第42話 今いいところなんだよ
-王立蒸気車製作所 エリーネ作業場-
「ここがワタシの作業場よ」
「すげえな、個室かよ」
「設計図引かないといけないから」
「…これ、全部設計図なの…?」
部屋に入ると、気の遠くなるほどの紙が積まれていた。
その全てが、蒸気車の設計図だ。
「ちょっと見せてみろよ」
「ふん。素人…じゃなかったわね。現場しか知らないあんたに分かるかしら?」
「ああ、分からねえところあったら聞くから教えてくれ」
「!?」
「?なんか変な事言ったか俺?」
「い、いえ…」
「…アタシは見てもさっぱり…」
イリアは目が点になっている。
「おお。すげえな…さすが設計士」
「こんな細けえところまで、ちゃんと考えてやがる」
目がキラキラするベルゼ。
「ふ、ふふん!どう!?さすがのあんたも驚いたんじゃないの?」
「おう。特にこれすげえな。圧の逃がし方をここまで計算してるなんて」
「…あんた…普通に理解してるじゃない…」
「普段は面倒だからな。出来ねえわけじゃねえ」
「そ、そう…」
「あ、でもここ、この部品は何で付けてんだ?」
「!?どこかしら?」
ベルゼの傍に寄るエリーネ。
「ここだ。これを付けると、余計に圧が溜まらねえか?」
「これはあえてそうしてるのよ。そうしないとここに負荷が…」
「ここに?」
「ええ。一見関係無さそうだけど…」
「…ああ、そうか。ここならある程度の強度が…」
「ええ。それにここには圧が溜まっても定期的に排出されるように…」
「ほーほーなるほどなぁ…」
「…」
一人置いてけぼりにされているイリア。
「…ねぇ、ベルゼ」
「なんだよ。今いいところなんだよ」
「目的忘れてない?」
「??」
「あ」
「忘れてんじゃん!!」
「目的?」
エリーネが首を傾げる。
「ああ!こっちの話こっちの話!」
イリアが慌てだす。
「ベルゼ…早く仲間を見つけてここから出ようよ」
イリアは焦ったように、ベルゼへ耳打ちした。
「何でだよ?結構面白いぜ?」
「こんなの滅多に見られないんだぞ?」
「もうちょっと見させろよ」
ちょっと不満そうなベルゼ。
「だから目的忘れないでよ!!」
「あんたたち、さっきから何コソコソしてんのよ」
「…あー悪い悪い。そろそろ現場見せて貰っても良いか?」
「…そうね…ちょっと待ちなさい」
そう言って部屋から出ていく。
「…あいつ…あんま現場に出たくねえのかな?」
「…やっぱそう思う?」
「さっきから現場って言葉を聞くと良い顔しねえんだよなぁ」
「アタシ、技術屋ってベルゼとシャロンさんしか知らないんだけど」
「技術屋の人って現場が好きなもんじゃないの?」
「それは人によるな。俺は現場主義だが」
「あいつみてえに設計ばかり描く方が良いってやつもいるからな」
「技術屋はいろんなタイプがいるんだよ」
「ってか、ここ見てて気付かなかったか?」
「仲間探しに夢中で…」
「…お前、真面目だな…」
「あんたが不真面目なの!」
「待たせたわね。許可を貰ったわ」
「許可?お前、偉いんじゃねえのか?」
「…色々あるのよ…」
「??」
ベルゼとイリアはエリーネの案内で現場へと向かった。
三人の足音が廊下に響き渡る。




