File10 地球滅亡の日#6
突然軽快な音楽が流れ始めた。
「おい、この音楽。ちゃんと許可取ってんだろうなァ?」
著作権とデマにうるさい荒崎が顔を顰める。というか終わっていなかったのかあの動画。
モニターの黒い画面にはデカデカと白字で『次回予告』の文字が映し出されていた。すると御書弐号がモニターに映し出され、真正面を向いて口を開く。
『2014年6月✕日(金)午後6時44分49秒、人類史に類を見ない大規模な太陽フレアにより、ありとあらゆる電子機器はその生涯を終える。人類の文明は再び火を起こすことから始まるだろう。』
そして暗転。色んな国籍の大人達が円卓会議を行っている。
『何度だって助ければいいさ。我々にはそれが出来る。』
『去年の作戦でエネルギーは枯渇、あのミセス方向音痴もいない、2周目のケビンはケンブリッジ大学飛び級試験対策で塾通い、こんな最悪なコンディションでどうやって救うって言うんだ。』
『未開拓の部族は?』
『地球の危機は我々の危機であるが、最先端の文明の崩壊に関しては我々には一切関係ないって門前払いだよ。』
『ミセス方向音痴の娘がいるだろう。』
『あれは危険すぎる。』
江利はいつの間にか危険視されている。
『だからってこの星を見捨てるつもり?見損なったわ。』
『じゃあ俺達に何ができるってんだよ!!軍の援助もない、民間団体だって無力だ!』
『だからといって指を咥えて見ていられない。』
『そんなの!……俺達だって同じだ。』
『一つ、手はある。』
ハリウッドの名優ばりに揉める研究員達の声を遮ったのは、さっき会ったばかりの御書父だ。
『書記長……。』
『この少年だ。』
そう言うと御書父は一枚の写真を真ん中に置いた。それは……、
「い、いつ撮ったんだぁ!」
「ついこの前。」
モニターの中には満面の笑みを浮かべた俺の写真が映されていた。銀髪がチラリと見えるからたぶん隣には江利がいる。
「たまにすっごい気が緩んでる顔するよな。」
「なかなかいい笑顔だろ。いっつも仏頂面だったから貴重な1枚だぜ。こういうシーンは謎の笑顔って決まってんだ。」
動画はでかでかと俺のフルネームを映してフードアウトした。
「よし!これでお前達も分かっただろ?この危機には鬼塚の力が必要不可欠だ。」
「最後の写真は地球滅亡回避まで目を瞑るとして……、どうすればいいんだ?」
危機がなんなのか、自分の役割さえも未だに分かっていないのだが。というかこれを見せるためにあんな長い動画を流したのか。
「出発しようか。 弐号、用意してたアレを運ぶの手伝ってくれ。お前らも。」
そう言って御書はひし形のランプのようなものを手渡してきた。見ると20個ほど同じ形状のものが雑多に置かれている。それを御書ががさつに2つの大きめのトートバッグに詰め、俺と荒崎で持つことになった。御書はアンテナとパソコン、御書弐号は望遠鏡を持っていた。
そしてダブル御書に促されるまま地下の部屋から出た。
「父さん。今から世界を救ってくるぜ。」
「おお。あんま遅くならないようにな。」
主人公の父ばりに出演しておきながら随分淡白だ。
「ご飯は?」
「家の人いる?」
御書は俺達に聞いてきた。
「俺は今日一人だけど。」
「お袋には遅くなるって伝えてる。」
「じゃ、二人分追加で。」
「あいよー。気をつけてな。」
「「行ってきます。」」
ダブル御書はまるでこの平穏が続くのを確信しているようないい返事だった。現在午後6時15分ちょうど。
文明滅亡の危機まであと29分。




