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黄昏の傀儡劇


装甲を伝う硬質な金属の衝撃がフレームを通り、微かな振動となってコックピットへと伝播する。

【物理接触確認:RGM-89De ジェガン(ステルス特装型)】

【強制OS侵入プロトコル起動……】

【連邦軍戦術情報局“ゴースト”特装型 ver.2.14ファイアウォール解析中……】

【解析成功。目標制御権取得。】

【星宿海システム:強制介入モード起動! 目標ロック!】


潮のような情報洪水がルカの脳裏を駆け抜ける。機体のリアルタイム姿勢角、推進器各ノズルの出力パーセント、武器システムの充能状態と残弾数、損傷部位の応力フィードバック、レーダーと光学センサーから得られる膨大な生データ——それらすべてが星宿海システムによって、暴力的に翻訳・圧縮され、ルカの脳に叩き込まれる。


「ぐあっ——!」


ルカは瞬間、頭を割られるような激痛に襲われた。基地での前回と同じだ。一バイトごとに脳を鑿で叩かれる感覚。視界の端に雪のようなノイズがちらつき、鼻腔から温かい液体が滴り、震える手の甲に落ちる。


「ルカ!」セラは少年の苦悶を見て、驚愕の声を上げた。体が硬直し、顔が一瞬で真っ青になり、額に青筋が浮き出る。


一方、エリン・サットンの恐怖も頂点に達していた。左腕操縦桿のフィードバックがすべて失われ、画面の左腕ステータスアイコンは異常なしを示す。


「隊長! 私の機体が——」マイクに叫ぶが、声は自分のコックピット内にだけ反響する。公開チャンネルでは仲間たちの声——ダミアンの怒号、ソフィアの報告、ヨセフの冷たい指示——がはっきり聞こえるのに、自分はガラスケースに閉じ込められた哑巴のように、状況を伝えられない。


初めて本物の恐怖が、この冷静な潜入専門家を掴んだ。必死にチャンネル切り替え、予備通信線起動、緊急ビーコン叩き——すべて無効。


怒りに任せてOSを叩くが、故障一つ起きない。人生で初めて、神すら見えない恐怖を味わった。


貨物ヤード内、エリンのジェガンは星宿海の粗暴な指令下で、ぎこちなく無傷の右腕を上げ、光束ライフルの充能光が灯る。動作は正確だが、通常の流暢さが欠片もなく、無形の糸で操られる人形のようだ。


ジェガンが引き金を引く。高エネルギーレーザーが艦体の豁口を通り、海上でドレークの「レイヴン」を抑え込むダミアン・ホルトの爆破ジムⅢへ向かう。


「いや! 止まれ!」エリンは無音のコックピットで絶叫し、他の操縦桿を無駄に押し引きする。せめて機体を崩すだけでも、と願うが、何もできない。


シュッ——!


