未来の来訪者 No.2
エナ=エンジェルは引き出しから勢いよく出るとそのまま机の上に着地する。
「私この世界を救う為に未来からやって来たの」
現実離れした状況に誠はついていけなくなっていた。
「嘘臭くないか?」
「あー信じてない。ひどーい」
「いや、信じろと言うほうが無理だろ」
「なんで?未来チックなコスチュームにタイムマシンに乗って、引き出しから出てくるなんて完璧に未来人でしょ」
「未来人って……。俺にはコスプレにしか見えんわ」
「コスプレって……。じゃ、じゃあ、どうすれば信じてくれるの?」
「そうだな、四次元的なポケットから便利道具を出したりできないのか?」
「ふふん」
エナは不適に笑う。
「まっかせなさい」
そう言うと腰についているポーチの中に手を入れる。
「なにそれ?」
「四次元ポーチよ」
「なんかギリギリな設定だな」
「なに言ってるの。見て驚きなさい!「どこでも行けるドア!」
「うわっギリギリな名前だな。で? 何ができるの?」
「このドアを使えば好きな場所に一瞬でいけるわ」
「オースゲー、物流革命が起きそうだな。運送会社も鉄道会社も廃業だな」
「残念ながらそれは無いわ。既存産業を守るため使用が制限されているの。政府に申請を出して
許可が降りなければ使えないの」
「申請ってどれくらいかかるの?」
「1ヶ月~1年ね。だから、今は使えないわ」
「意味無いじゃん」
あきれる誠。
「他には?」
「これはどう?ラージライト」
「またしても微妙な道具だな」
「ライトを照射すると物が大きくなるわ」
「マジすげー。食い物とか大きくすれば世界の飢餓が無くなるんじゃないか?」
「残念ね。それは不可能よ。見た目が大きくなるだけで質量もカロリーも増えないわ。ちなみにミニライトはとんでもなく質量の大きな物質をつくれるので、販売禁止になったわ」
「売ってるんだ。便利道具売ってるんだ」
どうだと言わんばかりに胸を張るエナ。もはやかける言葉もない誠。
「楽しい物を見せてくれてありがとう。もう帰ってくれ」
「嫌よ。私は世界を救いに来たのだから」
「頼むから俺の世界を壊さないでくれ。期末テストが始まるんだ。勉強しないといけないんだ」
「わかったわよ」
ブーブー拗ねるエナ。
「近いうちにまた会いましょう」
そう言うと机の引き出しの中に飛び込んでいく。
エナが消えたあと、誠は引き出しの中を確認する。
「ただの引き出しに戻っている」
誠は部屋の中を一回りしたあと、おもむろに押し入れを開ける。
「あれ?なんで気づいたの?」
押し入れの中が別の部屋となっており、エナが座っていた。
「誠君、レディの部屋に入るときはノックしないとダメだぞ」
「出ていけー!」