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死んだほうが良いものが死ぬスイッチ

作者: 小雨川蛙

 

 ある博士が奇妙なスイッチを作った。

 これは画期的な発明で押した人間の最も近くに居る存在が『死ぬべき悪かどうか』を判定して、もし『悪』なら自動的に存在を消してくれるのだ。


 さて、博士はスイッチを持ったまま極悪人が捕まっている牢屋へ行った。

 この人物の裁判はまだ始まってさえいないが死刑は確実視されている。

 ならば、ここで消えてしまっても問題ないだろう。


 そう思い博士はスイッチを押した。

 しかし、予想に反して極悪人は何ともない。


 肩を落とす博士に極悪人は問う。


「あんた、何をしようとしたんだ?」

「うるさいな。君には関係ないだろ。大量殺人犯め」

「そらそうだな……で、俺の裁判はいつ終わるんだい?」

「馬鹿が。検察も弁護士も裁判官も皆、死んじまっているから裁判はまだ始まってもいないんだよ」

「全世界の人口を1%以下にした俺は死刑確実だろ?」


 博士は肩を竦めてその場を後にした。

 極悪人の言うように彼の死刑は確実だろう。

 そもそも、人類はもう滅ぶ未来さえ見えるほどにその総数は少ない。


 ……だからこそ、人々は極悪人を『人間』として殺そうとしているのだ。

 直に滅ぶ種族であろうとも確かに『人間』は最後の一人まで『人間』であったと実感するために。


 牢屋の外の景色は博士が生まれた頃より随分と変わっていた。

 人間以外の全ての生き物から間違いなく『悪』と判断されたであろう人類が滅ぶまであと何年かかるだろうか?

 ――あまり先のことではなさそうだ。



 ***



『人間単位』ではなく『全ての命の単位』でスイッチが判断し、そのために極悪人が『悪』から世界を救った救世主と判断されたのだと気づかずに博士が死ぬことが出来たのは幸運としか言いようがない。

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