誰も知らない学校のトイレ
【第一章】消えた中学生
中学校の授業終わりのベルが鳴り響く。
キーンコーンカーンコーン
授業が終わり、切羽詰まった表情の女の子が
勢いよく教室から出てきた。
右と左を見て、右に行こうとしたのだが
急に方向を変え左に走り始めた。
左にあるのは、1組のクラスと壁だけだ。
彼女は、壁をめがけて走り始めた。
ぶつかると思った瞬間〈ギギギィ〉と重く鈍い音が響き
左側の何かに彼女は連れ込まれたのだった。
〈バタン〉と音と共に。
1組の教室以外、何も無い筈なのだが、、、
その後、何分経とうが彼女が出てくることは無かった。
数日後、人気のない公衆トイレの便器内に
バラバラにされ突き刺された体が発見された。
顔は、給水タンクの上に置かれていた。
その、遺体は彼女のものだった。
この事件は、すぐに学校中に広まった。
そして、1つだけ不可思議な事が起こっていた。
出席簿・座席等の彼女が在籍していた記録は、残っているのに誰も彼女を覚えていない。
それも、この学校に通っている生徒と先生のみ。
彼女の保護者や他校の友人、近所の方等
学校外の人達は、彼女の事を覚えている。
学校内外で、彼女に関する記憶に違いが出ていた。
更に、学校内の人達に写真や映像を見せると彼女と親しかった・近しかった者ほど
頭痛を訴えたり、何かを忘れている事に気付く者が居る事が分かった。
その対照で、ただのクラスメイトや学年が一緒・部活動が一緒ぐらいの者は
何も変化は無かった。
彼女という存在が、記憶から完全に消えていた。
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【第二章】見覚えのないトイレ
「ねぇ、知ってる?この学校に、本来存在しない筈のトイレがある噂」
突然、友人の望結が噂話を始めた。
望結は、噂が三度の飯の次に好きだからいつもの事だけど。
そして、今回の内容はある筈もないトイレの話らしい。
目の前で、熱く語ってくれている。
正直、私は噂話には興味がない。
だって、噂のほとんどは嘘だと思っているから。
そんな事より、誰も覚えていないのに学校に在籍記録があって
変死体で発見された、彼女の話が私は気になる。
名前は、藤原 舞。
何故か分からないけど、『私達』は藤原 舞を知っている気がする。
名前を聞いた時に、私と望結は同時に激しい頭痛に襲われた。
この頭痛が、何を意味しているのか分からない。
藤原さんと過ごした記憶は無い。
それでも、私と望結と藤原さんの三人組だったような気がしてならない。
じゃあ、何で覚えてないの、、、
そんな事を考えながら、頭を抱えていたら望結が怒りながら声を掛けてきた。
「ちょっと、優花!話聞いてる?」
「ごめん、考え事してた」と謝りつつ上の空。
頭を冷やすために、トイレに行く事にした。
望結も行くと言ってきたが、今は1人になりたかったので断った。
何で、こんなにも頭から離れないのか。
考えれば考えるほどに胸が締め付けられる気分。
トイレに向かいながら「はぁ…」と溜め息をつく。
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トイレの入り口に辿り着き、扉を開けて入った。
私は、目の前に広がる光景に驚いた。
だって、こんなトイレ知らない・・・
私は、すぐにトイレから出ようと振り返ったのだけど扉が消えていた。
薄暗く蛍光灯が点滅していて、広い空間の奥に個室が1つある。
まさか、望結が言ってた噂のトイレ?
いやいや、そんな訳ないよね。
違うと自分に言い聞かせる。
こんな状況なのに、尿意を感じてきた。
怖いけど、漏らしたくはない。
仕方なく、奥の個室に向かう事にした。
ピちゃピちゃと、水の滴る音。
肌寒い室内。
何かが潜んでたりしてもおかしくない雰囲気。
そんな事考えてて、何かが居たらどうしよう・・・
早くトイレ済ませて、何とかここから出ないと。
個室の前まで辿り着いた。
扉を開ける。
中は、和式だと思いきや洋式だった。
中に入ると自動で電気が付いた。
便座に座り用を足す。
シャラ…シャラ…
え、何?この音…
徐々に近づいてくる…
そして、音が止まった。
——天井の方から鎖鎌の先端が、顔の前に降りてきた。
恐る恐る上を見上げる。
そこに居たのは…
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【第三章】化け物の正体
時間を遡り、優花がトイレに行って少し経った頃。
優花トイレに行ってから、全然帰って来ないや。
大丈夫かな?
私は、心配になったのでトイレに向かう事にした。
トイレに向かいながら、噂の事を考えて。
何でだろ、凄い胸騒ぎがするや。
大丈夫、噂は噂。そう自分に言い聞かせて。
教室から一番近いトイレに辿り着き、扉を開けた。
でも、個室の扉は全て開いていて誰も居なかった。
優花?声を掛けるが、当然返事は無い。
だって、トイレには誰も居ないんだよ。
ここじゃないトイレに行ったって事?
何で、わざわざ遠いトイレに…
ズキッ…
頭が割れるように痛い…
突然、激しい頭痛が私を襲い始めた。
あまりの痛さにトイレ内でうずくまった。
優花…無意識で優花の名前を呟いてた。
その直後、頭痛が治まった。
優花って誰だっけ?
てか、何の用でトイレに来たんだっけ?
誰かを探してたような気がするんだけど
記憶がないや。
私は、違和感を感じながら教室に戻って
その後の学校生活を送った。
私の前の席が空いているのを、ずっと気にしながら。
今日、休んでいる人居なかったはず…
どんな人だったかな。前の席の人。
あぁ、モヤモヤするよ…優花…
え?また、知らない人の名前が浮かんだ。
誰なの?『優花』って。
名前を考えると、温かいけど胸の奥がズキズキする。
もしかして、大切な人…?
