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 オッサン生活四十二日目。


 人、人、人――。

 右を見ても人、左を見ても人。前を見ても人、後ろを見ても人。

「こ、こんなに人間がいる……」

 この世界に来て人と言えばカリイとサルディスさんしか見たことがなかったため、久しぶりに見る人の姿に何故だか感動を覚える。取り立てて珍しい(髪の色や目の色は日本ではあまりお目にかかれない種類だけどね!)ところもなにのに、それだけで感動できるなんて、よほど私は人というものに飢えていたのではないだろうか。


 と、ここまでそんなことを考えていたけど、なんだか変態くさい発言になってきたから強制終了することにした。


 とりあえず、今私はあの森から一番近い町に来ている。

 町といっても現代的なビルがそびえていたり車が走っていたりするわけではない。基本的に人は徒歩で移動し、建物は平屋か二階建がメインだ。雰囲気は中世ヨーロッパというところだろうか、まあ、私もそのあたりに詳しい知識はないので、一般的に思い浮かべるRPGの世界観そのままかなぁと軽く思う。


「のどかな様子で…」

「そうですね。このあたりは割と安定した情勢ですから。戦もありませんし、法外な税をとる様な領主もいませんし。まあ、季節が季節ですので、さほど活発というわけではないですが」

 そう言ったカリイの口元では白い息がふわりと空を漂う。

 季節は未だに冬。今日はまだ暖かいけど、日陰にはまだ溶けきってない雪が残っている。人の姿はあるが、どこか早歩きなのは、やはりその寒さ故だろう。


「だけど子どもは元気だねー」

「体温が高いからでしょう。あと、寒さに対して少し鈍感なところがありますから」

「……カリイは敏感すぎだよね」

「ぼくは元々寒さが苦手なんですよ」

「左様ですか」

 そういうカリイの格好はザ防寒! というものだ。保温性の高い毛皮を着こみ、帽子もそれと同類のものを被っている。手には厚手の皮の手袋をし、ブーツも内側がふわふわのものだ。おそらく毛皮の下には何着も服を着こんでいるだろう。

 対する私は、現在「カリイ特製のろいをとく薬」によって元の姿に戻っている。そのため、以前サルディスさんから買った服に合うものが少ない。あの一山いくらの袋の中に入っていた女物の服をひっぺ出してそれを着こみ、さらに男ものの中で少し小さめの外套を羽織っている。さすがにオッサン体型と元の体型では差がありすぎ、いくら裾や袖を折っても合わない。

 あとは気合で寒さを何とかしているところだ。

 とりあえず、初めて見るこの世界の町の雰囲気を楽しむことにより、気を紛らわしているところである。


「ところでカリイ。何しに来たの、ここ」

「会わなければならない人物が来てまして…」

「へえ。カリイに会いたい人なんているんだ」

「何気に失礼なことを言ってますね。別にぼくは人嫌いとか隠居しているつもりは一切ないですが」

「すすすすみません! その、別に他意があるわけでは…」

「別に気にしてませんが? まあ、ぼくがその人と会っている間、タナカは極寒の場所で薬草採取していてくれても構いませんが」

「そ、そんな殺生な…!」

 目が笑っていませんが!? とてつもない笑顔で目が笑っていない。そんな人が私の上司、もとい、御主人様です。口は災いのもと。ぺろっと出てくる言葉には重々気を付けなければならない。


 何とかカリイのご機嫌をもとに戻したその時、どうやら目的の場所に到着したようだ。なんてことのない風情の建物だが、どうやら日本でいう喫茶店みたいなものらしい。店内はこじんまりとしているが清潔な雰囲気で柔らかい印象を受けた。


「よ、カリイ。こっちこっち」

 店内に入ると既に席に着いていた男が手を振って声をかけてきた。その声に従って、カリイは彼のいる方へ足を進めていく。

「……タナカ、何があっても勝手に口を開いてはいけませんよ」

「へ?」

「いいですね。もしその約束を破ったらどうなるか……分かってますよね?」

「ハイ」

 いただきました、あの笑顔。これは絶対に逆らってはいけない笑みだ。

 私は口を貝にすることに決めた。




「お、それがカリイの婚約者殿か」

「はいっ!?」



 その人物の言葉で、しょっぱなから私はその誓いを破ってしまったのだけども――。

続きます。

(20120603)

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