光束が放たれ、正確に「レイヴン」の軌道をかすめ、爆破ジムⅢ右肩ミサイルポッドの接続部を直撃。


小規模爆発と火光でダミアンの機体が激しく揺れる。


「誰だ?! どこからの冷弾だ?!」ダミアンの驚怒が公開チャンネルで炸裂、彼は素早く姿勢を立て直し、攻撃元を探す。


ヨセフは渡鸦と絡みながら戦場を一瞥、豁口の不自然な姿勢のエリン機を即座に捉える。「エリン! 状況報告!」応答なし。


「ソフィア! エリンの状態を!」


「隊長! エリン通信信号消失! だが生命徴候は正常! 機体も異常なし!」ソフィアが急報。


「すべて正常? まさか……」


ヨセフはアナハイム基地での異常現象を思い出す。今のエリンと瓜二つだ。


「またあのガンダムの仕業か?」思考中、システム警報——エネルギー被ロック警報。エリンのジェガンが今度は彼を狙う。


ヨセフは緊急回避でかろうじてかわす。


「隊長!!! くそ、エリンお前頭おかしくなったか?」エリンがヨセフへ攻撃するのを見て、ダミアンがチャンネルで悪態。


「ダミアン、あの船へ全力ミサイル! エリンはあのガンダムに操られている!」ヨセフはエリンの攻撃を避けつつ指示。


「隊長、エリンがまだあの中に……」


「今はエリンを信じるしかない。あのガンダムを引っ張り出せ!」


「了解!!」


ダミアンは「ムノーテ」号近海を標準ロックし、全ミサイルを一気に放つ。「エリン、死ぬんじゃねえぞ!」


ヨセフと渡鸦を絡め取るドレックは、遠くないジムⅢが「ムノーテ」へ狂ったようにミサイルを撃つのに気づく。「まずい! オスカー! 任務変更、あのジムを止めろ!!」


「了解!」ナイチンゲールは指示を受け即座に海底から浮上、ジムⅢ背部のミサイル倉を精密射撃するが、一歩遅く、大量のミサイルがすでに飛び出していた。


格納庫内、ミサイル接近警報と艦体損傷の轟音が絡み合う。モニターに無数の光点が急速拡大。


「狂ってるわ、あいつら本当に船を沈める気ね!」セラの声が焦りで鋭くなる。


「させない!」ルカは脳内の激痛を堪え、ガンダムとジェガンを操り、格納庫の穴から船外へ躍り出る。


「ガンダム出現!」ソフィアが即報。


「ふん! ちょうどいい!」ヨセフは冷笑し、渡鸦と周旋しつつ命令。「マーカス、機動を制限! ダミアン、俺と協力で黄色い奴を抑えろ。先に一つ片付けろ!」


だが戦場は一瞬で変わる。


ナイチンゲールは狙撃後露呈し、ダミアンはミサイル倉損傷で怒り心頭、見るやジムⅢを旋回させ、レーザーソードを抜いてナイチンゲールへ斬りかかる。「雑魚! さっきお前だろ!」


ナイチンゲールは慌ててバルカンを撃ちつつ回避、二機は瞬時に海上で接近、機関砲と格闘武器中心の近接白兵戦へ。光束と実弾が交錯。


「マーカス! 角度をくれ、黄いやつを落とせ!」ダミアンはチャンネルで吼える。ジムⅢが熱ナイフを振り、ナイチンゲールを後退させるが、相手の柔軟さで一時決着つかず。


「ロック不能! 距離が近すぎる!」マーカスは冷静に答えるが、無力感が滲む。狙撃手にとって最悪の貼り身混戦だ。


「ダミアン、足止めしろ!」ヨセフはジェガンで渡鸦を振り切り、ナイチンゲールへ突進。


海面上空、ミサイルが蝗の群れのように「ムノーテ」号へ殺到。ルカは情報過載の裂くような痛みを堪え、瞳を充血と集中で細め、二機を精密操縦する負担は脳に極大だが、光束ライフル二挺が驚異の射速で連射、ミサイルを次々点爆。漏れたものにはコルカス・ガンダムの刀身とシールドで最終防壁。


連続爆発が海面と貨船間に咲き、火光が黎明前の最暗海域を照らし、衝撃波が巨浪を起こす。大半は迎撃されたが、破片と艦体をかすめたミサイルで「ムノーテ」号に新傷、船体激しく揺れ、多所から黒煙。


ルカがミサイル危機に全神経を集中する間、もう一方の白兵戦は白熱化。


ダミアンはジムⅢで咆哮し、熱ナイフを連撃。「廃物! 逃げるしか能がないのか?!」興に乗り、ヨセフのジェガンが渡鸦を振り切り側後方から高速接近、三角絞殺を狙うのに気づかず。


ナイチンゲールは軽量優勢と巧みな操縦で辛うじて凌ぐが、王牌小隊の挟撃では敗北は時間の問題。だがヨセフが最佳射撃位置へ、マーカスがナイチンゲールの軌道を再ロックした刹那、灰色の影が間に割り込む。


「何?!」ヨセフは驚く。ガンダム操縦者がミサイル対応しつつ、もう一つの近戦渦に介入するとは。


「ちょうどいい! お前も一緒に斬る!」ダミアンは血眼になり、ガンダム突進に怯まず興奮、ジムⅢはナイチンゲール追撃を一時放棄、熱ナイフを円振りでコルカス・ガンダム腰斬へ! ミサイル対応でエネルギー・機動余裕を削がれたと踏み、重創か行動制限を狙う。


ナイチンゲールはこの隙に距離を取り、再び狙撃・支援機会を探す。


コルカス・ガンダムは横掃の熱ナイフに対し、極限の危うさで左腕ビームシールドを最小角度・最速で上げ、ナイフ側面へ正確迎撃!


ガキーン!!!


耳障りな金属衝突とエネルギー湮滅の爆鳴! ビームシールドが激しく閃き、かろうじて勢いのある一撃を防ぐが、巨大衝撃でガンダム左半身が後へ歪む。


ルカは二重視野と脳内データ嵐の眩暈・激痛を堪え、右操縦桿を猛推! コルカス・ガンダムは斬撃の衝撃と右脚推進器全開で、右前へ小幅迅猛突進!


この本能的突進の方向とタイミングが神業。ダミアンのジムⅢはナイフ阻まれわずか硬直。ナイチンゲールは回避でまさにこの方向へ側移。


ドン! ガン!


二つの鈍く重い衝撃がほぼ同時!


