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水沢江利の怪事件簿  作者: 袖利
中学校二年生編
82/84

File10 地球滅亡の日#4

遅くなりました。A型インフルでした。

「これからの人間に答えを明示するのは御書家の流儀に反するが……」

 御書はマウスをカチカチっと何度か鳴らし、その音が止むと振り返りながら不敵に笑った。

「1999年、空から恐怖の大王がやってきて地球は滅亡する。」

 聞いたことはある。今よりもっと昔にノストラダムスという外国人が、1999年7月に世界が滅びると予言したとテレビでやってた気がする。

「とんだポンコツ予言もあったもんだ。現に俺らが生まれちまってんだからな。」

 荒崎の反応が予想通りだったらしく御書(オリジナル)はますます嬉しそうにする。俺はこれ以上調子に乗らせるなという思いで荒崎を小突いた。

「全世界の人間はデマだと思っているようだがな、1999年、人類はマジで滅びるはずだった。これを見ろ。」

 御書はモニターを見るよう促す。モニターからは科学の授業でたまに流される教育番組の科学実験動画で見るような動画を流し始めた。

「言っとくけど睡眠時間じゃないからな。」


『2000年問題をご存知だろうか。』

 御書(恐らく弐号)のナレーションと共に銀河系が映し出される。

『1999年から2000年に切り替わる時、コンピュータは西暦の下二桁で判断しているため2000年を1900年と誤認する可能性があることから想定されたコンピュータの不具合である。しかし、多くの企業の場合、緊急対応によって大きな問題はなかった。それは宇宙開発でも同様である、はずだった。』

 真ん中のモニターは一つの人工衛星を映し出した。

『1機の人工衛星を除いて。この1機の異常動作はNASAでも検知していたが、気にも留めていなかった。太陽の近くを観測している者によくあること。しかし、』

 モニターは宇宙から地球へと帰還し、何も無い荒野を映し出す。画面の端には

“エリア51上空写真。入手困難な画像につき、褒めて欲しい。”

と書かれていた。俺と荒崎は素知らぬふりをする。

『アメリカのエリア51を拠点として非公式に科学実験を行っている謎の民間団体、エレキテルサークル、後の世界エレキテル連合WEUである組織この異常動作について次の見解を示した。』

 左右のモニターにアメリカのホワイトハウスとイギリス王室が映し出される。

『異常動作を始めた人工衛星は何故か深層Webを含む全てのネットワークに接続する権限を付与されていた。それは各国が保有している核兵器の発射通信も例外ではない。各国の企業が2000年問題に対応している最中、その隙を虎視眈々と人工衛星は狙っていた。』

「通信されてもおかしいって気づくだろ、普通。」

『通信されてもおかしいって気づくだろ、普通と思ったことであろう。』

 こちらの考えも予想済みか。ロボットのくせして小賢しい。

『人工衛星はそこも抜かりなかった。各国に偽の情報を提供し、先の大戦で得た画像を編集したものを世界中にばら撒き、戦争が始まる程を装おうとまでしていた。

 この危険動作に気がついた団体はすぐさま人工衛星を撃ち落とし、全機能を停止。破壊してもいつ異常動作を引き起こすか分からないため今も団体が24時間監視体制の下、厳重に保管している。』

 光のささない場所に奇妙な光を放っている壊れた人工衛星が映し出されてた。実際に保管されている場所なのだろうか。武装した人が5人ほどその人工衛星を囲んでいる。

『ここで疑問が生じる。一つ、何故人工衛星はこのような無謀なことを企てたのか、一つ、どのようにして民間団体に過ぎないお遊び科学集団がその異常動作を検知できたのか。その答えは未知のエネルギーが深く関係している。』

 アメリカ人っぽい男の人が映し出される。

『彼はノア隊員、サークルに大きな貢献をもたらした人物。ノア隊員は突如として予知能力に目覚めた。初め、周囲も彼自身でさえも気が狂ったとしか認識していなかった。サークルは興味本位で彼の脳波を徹底的に調べあげたが何の解決にもならなかった。』

