動物園
ショートショート7作目です。
「パパ、見て見て。珍しい動物がいるよ。」
「そんなにあわてるんじゃない。逃げるわけではあるまいし。」
休日にはこのような家族連れやカップル、遠足できている幼稚園児など動物園に大勢いた。檻の中にいる俺はその光景に飽き飽きしていた。俺は檻の中では何もすることはなく一日中眠っていることがほとんどだった。何か遊ぶものでも与えてくれるのならばそれを使って遊んだりするのに・・・
あたりが夕暮れになり動物園が閉園となった時、飼育員が俺たちのところへやってきた。
「おーい。お前ら、今日からここで一緒に生活する新しい仲間だ。仲良くしてやれよ。」
そう言って飼育員はそそくさと帰っていった。
「おい新入り、おまえはどうしてここに来たんだ。」と俺が新入りに問いかけた。
「あいつらがいきなり私のことを捕まえたんです。もう恐ろしかったですよ。」
「そうだったのか。俺もまるっきり同じ手法だったよ。」
「そうですか。ここでは何をすればいいのですか?」
「一日中ボーっとしてればいいさ。なんたって俺らは珍しい動物なんだから、あいつらは俺らを見るだけでキャッキャッキャッキャ言うぞ。」
「そんなに珍しいものなんですかねえ。私からすればあいつらこそ珍しいですよ。」
そんな会話をしていた新入りもこの動物園の生活にもすっかり慣れてきってしまい、ずっとゴロゴロしていた。そしてまた次から次へと新しいヤツらがこの動物園へとやってくるのであった。
「おい知っているか。何でも、月に一度俺らのショーがあるらしいぞ。何か芸を披露するみたいだぞ。」
「本当に? 私なんか芸なんて一つも持っていないのよ。」
「それが俺らにもできる簡単な芸があるらしい。」
そうして月に一度のショーの日がやってきた。客席には大勢の客がいて、立ち見をする客までいる始末であった。客は今か今かと首を長くして待っている。
園長が舞台へと上がり挨拶を始めた。
「みなさま、大変長らくお待たせしました。間もなく世にも奇妙な動物たちによるショーが始まります。
私たちには決してできないようなことを彼らはいとも簡単にやってのけてしまうのです!」
「早く見せてくれ!俺はこの日を楽しみにしてたんだ。」と客が大声をあげた。
「まあまあ、お客様。もうじきですから。」と園長がなだめる。
「それでは参りましょう。人間による逆立ちです。」
やはり人間も珍しい動物ですよね。