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逃亡者の呼吸


地中海沿岸、トルコ、カシュの町。


ここは時間が忘れた片隅。崖は巨人の斧で割り裂かれたように、青い海へまっすぐ落ち込んでいる。


海岸線から三キロ離れた隠れ岩窟の中は、潮の湿気が肌を刺す。


巨大な深灰色の機体が影の中に半跪し、苦難の神像のように佇んでいた。装甲表面は焼け焦げた痕で覆われ、高エネルギービームが残した接吻の跡だ。


「くそ、油圧パイプが全部漏れてやがる」


話すのは、髭面の中年男。油まみれの作業服にアナハイムのマークが刺繍されている。名前はワンス、手にレンチを持ち、コルカスの膝関節を叩き回している。


「文句言うなよ」もう一人の年長技師ドクが眼鏡を押し上げ、データケーブルを機体の足首ポートに差し込む。「こんなもんを生きてここまで持ち込んだだけでも、あのガキは奇跡だ」


ルカ・ワインは洞窟の岩に腰掛け、膝を抱えていた。


技師たちの会話は耳に入らない。


耳にはただ、波が岩を打つ音と……消えた、あの声だけ。


基地から逃げて以来、コックピットで響いていた声は沈黙した。代わりに訪れたのは底なしの虚無。


「坊主」ワンスがレンチを地面に放り、金属音が洞窟に反響する。


ルカはびくりと肩を震わせ、はっと顔を上げた。


「補給が届くまであと数日だ」ワンスは洞口を指す。「遠くへ行くな。トラブル起こすな。ここは辺鄙だが、連邦の犬の鼻は利くぞ」


ルカは頷いた。


立ち上がり、洞窟を出る。陽光が目に突き刺さり、細めざるを得なかった。


その頃、カシュの市場。セラ・マスは帽子のつばを深く下げ、観光客の群れに紛れていた。


彼女がここを選んだ理由は、雑多で交通が便利、そしてより広い世界へ抜ける可能性があるからだ。最終目標は宇宙へ、そしてSIDE7へ向かう船票を手に入れること。それにはルートが必要で、新しい身分が必要だった。


数日後、傷と体力が少し回復したミューラは、ワンスの再三の注意を受け、普通の私服に着替え、不安げにカシュの市場へ足を踏み入れた。オルセン(ワンスのことか?)が非敏感物の補給を買わせに来たのも、彼に息抜きをさせ、精神の圧を和らげるためだった。


陽光、色彩、喧噪、人々の声、香辛料と食べ物の匂い……すべてがルカには鮮やかすぎて、目眩がした。彼はぎこちなく人波を避け、角を曲がったところで、柔らかい体にぶつかってしまう。


「すみません……」慌てて顔を上げる。


ぶつかった女性も眉をひそめて振り返った。


時間がその一瞬、凍りついた。


広いツバのサンハットをかぶった女性。つばを低く下げ、覗く顎のラインは大理石の彫刻のように洗練されている。耳元に金色の髪が数本垂れていた。


普通の観光客用のロングスカート、手に編みバッグ。


ルカの心臓が激しく縮む。


美しさだけではない。まるで電流が心臓を直撃したようだった。


先ほどの接触の瞬間、脳の奥底で沈黙していた「幽霊」がわずかに震えた。言葉にできない懐かしさ、悲しみと郷愁が潮のように押し寄せる。


セラはただ冷たく、この無礼な若い男の子を一瞥した。二十歳にも満たないだろう、目に世間知らずの空白と……妙な既視感が混じる? だが深く考える暇はない。ただのガキだ。つばを直し、無言で人波に溶けていった。


ルカの足は理性を裏切り、勝手に彼女を追っていた。


セラは人混みを縫って進む。


汗をかいていた。暑さではない。背中に針を刺されるような視線を感じていたからだ。


カジュアルジャケットを着た、数人の目が鷹のように鋭い男たちが人群をスキャンしている。ルカも彼らに気づき、足が速くなった。


自分でもなぜかわからない。あの瞳か、危険の匂いか。基地で鍛えられた潜行技術で、遠くからセラを尾行し、彼女が複雑な路地を抜け、目立たない海沿いの民宿に入るのを確認した。


その後の数日、ルカは毎日理由をつけて市場へ来て、無意識にその冷ややかな姿を探していた。そしてセラも確かに毎日現れ、彼女の目的は明確——灰色の世界を歩く「商人」を探すこと。


チャンスはついに訪れた。セラは「絶対にクリーンな」身分証明と宇宙行きの船票を手配できるという男と接触した。足早に陰鬱な路地へ入り、突き当たりに色褪せた看板の絨毯店がある。


セラはドアを押し開ける。蝶番が甲高いきしみ音を立てる。店内は薄暗く、古い羊毛と埃の匂いが充満していた。


「『アナトリア』の絨毯を買いたいのですが」セラはカウンターに立ち、合い言葉を口にした。


カウンターの禿げた男が顔を上げる。商人の偽笑を浮かべるが、濁った瞳に怪しい光が宿る。


「もちろんです、お嬢さん」男は手を拭き、「奥にどうぞ。一番いい品は倉庫にあります」


男がカーテンをめくるその瞬間。セラは男の腰に硬い膨らみを見た——連邦軍制式拳銃のホルスターだ。さらに手を拭いた時、手背に覗いたタトゥーの一角——黒い猟犬。


彼女は即座に踵を返したが、店を出る間もなく、四方から私服の特工が囲んできた。


「お嬢さん、ちょっと同行願います」


セラの手が腰の隠し武器に伸びたその時——横から一人の人影が猛烈に飛び出し、数人の特工を弾き飛ばし、彼女の手首を掴んだ!