 画面は再び人工衛星を映し出したが、突如画面にはDangerの文字が映し出され、喧しい警告音が鳴り響く。

『ところが彼が問題の人工衛星を認識した時、モニターから警告メッセージが出力された。すぐさまサークルは警告の原因を解明したが、人工衛星から送られるセンサーに問題は確認されなかった。試しに、ノア隊員の脳波を調べると人工衛星を認識した時に限って未知のエネルギーが発せられていることが確認され、そのエネルギーがセンサーに干渉していることが判明した。

 更に人工衛星の異常動作も彼と同じ未知のエネルギーが負荷されたことが原因であった。また驚くことにそのエネルギーは500年前のものであることが判明した。

 この未知のエネルギーをサークルは負のエネルギーと定義した。それは神の加護や霊感などといった不可知論的対象、また感情という科学には不要のものが主な構成物質である。』

「ちょっと非科学的じゃないか?」

「非科学的っていうやつほど科学がどんなもんか理解してないんだよ。」 

『負のエネルギーの理解を深めるため、少し脱線しよう。人間から放出された負のエネルギーは過去、現在、未来の時間の縛りを超えて作用するものだということがサークルの研究により判明した。

 地球の生成にも大いに関係しているのではないかと思われる。この解明は宗教、歴史に影響を与えかねないことから明言を避ける。』

「なんで?」

「明言を避けるって言ってんだから避けろよ。」

「こんな動画出しといて気になんだろ。教えろよ。」

 荒崎はずっと食い付きがいい。

「しゃーねぇなぁ。ちょっとだけだぞ。」

 御書は動画を一時停止した。

「この世界の過去、現在、未来は同時に存在している。」

「猫型ロボット風の説明で頼む。」

 また訳の分からない話を永遠にされたらたまったものでは無い。まあアニメは金曜日に見たり見なかったりなんだが。

「猫型ロボットが宿題のために何時間前の自分をかき集めた話あっただろ。あんな感じ。時間は一本の道になっていて、先を行く自分もいれば、後ろを歩く自分もいる。同じ道を一緒に歩いているんだ。スピードが違うだけで。

 そこで先に行く自分が考える。この道は誰が作ったのだろうか。人か、獣かはたまた超自然現象か。そしてそいつは超自然現象が創ったと心の底から信じた。なんだったら超自然現象が道を創る過程を書いた本まで出版した。

 その情熱が負のエネルギーとなって自分の歩いている後ろに作用して、一本の道は人間や獣が創ったとは考えられない代物になっていく。

 後を歩く自分はこの道は未知の領域なんだなと思う。この後を辿っているのがこの世界線。それがWEUの出した答えだ。」

「ただの物が、未来の人間が想像を膨らませてたらオーパーツになった、みたいな?」

「ま、そんなとこだ。続けるぞ。」

 勉強になったようなならなかったような。御書(オリジナル)はこちらの理解を置いてけぼりにして動画を再生した。

『あの予言から15年、世界エレキテル連合WEUは人類の発展のため負のエネルギーの解析を進めているが、現時点では未だ不可知論的対象と感情のエネルギー区別が不可能である。感情に至っては正負の反応の違いすら我々は掌握できていない。』

「妖力とか魔力とかんなら数値化出来そうだけどな。RPGでもMP100とか数値化されてんのあるし。」

「それはフィクションだからな。そうだな。荒崎は自分の酸素摂取量が何VO2maxで現在のメンタルはこんくらいだからあと校庭きっかり何周走れるって計算出来るか?」

「無理だろ。なんだV……なんだかって。まぁ校庭10周くらいなら走れるんじゃねぇの?」

「だろ。負のエネルギーもそんな感じなんだ。ほぼ感覚に近い。」

『1999年のノストラダムスの予言に話を戻そう。そもそもノストラダムスとはフランスルネサンス期に活躍した占星術師であり医師である。

 彼は占星術で多くの予言をし、予言集まで発刊した。当時の熱狂ぶりは凄まじく、現在よりも科学の発展が乏しかった民の間では信じるものも少なくはなかったであろう。人々の感情もとい負のエネルギーが500年後の未来に届き、一つの人工衛星を恐怖の大王に仕立て上げたのだ。その人工衛星の名は偶然か必然かノートルダムという愛称が付けられていた。』

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