表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/22

12

 オッサン生活四十日目。


「タナカ、ちょっとこちらに来て下さい」

 御主人様がこちらに向かって手招きをしている。しかも、いい笑顔がオプションでついている。

 それを見た瞬間、私の身体は正直に回れ右をした。しかし、それを許さないのが御主人様であって。

「タナカ、ちょっとこちらに来て下さい」

 一言一句、違わず再び同じことを口にする。今度の笑顔は、先ほどよりもいい笑顔だ。

 あ、確実に死亡フラグ建てちゃった?

 まだまだ命は惜しいので、飛んでいくという言葉がぴったりな勢いでカリイの方へ行った。


「はぁ、何かご用で」

「うん、ちょっとこれ飲んでみて」

 そう言って差し出されたのは、薄い黄色の液体。日本で言うなら、某メーカーの炭酸飲料みたいな見た目だ。だけど、この世界にそれはないだろう。

 差し出されたコップを受け取り、不審げに匂いを嗅ぐ。甘い、花の様な香りがした。

「あれ、変な匂いがしない」

「いくらぼくでも、飲めない物を渡さないですよ」

「いやいや、カリイがそれ言っても説得力な…すみませんそうでした、私が軽率でした」

 危ない危ない。素直な気持ちを伝えたらダメだよね。うん、私だって学習する生き物なんだよ。


「……先に聞くけど、毒じゃないよね?」

「さっき言いましたよね。いくらぼくでも、飲めない物を渡さないって」

「あと、これ飲んだらお腹壊すとか身体が痺れるとか…」

「そんな物、タナカに飲ませてぼくに一体どんな利益があるんですか」

(いや、カリイなら「面白そう」の考えでしそうなんだけど)

「タナカ、心の声は顔に出さない方がこの世を生きていくうえで賢いですよ」

 はっ、どうやら表情に出ていたようだ。馬鹿正直なこの顔がにくい…!


「とりあえず、何も考えずにこれを飲みなさい。いいですね」

「………はい」

 なんだかお医者さんに薬を飲まされる小さな子みたいな扱いだな、おい。


 手の中にある、黄色い液体。

 とりあえず、カリイの言を信じるのなら、飲めない物ではないようだ。だけど、味や効能については全く触れられていない。

 それがやたらと恐怖感を煽る。


 ちらり、とカリイの表情を見る。そこにはもう、飲むしかないだろうというオーラ満載だ。


 意を決して、それを一口飲む。


「っ……………」


 ま………まずい……!


 なんとも言えない味が口内を襲う。さらりとした見た目に反してどろりとした味。芳しい香りに反して、苦々しい味。何でこんな色からこんな味になるんだ!? と叫びたいがその叫ぶ気力さえ失われる味だ。


「どうです、なかなかの味でしょう」

「……………」

 飲ませた張本人は苦しんでいる私を見てどことなく嬉しそうだ。やっぱり、私の苦しんでいる姿を見るためだけに飲ませたんじゃね!? という疑惑が湧いて出てくる。

「まずい」

「でしょうね。ぼくは飲みたくありません」

「……」

「何で飲ませたという目ですね。それはタナカの事を思ってですよ」

「……」

「悪意は全くないですよ。このぼくが、タダで、タナカのために、してあげたことです。感謝してほしいぐらいですね」

「……」

 恨みがましい目はそのままで会話を続ける。本来はその内容について教えてほしいんだけど、どうやらカリイはそれについて語る気はないようだ。答えをはぐらかす様なおおざっぱな内容しか喋らない。


「あとはたくさん水分を摂って、早めに寝た方がいいですよ」

「……ぉえい」

 あ、はいって言おうと思ったんですが、あまりのまずさに変な返事になっちゃった。

 だけどとりあえず、この不快感から逃れるために水を飲む必要があるので、のろのろとした動作で水瓶に向かった。




「さて。これで一体どうなるかな」

 すっと傍に寄ってきたゴンの毛並みをさらりと一撫でし、楽しげに笑った。その真意は、まだ誰も知らない。

あと少しで一章も終わりますね。

予想以上に長くなってしまいました…。

(20120218)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