ねた運転手にどうやって償わせてやろうかと、沸々と湧いてくる怒りに意識を向けたところで


「本当かね!?」


(ゆっさゆっさ)


隊長(♂)の鬼気迫る攻撃!私のライフはもうゼロよ!


「やーめーてー・・・・・・」


意外とこの隊長さん、熱血系なのかね。

いや、年長者だしそう振舞っているだけで、内心では一番パニックになってそいう。

すまんと言って謝っているけれど、ちょっと注意を払うようにしよう。


「続き良い?おーけー?同じこと言わせないでね?

コホン・・・で、あの鳥だけど、たぶん始祖鳥の仲間じゃないかな。」

「しそちょ・・・何っすかそれ?しその葉っぱの仲間っすか?」


ノータイムで心を抉るボケをありがとう桶屋さん。ぐぬぬ。

桶屋さんのことはこれから隊員Aと呼ぼう。うん。


「(この無知め・・・)では教えてあげましょう。

今からおよそ1億年以上前の地球上に恐竜たちが栄えた時代、空をかけることのできた数少ない生き物のひとつです。

現代の鳥類ほどではありませんが、始祖鳥にもある程度の飛行能力があったと考えられています」


そういえば白亜紀の生物がいるってことは、やはりタイムスリップしたのかな。


「へー、そうなんだ。じゃあ、あの高いところを舞ってる鳥は?」


今度は双眼鏡を手渡ししつつ運転手()___ヒカルさんがが尋ねてくる。

双眼鏡を受け取り徐ろに空を舞う鳥を視界に収めると


「えっ・・・あー・・・、えっ・・・!?痛っ!」


首を捻った。とても痛かった。しくしく。じゃなくて!え!なんで!あの鳥ナンデ!でっか!




「なにかおかしいところでもあったの?」

「ケツァルコアトルス、だと思うけど・・・」

「それも恐竜の仲間なの?」

「翼竜の仲間。だけど・・・そんなはずは・・・」


(時代だけみればおかしくはない。翼竜と始祖鳥が同じ時代に


生息していたとしても不思議はない。けれど・・・少し大き過ぎる。

それによく考えて見ればあの始祖鳥にもどこか違和感が・・・)


頭をよぎった可能性を吟味していると、突如隊員Aが叫んだ。


「俺も知ってるぜ!今、森から出てきたのはゴブリンだ!」


「「「(´Д`)ハァ…」」」


隊員Aはどうやらかわいそうな子らしい。厨二病をこじらせてしまったようだ。

現実と空想の区別がつかないとは、何とも救いようがない。

彼は三人の残念な子を見る視線を受けて怯んだが、


「い、いや、本当だって!ゲームとソックリだぜ!」


自説を押し通すようです。よろしいならば戦争だ。


「どうも彼はあまりの事態におかしくなってしまったようですね」

「救命ボードにくくりつけておけばよいのでは?」

「それいただき。さ、おねんねの時間だぞ~」


阿吽の呼吸だった。開戦から5秒で決着しました。まる。


「ちょ、アレ!アレ見てから言ってよ!

あ、ゴブリンがこっちきた!」


おや、迷彩色になっていて分からなかった。

本当にゴブリン(仮)とエンカウントした。

というか、これで異世界であることは確定だし、足音はトロルみたいな大型のモンスターかな?

さて、体調は悪いままだけど、迎撃しないとな。


「あぁ、あの緑でばっちぃ動物のことか。オラッ!」


隊長さん豪快ですね。緑が錐揉みダウンしてますよ。


「ちょ、隊長!?ナニ蹴っ飛ばしてんですかアンタ!?」


とはいえ、まだ数匹残ってるし?折角だし?


「では私も・・・フライイングトゥキックシューーーーーート!!!!」

「おォイ!危ないネタやめろォ!オレの取り分がァ!」


ん?なんか問題あったっけ?

