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水沢江利の怪事件簿  作者: 袖利
中学校二年生編
79/81

File10 地球滅亡の日#1

 1999年7月、空から恐怖の大魔王がやってきて地球を滅亡させるとノストラダムスは大予言した。しかし、グレゴリオ暦は2000年を迎え、今日も地球は回り続けている。

 その13年後2012年、古代マヤ文明の暦を端を発して地球滅亡説がまことしやかに囁かれた。だがその当日、やはり何も起こらず、実はマヤ文明の暦は200年先も続いていた。

 果たして、数々の予言はデマであったのか。別の形となって予言は当たってしまったのか。はたまた裏で暗躍していた人物がいたのか。もはや我々人類には知る術もない。

 ーそして、2014年6月。多くの生命体にとってはなんでもない日であるはずのとある華の金曜日、地球滅亡のタイムリミットが近づいていることを、まだ誰も知らない。

「それでね、タオと雨で今日学校の帰りに太陽を見に行こうって誘われて、ミケも一緒に。」

 江利は3人分のフレンチトーストを用意しながら言った。今日は華の金曜日、寝坊しがちな江利は金曜日の朝だけは早い。早く起きた日はこうしてたまに凝った朝ごはんを作ってくれる。

 京都旅行から1ヶ月が経とうとしていた。研究室からは、今回の騒動の結果、雨宮の両親の再審が行われることになり、今度はかなり公平な龍の裁判がなされるだろうと伝えられた。このまま順当に事が進めば、雨宮が中学校を卒業するまでには再会できるかもしれない。龍神も従者の責任を追求すると言っていたし、きっと上手くいく。

 久しぶりの両親の報告に、雨宮は周りに雨を降らしながら泣いていた。そんな雨宮も大洗に徐々に馴染んできたらしく、江利と桃原、雨宮で『台風一家』なる班を結成し、交流を深めているようであった。

「太陽?なんでまた?」

「太陽の動きが活発?だから、フレアを見に行こうってタオに誘われたの。」

 江利は一拍おき、目をキリッとさせ咳払いをした。

「『パパ上……、げほんごほん父が筑波に天文台を新設したんだ。しかも最新鋭の技術を搭載した天体望遠鏡も完備!これで太陽の黒い斑点どころか、そりゃあもう内部の核までスケルトンかと言うくらい観察できるだろう!どうだ、お前達も天体観測に来ないかっっ!』って。」

 もったいぶったわりには江利のまんまだった。それにしても、

「本当にあいつお嬢様だったのか。」

「全然見えないよね。今日もリムジンで迎えに来てくれるんだ。」

「はぁ?!」

 ドラマで得た知識では、リムジンはそれこそ何億もの莫大な資産を持ついいとこのお嬢さんお坊ちゃんが乗り回している高級車だ。執事も専属にいるに違いない。しかし、これで驚くのは早かった。

「あとね、オーロラ鑑賞用の別荘を世界各地に持ってるらしいよ。去年はアラスカに行ったって自慢してきたわ。」

「はぁ?!」

「ネットだと総資産1兆円。」

「はぁ、あ、へぇー?」

 1兆円と言われてもパッと思いつかない。宝くじで換算してみるが、1等賞を100回以上は当てなくてはならないだろう。

 彼女の家に居候して小遣いだけで細々と生活している男もいれば、アラスカに別荘を買って茶道教室に通うお嬢さんもいるのか。人間色々だ。

「……なんであいつ研究室にいるんだろうな。」

「雨も同じこと言ってたよ。世の中には、変わったお嬢様もいるんだね。だからごめんねぇ、今日は翔瑠君1人だ。」

「あー、でも俺も少し用事が出来て。」

「なんの用事?」

「荒崎と、ちょっとな。」

 荒崎と聞いた途端、江利は顔を顰める。

「荒崎と?大丈夫?翔瑠君変なことに巻き込まれていない?」

 江利が知らない裏で研究室と喧嘩別れした組織が妖怪を大々的に取り上げて江利を引き抜こうとしているし、シャーロット先生はイギリスのスパイで江利をファンタジーの魔王よろしく封印しようとしている。

 なんて全部白状出来たらどれほど清々しいだろうか。江利に隠し事をしている罪悪感も薄まるというものだ。正直に伝えたいのを俺はグッと堪え、

「ほんとうに、大した用じゃないんだ。」

と曖昧な返答をした。江利もそれ以上は突っ込んで来なかった。

 俺は昨日下駄箱に入っていたパソコンの字体で書かれていたノートの切れ端のメッセージを思い出す。

『明日、図書室に来られたし。  御書叶都』

 御書も文芸部員。であればそれとなくその正体に想像がつく。いくつあるか分からない要注意団体に所属する江利を狙う不届き者。答えはそれしかない。また江利は何に巻き込まれようとしているのだろうか。

「あたしの顔になんか付いてる?」

 顔を眺めすぎてしまった。江利は小首を傾げている。

「いや……、」

 誤魔化すように不意に思いついた言葉を口にした。

「今日も可愛いなって。」

 日本が拳社会じゃなくて良かったー確かに可愛いのだけれどー。もしあったら迷わず弾丸で脳天を貫いていたことだろう。江利はカァーッと頬を真っ赤に染め、足をジタバタさせていた。

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