市場でぶつかったあの若者だ!


「捕まえろ!」特工たちが銃を抜き、セラたちへ向けて発砲する。


ダダダダ!


木片が飛び散り、壁に弾丸が炸裂する。


「こっちだ!」ルカは低く叫び、セラが反応する間もなく彼女の手を引いて、隣の狭く急な階段路地へ飛び込んだ。この数日の隠密探索で地形を把握していた彼は、迷路のような路地を駆け抜け、追っ手の怒声と足音を一時的に振り切った。


七曲がり八曲がりの後、ルカは目立たない木戸を押し開け、セラを中に引き入れる。爆音のようなトルコ音楽と、濃厚な煙草とアルコールの匂いが襲ってきた——賑わう地下バーだ。ルカは立ち止まらず、踊り狂う人波を抜け、カウンターでグラスを拭く店主に近づき、素早く現地語で何か言った(明らかにワンスに教わった緊急プラン)。店主は二人を一瞥し、無言で背後の小ドアを指した。


二人は店主の狭く散らかった寝室に滑り込む。唯一の隠れ場所は、古い大きなワードローブだった。


空間は息が詰まるほど狭い。二人はほぼ密着して押し込まれ、セラの長身がルカの胸にすっぽり収まる形になった。暗闇で視覚を奪われ、他の感覚が異常に鋭くなる。ルカは抱きしめた体の温もりと柔らかさをはっきりと感じ、清冽で彼女の冷たい外見に似合わない淡い香りが鼻をくすぐった。体が一瞬で石のように固まり、血が頭に上せる。セラも少年の胸で暴れる心臓の鼓動を聞き、過負荷のエンジンのように感じた。さらには本能的な生理反応が腹に当たるのまで……だが追っ手のプレッシャーの下、ただ耐えるしかなかった。


暗闇の中で時間はゆっくりと流れる。足足三十分後、外から店主のリズミカルなノックが聞こえ、危険が去った合図。


二人はほぼ同時にワードローブから転がり出、大口で息をした。ルカはセラを見られず、背を向けて服を直すふりで股間の恥ずかしさを隠す。セラはベッド縁に寄りかかり、乱れた金髪を整える。呼吸はすぐに落ち着き、冷徹な落ち着きを取り戻した。


彼女は顔を上げ、目の前の少年をじっと観察した。


混乱の中ではよく見えなかった。今、カーテンの隙間から差し込む光で、ようやく顔がはっきりわかる。


若い。稚い。


だがあの目……


今は少し逸らしているが、深みの輪郭、時折覗く憂鬱が……


あの人にそっくりだ。


「どこかで会ったことがある?」セラは眉をわずかに寄せ、再び湧き上がる既視感に身を任せた。


ルカは見つめられ頬が熱くなり、慌てて視線を逸らし、話題を逸らした。「あなた……宇宙に行きたいんですよね?」


セラの瞳が細まる。警戒心が一気に高まる。「どうしてそれを?」


彼女の右手が瞬時にバッグから銃を引き抜き、黒い銃口がミューラの額を捉えた。


「誰に雇われた?」


本物の殺気。


ルカは両手を上げたが、驚きはしなかった。


「誰も雇ってない」彼はセラの目を見つめ返す。セラは明らかに信じていない。ルカは続けるしかなかった。


「俺……推測した。密輸商人と接触してるのを見たんだ」何日も尾行していたとは言えず、曖昧に誤魔化した。


だが彼にはわかっていた。


あの忌まわしい直感が、この女は空を見上げていると告げていた。


セラは目を細め、指をトリガーに掛ける。


「知りすぎだ」


ルカの視線が下に落ち、彼女の襟元に留まる。


激しい動きで襟が緩み、銀のネックレスが滑り出していた。ペンダントは小さな、開けられる金属の箱のようだ。


セラはすぐに視線に気づき、ネックレスを隠し、襟に戻した。


少年の真っ赤な顔を見て、ふと可笑しくなり、口調にからかいが混じる。「小さいくせに、目は正直ね」


「ち、違う! そんなんじゃない!」ルカは慌てて手を振り、耳まで真っ赤になった。


セラは説明を聞く気はない。銃を収め、窓の隙間から外を覗く。


「いい、小僧。今日のことは忘れなさい。私も忘れる」


ドアを開け、出ようとする。


「宇宙へ連れて行ける」


ルカの声が背中に響いた。


「何ですって?」


「船票は手に入らない。すべてのルートが封鎖されてる」ルカは彼女の背中を見つめる。「でも俺には方法がある」


「あなたに?」セラは振り返り、唇に嘲笑の弧を描く。


「うん!」


セラは呆然とし、改めて目の前の驚くべきことを言う少年を見直した。嘘をついているようには見えないが、「宇宙へ連れて行く」など、普通の少年の口から出る言葉としてはあまりに荒唐無稽だ。


「あなたが?」眉を上げる。「どうやって?」


「俺には……船がある」


「船? 密輸の貨物船のこと?」


ルカは頷き、深く息を吸って一歩近づく。


「五日後、アナハイムから貨物船がここに着く。俺があなたを密航させてあげる!」


セラは彼を見つめた。この謎めいた少年を。


他の誰が言っても、狂人の戯言として片付けるだろう。


だがこの少年の目に、彼女は心を揺さぶられる真実を見た。


それは……重力の底から星空を見上げた者だけが持つ眼差しだった。


「あなたは一体……誰なの?」セラは静かに尋ねた。


ミューラは少し沈黙し、答えた。


「ルカ」彼は言った。「ルカ・ワイン」

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