コルカス・ガンダムの右肩甲が、ダミアン・ジムⅢの左胸甲にガツンと激突!


順勢の右手、手背装甲がナイチンゲール上げた右腕装甲を重重に擦る!


【物理接触確認:RGM-86R ジムⅢ(全装爆破型)】【強制OS侵入プロトコル起動……解析中……】

【物理接触確認:AMS-129 ギラ・ズール】【強制OS侵入プロトコル起動……解析中……】


「ぐああああああ——!!!!」


形容しがたい激痛がルカの頭蓋内で爆発! エリン機単独は冷たい鉄流だったが、今は三つの巨大狂暴データ津波が意識深くを洗う。三セットの完全OS情報、センサーデータ、動力状態が星宿海システムに野蛮に押し込まれ、叠加、統合!


「ぶはっ——!」ルカは大量の血を噴き、主モニターを赤く染め、数滴が後方の青ざめたセラの顔に飛ぶ。耳や眼角からも血が滲み、視界はデータ流で埋まる。体は無形の巨力に繰り返し殴られ、シートで激しく痙攣、安全ベルトが悲鳴を上げる。


「ルカ!!!!」セラはルカに何が起きたか分からず、なぜジェガンが突然止まり、連邦へ攻撃したか、疑問だらけだが、今はルカの状態が一番心配。


「ルカ! どうしたの?!」


ルカは口元の血を拭い、データ衝突に少し慣れた様子。


「大丈夫……」


硬く体を支え、再びガンダムを操る。一方、ヨセフは三機衝突を見た次の瞬間、恐怖を味わう。三束の熱光束が自分へ! 緊急回避でかろうじてかわすが、直後にMSの影——ダミアンのジムⅢが熱ナイフを顔面へ振り下ろす。


「ダミアン!」ヨセフはチャンネルで叱咤、ジェガンD型が毫厘で後仰、灼熱の刃が頭部センサーをかすめ、熱波で画面前空気が歪む。


ダミアンは応答なし。ジムⅢは止まらず、一撃不中で頭部バルカンが近距離でジェガンD型胸甲へ猛射!


ダダダダダ——!!


実弾が複合装甲に火花連発。ヨセフは側移回避、最後の幸運も消える。ダミアンも操られた。エリンと同じ!


余光で、エリンのジェガンが側翼から高速突進、機動空間制限目的。遠く、黄のナイチンゲールが狙撃ライフルを上げ、彼のもう一つの回避方向を指す。


三機の動作は強制統合後の硬さがあるが、攻撃のタイミングと角度はほぼ完璧な死の三角。ヨセフは絶対守勢へ、高超操縦で嵐のような攻撃をかわすが、毎回死線上、刀尖の舞。


「隊長!!」マーカスの焦声。彼は状況を理解できず、狙撃鏡でエリンとダミアンがヨセフを攻撃、黄機もヨセフを狙う。彼は即座に黄ナイチンゲールへ照準、引き金寸前、黄ナイチンゲールが突然旋回、銃口を彼へ——旋回と同時に射撃! 巨大光束が超速で飛来、マーカスは慌てて転身回避するが遅く、ジム左腕を直撃、瞬時に左腕がスクラップ。


「何事だ?!」魂消たマーカスは信じられぬ。資深狙撃手として、ナイチンゲールの操作は常識外れ——照準姿勢なし、準備時間なし、信手の一撃が狙撃手の常識を崩す。しかも鏡越しに見た、黄ナイチンゲールは彼が狙う前から気づき、移動していた。


「隊長! 左腕廃棄! 狙撃システムオフライン! だがまだ動ける! あの黄色機の操縦者はNew Typeだ!」


マーカスの報告がヨセフの耳に氷水——“New Type”!


連邦軍で半禁忌の言葉だが、高級報告に時折。もし本当なら、黄機の危険度再評価必須。


思考は熱ナイフで中断。ダミアンのジムⅢが狂攻。ヨセフは精妙噴射で斬撃を避け、シールドでバルカン掃射を弾く。余光でエリンのジェガンが三連射で右退路封鎖、遠く黄ナイチンゲールがマーカス反撃後、再び彼を狙う。


「ソフィア!」回避の隙に鋭く。「全妨害資源集中、あのガンダムへ単向通信遮断試み! ‘ノイズ’を増やせば感知やデータ伝送を乱せる!」


「了解!」ソフィア実行、数秒後否定。「無理です、隊長! 全手段試したが相手機体に干渉不能! エリンとダミアンのデータ源遮断も失敗!」


ヨセフは即新決断。


「マーカス、狙撃放棄、残武器で自衛牽制。」声が急に冷たく。「レオン! ‘贈り物’解除だ。アナハイムの怪物はやはりアナハイム自身に片付けさせる!」

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