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~次の日~
朝のHRで、先生から伝えられた。
また、私のクラスの生徒が一人
人気のない公衆トイレで、バラバラ死体として発見された。
便器の周りを囲むように手足が立てて置いてあり
顔は、便座の上に置かれていたと。
その生徒の名前は『水森 優花』
名前を聞いた瞬間、頭痛と吐き気に襲われ教室を飛び出し
トイレの個室に駆け込む。
突然、私の頭の中に記憶が流れ込んでくる。
この記憶…私、知ってる。
ずっと、胸の中に感じていた喪失感。
頭の中のピースが少しずつ埋まっていく。
思い…出した…全部…
私は!私達は!!三人組だった。
私、優花。そして、舞。
いつも一緒だったのに、何で忘れていたの…
同時に、思い出しても帰って来ない無力感が私を襲った。
震える手で、冷たい便器を掴み顔を伏せた。
嘔吐。そして、泣きじゃくった。
あああああああああああああああ。
我を忘れて、叫んだ。
その声で、人が集まってきたわ。
でも、そんなのどうでもいい。
返してよ!
私の大切な二人を!
何で、二人がこんな目に遭わないといけないの…
許さない。誰か知らないけど、私から二人を奪った罪。
償わせてやる、、、!
私は、周りの人を押しのけてトイレから出た。
何か、声を掛けてくれてた人も居た。
でも、今はそれどころじゃないの。
私は、武器を用意するために体育倉庫に向かって走り始めた。
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体育倉庫に辿り着き、扉に手をかけた。
良かった、開いてる。
武器になりそうな物…金属バットが目に入った。
これなら、どんな相手でも戦えるはずよね。
私は、金属バットと懐中電灯を手にして
体育倉庫を出た。
出た瞬間、体育倉庫横のトイレから呼ばれたような気がした。
声がしたわけじゃない。
引き寄せられるような感覚に近い。
私は、体育倉庫横のトイレの扉を開けた。
目の前には…
薄暗く蛍光灯が点滅していて、広い空間の奥に個室が1つあった。
あぁ、ここが噂のトイレか。
誰が噂を流したのか知らないけど。
直感的に、この場所がそうなんだと分かった。
手に持っていた蛍光灯で室内を照らし息を呑んだ。
だって、照らした先には・・・
何、あれ。この世の者じゃない。
きっと見間違いだ。
私は、目を擦った。
そして、目を開けると
目の前に居た。
バタン、背後の扉が閉まる音がした。
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【最終章】終わらない悪夢
私は、咄嗟にバットを振り回し距離を取った。
手に持ってるのって鎖鎌?
あれで、バラバラにしてたのか。
恐怖で足は震えてる。
でも、頭は意外と冷静なんだよね。
二人の仇は、必ず取る!
自分の気持ちを再確認して、バッドを握る手に力を込めた。
しかし、同時に冷静に考えれば考えるほど
倒せるのか?の結論に辿り着く。
化け物は、動かない。
一瞬でも気を抜けば『死』
瞬きを一回…
目の前から、奴は消えた。
何処に行った!?
シャラ…シャラ…
頭上から音が聞こえた。
私は、頭上にバットを抱え攻撃を防ぎ距離を取った。
ガシャン!
激しく動いたせいで懐中電灯が落ちて割れてしまった。
暗闇で、奴と対峙しなければいけない。
瞬きだけでも命取りなのに…
絶望的な状況が私を追い込んでいく・・・
っ…バットを握っていた手が痺れてる。
重い一撃だった、、、
ごめん・・・
舞、優花…
仇…
取れそうにないや…
シャラ…シャラ…と音が徐々に近づいてくる。
私は、へたり込み上を見上げた。
目の前には、鎖鎌を高く掲げた奴が居て
振り下ろそうとしていた——
「望結諦めちゃダメ!」
「私達の仇取ってくれるんでしょ?」
目の前に、居る筈のない
舞と優花が居た。
でも、どうしたらいいの?
私は、二人に尋ねた…
すると、、、
『望結には私達が付いてる。三人居れば最強でしょ?』
二人は、そう言い残し笑顔で消えていった。
『三人居れば最強』
そうだよ、私がずっと言ってきた言葉だった。
舞も優花も私の中で生きている。
キッと、奴を睨みつけた。
もう、震えたりなんかしない。
バットを再び強く握る。
すると、バットが強く光り始めた。
『光』に一瞬奴がひるんだ。
チャンス!私は、思いっきり奴の横腹をバットで振りぬいた。
奴のフードが外れ…だが、顔はよく見えなかった。
奴は、最後の抵抗で鎖鎌を振り下ろした。
私の腕に鎖鎌の先端が刺さる…
それでも、バットの手は緩めない…!
うりゃああああああああ
奴は、光に包まれ消滅した。
終わった。終わったよ二人共。
私は、安心して大声で泣いた。
腕の痛みなんか感じない程に、泣き続けた。
「ねぇ、知ってる?誰も知らないトイレの噂」
耳元に生温かい吐息を感じた。
誰!?
振り返ったが、そこには誰も居なかった。
気のせいだったのかな。
私は、いつの間にか現れていたトイレの扉に手をかけ…
バタン
シャラ…
今回のテーマは、「トイレ」です
そこで、学校という誰もが馴染み深い舞台にしました。
第二章の挿絵に隠された部分を、第三章の挿絵で明確にしていく要素を取り込みました。
まるでその場に居るかのように読んでもらえれば光栄です。




