表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
水沢江利の怪事件簿  作者: 袖利
中学校二年生編
80/81

File10 地球滅亡の日#弍

「で、なんで俺なんだよ。」

「いいだろ。今日は部長直々に文芸部は休みって言われたんだから。」

「そういう問題じゃねぇよ。なんで俺を厄介事に巻き込むんだよ。俺は部長と違って静かに暮らしたいんだ。」

 放課後、俺は教室でぼんやりとしていた荒崎を図書室まで強制連行した。江利にああは言ったものの荒崎とはまったく約束していなかったし、伝えてもいない。

 喚く荒崎に一ノ瀬とシャーロット先生の話をすると、文句を言いながらも図書室で御書の登場を待ってくれている。

 他の生徒は今頃部活動の最中であるため、図書室には俺達以外誰もいない。

「そのわりには喧嘩っ早いじゃないか。知ってんだからな、裏でコソコソしてんの。江利にチクってやろうか。バレー部員とシャーロット先生に知れ渡ることになるぞ。」

「絶対にやめろ。ほぼ全校生徒にバレんじゃねぇか。」

「だいたい俺だってもう限界なんだ。内緒話なんていっちばん苦手なんだ。今すぐにでも、江利に洗いざらい話したいくらいだ。」

「だからって俺に全部ぶちまけるなよな。これからどんな顔して一ノ瀬と将棋すりゃあいいんだよ。ハニトラはお局にやたら殺意高めだったから納得だけどよ。」

 ハニトラとはシャーロット先生のことだ。海外でハニートラップを仕掛けていそう、むしろ仕掛けられたいという男子中学生の単純な思考回路と願望で付けられたあだ名だ。江利の『サイッテー』という見下すような目が忘れられない。

 ちなみにお局とは家庭科のベテラン女教師のことで、やたらと若い先生に生徒の前だろうとほかの先生の前だろうとネチネチとしつこく責めている。

 シャーロット先生にもそうなので、逆鱗に触れて英国で封印されてしまうんじゃないかと気が気でない。お局は由緒ある日本の妖怪だし。

「御書ってどんな奴だ。」

「ただの本読みだよ。あいつが喋ったところなんて一度も見たことがない。なんつーか、無機物なんだよな。」

 たまに用があって4組の教室に行くが、決まって御書は教室の片隅で本を読んでいる。一見、普通の、根暗なー他人のことは言えないがー男子生徒のように見えるが、その裏で何かを企んでいるのだろうか。兎にも角にもこれは本人に直接確かめるしかない。

「しっかし御書はいつくんだよ。あいつも部活休みだろ。まさか忘れて本読んでるわけじゃないよな。」

 その時、図書室の本棚からぬっと人影が現れた。


『死んでからも読書なんて、生前は相当な読書家だったのね。漫画?町立中学校の予算じゃ無理に決まってるでしょう。』

 以前図書室で調べ物をしていたとき、江利が虚空に向かって話しかけていた。俺は妖怪は見えるが、幽霊は見えない。江利曰く、幽霊はあちこちにいっぱいいるのだそうだ。図書室も例外ではなく、むしろ他の場所よりも多いらしい。

 ちなみにその時の幽霊は本当かは定かではないが、首がちぎれかかっていたという。


「んだよ、御書かよ。ビックリさせんなよ。お前なんで机の下に隠れてんだよ?」

「……避難訓練。」

「もしかしてお前怖い」

「避難訓練!」

 もぞもぞと机の下から這い出る。途中ガタンと大きな音を立てて頭をぶつけてしまった。幽霊のことを思い出すわ、荒崎に見られるわ踏んだり蹴ったりだ。

「……図書室では静かに。」

「じゃあ待ち合わせ場所に図書室を指定すんな!遅いし!何にしてたんだよ!」

 八つ当たりであることを自覚しながらも、表情が変わらない御書に非難の言葉を浴びせる。

「荒崎を連れてこいとは書いていない。」

「じゃあ俺帰ろっ。時間の無駄だったな。」

 逃げようとする荒崎の腕を掴む。

「連れてくるなとも書いてなかった。」

「確かに。指示もされていない。一人増えたところで問題ないだろう。」

「はぁ?!」

 そういうと御書は慣れた手付きで持っていた本の貸出処理を行い、図書室から出ていった。俺達が棒立ちしていると、じーっと見てきた。

「着いて来いってことなのかな?」

「たぶん?」

 俺達が図書室から出ると、御書は何も言わずに歩き出した。

「なぁ、御書。どこに向かってんだよ。」

「俺の家。」

「なんで?」

「理由は二つ。一つ、俺のオリジナルが鬼塚翔瑠に会いたがっている。」

「「オリジナル?」」

 俺達の疑問に答えるつもりはないようで構わず続けた。

「二つ、今日で地球の文明が滅亡するから。」

「は?」

ー用語解説 一部ネット参照ー

『妖力』

 主に妖怪が扱う特異な力。人間でも扱える者も少数いる。龍神は何者かによって与えられたことを仄めかしていたが、研究室はその根源の解明に至っていない。

 妖力が扱える人間を妖術師と表現するが、研究室ではコンプラ意識等から怪奇能力保持者(物覚えが悪いので本編で間違えているときもあります。悪しからず。)と表現を変えている。

 例えるのであれば、タンバリンがタンブリンに変わったのと同じ現象。


『霊力』

 人間本来が元々持っている力のこと。小さな子どもや神職、たまに一般人で霊力が強く幽霊が見えてしまうことも。怪奇能力保持者でも霊力が弱く、幽霊が見えない人もいる。

 

『幽霊』

 人が死後、無念と霊力を抱え成仏できずに現世にとどまってしまった個体のこと。人に見える幽霊は大抵ひ弱な存在でほっといても消える。

 霊力が強ければ強いほど自由自在に姿を現すことが出来る。いつぞやの建築家志望の少女のように悪意を持っている者もいるため、個体によっては妖力を使った除霊が必要。


『妖怪』

 人間の人知を超えた不気味な存在の総称。人々の思い込みから生み出される。時折、幽霊から妖怪に昇格してしまう元人間もいる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