目覚め
久々~の更新です。
鼻腔をくすぐる美味しそうな匂い。
野菜がとろけそうになるまで煮込んだスープの温かい匂いだ。
昔、母が作ってくれたスープの匂いに似ている。
誘われるようにメイリー瞼を押し開いた。
視界いっぱいに広がる夜空に、一瞬混乱する。
ここはいったいどこだ?
思いむだそうとしたら頭がずきりと痛んだ。
「気がついたか」
不意に人声がしてメイリーはびくっと竦んだ。
慌てて身を起こす。
動いた瞬間、脇腹を激痛が走り抜ける。
「……っ、痛ぅ」
「動かない方がいいと思うよ。せっかくくっつけた傷が開くし」
声の主が近づいてくる気配がした。
ひょいと覗きこまれる。
まず目に入ったのは黒色のローブだった。深く下ろしたフードの下から、紅茶色の瞳が覗いている。
「……あなたは」
掠れた声で問えば、ぐいっと目の前に椀を差し出され
た。
思わず見つめた椀には透明な液体が揺れている。
仄かに湯気がたちのぼるそれは、メイリーを戸惑わせた。
「白湯。飲んだ方がいいよ。……なにも変なもの入ってないから」
迷い椀を受けとる、
慎重に口をつけるが妙な味などはしなかった。
ごくごくと飲み下す。
仄かなあたたかみが渇いたのどに染みた。
「助かった。ありがとう。あなたはどなたですか」
問えばローブの人物は肩をすくめた。
「しがない旅のものです。君は行きだおれてるのをおれが拾った。……訳ありの歌士さん」
……気づかれていたか。
メイリーは警戒心を強めた。
飄々としているが、この人物はよく見ているし食えない。
「別に警戒しなくていいよー。それをねたに理不尽を迫るような趣味はないからね」
顔が見えないから信用できない?とフードを払いのけた彼を、メイリーは驚きと共に眺めた。
恐らくはメイリーよりいくつか年上。
なにより目を引くのはその髪の色だ。すきとおるような純白。光の加減では銀にもみえる。
白い髪と赤みの瞳が、見るものに作り物のような印象を与える。
「珍しい? この辺りではね」
ニヤリと笑ったその顔は、少年と呼んでもいいほどに若かった。
まだまだ続きます。
気長にお付き合いくださるとありがたいです!