ちなみに、本当はヤクザキック入れたかったんだけど、どうにも

足が上がらないので、真っ直ぐ足を振って蹴飛ばした。

というか、どうしてこの場面で厨二病がツッコミ入れてる暇があるんだ?

そこは嬉々として殴り飛ばそうとして返り討ちにあうところじゃないの?


横を見ると、運転手さんも一匹張り倒していた。鋭い左が頭を打ち据えた。

立ち上がれないゴブリン・・・。

一部の業界ではご褒美とも呼ばれている、スナップの利いたいいビンタだった。。


「・・・ってなんだこの地響き?」


(ズシン・・・ズシン・・・)


「「「「・・・・・・・・・・・」」」」


(あれ、どんどん近付いてくる。別にフラグ建ててないんだけど・・・)


と、全員が森の方を振り向くと。


「GYAAAAAAAAAAAAAA!!!!」


とてもおおきないきものがこちらをみている!

トロルだろ?って思ってた。車乗って逃げればちょろいでしょ!って思ってた。でもね、ばあちゃんがよく言ってた。『油断大敵だぞ』って。









「「「「ティラノサウルスだァーーーー!!!!!!」」」」


恐竜だった!モンスターじゃないの!?

とはいえ、みんなあの映画が分かる世代のようで、ちゃんとやるべきことを理解している様子。

三十六計逃げるに如かず。食べられちゃたまらんぜよ。


というわけで、車で逃走開始。

エンジンスタート!運転手さん、す、すごいスタートですね・・・!

冷や汗をかきつつ後方を確認してみると、ゴブリンが・・・。


えっと、ゴブリンが食い散らかされてるお。

あー、食べずに放り投げてる・・・何でですか!

満足してそのまま森に帰ってくださいよ・・・。


そうですよね、臭くて食べられたもんじゃないんですよね。

って、こっち見てるー!はい来たァーーーーーー!!!!!


「アクセル!アクセルもっと踏んで下さい!」

「この草原、思ったより地面がボコボコでスピード出ないわよ!」


流石の運転手さんも声に余裕が無いけれど、悪路ゆえに精々50km/hくらいしか出ない。

ちなみに私は叫んだせいでもっと余裕が無い。

まぁ、T・レックスの速度は高々40km/h未満だし、逃げ切れるはず!


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 


と、思っていた時期が私にもありました。

チェイス開始から既に1時間以上が経過したが、背後の恐竜は未だ諦めた様子がない。

どう見ても50km/h以上の速度で迫ってきます。なにそれ怖い。最新の研究成果を無視しないで下さい!><

その後まもなく、奮戦むなしく追いつかれ追突された。


(ガッシャーン)


車は押されて転倒、車の中であちこちぶつかる。痛い。

そしてprologueに繋がり、隊長が食べられてしまった。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 


もうダメだ、と思ったけど。純粋に生きたいという思いが発露したっす。

かざした手が光り輝き、T・レックスの頭を引き裂いた。

隊長は食べられてしまったが、あいつには力が無かっただけのことっす。

選ばれたのが俺だっただけのことっす。

俺は違うっす。選ばれし者っす。現代社会では発現しなかった俺の隠された力が解き放たれたっす、なのだ!フゥーハハハ!

私は体に血を浴びてしまったが、まぁよかろう。勲章だと思えば良いのだ!

と、隣の青年が引きつった顔でこちらを見ているではないか?

フッ、我が右手に秘められし力に驚いているな?フハハ!


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 


ついに隊員()は、頭だけじゃなくて手までおかしくなったらしい。

何だそのいかにもチートです♂って感じの力は。

気味の悪い笑顔でこっちを見ている。こっち見んな。しっしっ。

そんなに変な力が手に入って嬉しいのかねぇ。理解に苦しむわ。

異端はいつの時代も爪弾きにされてきたと思うんだけどな。

キミが好きな物語ではどうだったのかな?

ちなみに私の好きな物語では、だいたいハブられたり孤立していたぞ?


それと、笑ってないで介抱してください。

体中痛いんだってばよ。



ep. 1 end.

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