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水沢江利の怪事件簿  作者: 袖利
中学校二年生編
77/81

File9 そうだ、京都に行こう♯14

 これまでずっと黙っていた仲居さんは口を開いたかと思えば、また溝が深まるようなことを言う。これには江利も負けじと言い返した。

「スパイ映画が好きなだけで疑われてたら溜まったもんじゃないわ!現実とフィクションの見分けがつかないわけ?」

 威勢はいいけど絶対違うと思う。 

「違います!諜報員の乱入です!龍の一族は秘匿の存在。我々の存在を知っているのは日本国内でもひと握りだけ。だというのに何故、異国の諜報員は我々の居場所を把握し、如何様にして凛様の捕縛などという無謀なことを試みたのか。」

「こいつならいけそうだと思われたんじゃない?」

「それだけではありません。龍神様に逆らった不届き者達を何者かが手引きした形跡が見られました。恐らく同様に諜報員が、動いていたと思われます。」

「「「えっ。」」」

 江利も桃原もKも驚いていたが、俺は動じない。あの覚えのある香水の匂いはきっとシャーロット先生のものだろう。

「内通者がいると我々は確信しています。」

「心外ですね。研究室にはそんな裏切り者はいません。そちらの従者と違って。」

「さて、どうでしょうか。我々の尋問の前では如何なる嘘も無駄ですよ。」

 Kが庇っているところ悪いが俺は一人心当たりがある。

「……桃原、お前京都行きの話誰かにした?」

「え!え!えぇー!鬼塚は私を疑っているのか!酷い!仮にも彼女の心友だぞ!」

「親友ってほどでもないんだけど。」

「私はいんちょーにしか言ってないぞ!」

「何やっとんのお前?」

 Kが怒りと驚きのあまり素に戻っている。

「誓ってほんとうだ!」

 なんとなく友達が少なそうだからこれは本当だろう。

「今失礼なこと思っただろう!」

「誰にも言うなととすけさんから言われませんでしたか?」

「だ、だから信用している人しか言ってないんじゃないか。」

「そないな問題とちがう!」

 Kのドスの効いた京都弁に桃原はしどろもどろになる。そして本命、

「江利は?」

「あたし?あたしは普通に部員でしょ、土御門先生でしょ、二階堂、ユウキ、と地元の友達何人か、あとシャーロット先生にも。ほら誰にも言ってないでしょう。」

 ということは、喧嘩別れした組織にも、バレー部全員にも、イギリスの諜報員にも全て筒抜けということか。そして江利はしまったという顔をした。ようやく事の重大さに気がついたか。

「お土産買わなきゃじゃん!言わなきゃ良かった!!」

 Kが床に額をぶつける勢いで土下座した。

「申し訳ない!これほどまで内通者がいたとは!」

「随分と口の軽い内通者でしたね……。」

「お爺様になんと報告すれば良いか。」

「やっぱし時雨は渡さへん。」

 Kは更に深々と頭を下げる。それはもう底が抜けてしまうのではないかというくらいの勢いだ。

「ほんっとうに申し訳ない。」

「あぁお土産何にしよう。」

「生八つ橋はどうだ?定番だろう。私はニッキが好きだ。」

「賞味期限近そうじゃない。あとあげるくらいならあたしが食べたい。」

「都バームは?」

「あげるくらいだったらあたしが食べたい。」

「抹茶のお菓子とか」

「あげるくらいだったら……」

「お前あげる気ないだろう。」

「翔瑠君どうする?」

 内通者疑惑のある二人は呑気に土産の相談をし始めている。Kが不憫でならない。

「あ、俺も買わなきゃ。」

 すっかり頭から抜け落ちていたが、2人しかいない野球部の元幽霊部員仲間につい言ってしまったのであった。Kに伝えると今度こそ床を破壊しかねないので黙っていることにする。あくまでKのためだ。隠そうとかそういうつもりじゃない。

「ふふふっ。」

 唐突に雨宮が吹き出した。5人の視線が雨宮に集まる。

「あ、ごめんなさい。ただ、御2人といると退屈しませんね。」

「まあ、そうですね。悪い意味で。」

 そうかなと江利と桃原は首を傾げる。

「未熟者ですが、これからよろしくお願いしますね。えと、」

「タオと江利でいいぞ!」

「なんであんたが勝手に決めてんのよ。」

「鬼塚は鬼塚な。江利が怒るから。」

「怒らないわよ!」

「では改めまして、」

 雨宮はすっと姿勢を正す。

「江利ちゃんとタオちゃん!よろしくね!」


 宴会も終盤に差し掛かり、すけさんも爺さん達もベロンベロンになってきた頃、そろそろ飽きたということで江利、桃原、雨宮、凛は丑の刻参りの見学に行くと言い出し神社の外に行ってしまった。Kも神社の中を見たいと言って、数人の仲居さん達とツアーに出掛けてしまった。

 残された俺は酔っ払いどもに絡まれるのも面倒なので、ふらりと広間から抜け出し、廊下をぐるりと意味もなく歩いてみた。

「彼らには悪い事をしたな。」

「いいえ、龍神様のせいではございませぬ。まさか、従者様が裏切られるとは……」

 話し声が聞こえ、サッと物陰に隠れる。そおっと覗くと謎の青年姿の龍神と凛の爺さんが縁側で話していた。

「まぁいつまでも天界に戻る気配のない堕落した神に愛想を尽かしたんだろうね。」

「そのようなことは……」

「気を遣わなくていいって。私とりゅうちゃんの仲じゃないか。そしてそこに元凶の子孫がいるわけだけど。」

 龍神と目が合い、にこりと微笑まれてしまった。最初から気がついていたようだ。

「もしかして1000年前の先祖の無念を晴らそうと思ってた?」

「悪い冗談はやめてください。」

「おいでよ。風が気持ちいいよ。風の子ほどでもないかもだけど。」

 龍神は微笑んだまま手招きする。俺は観念して龍神の隣に腰掛ける。

「君、私の過去見たでしょ?」

あと一話で京都旅行終わります

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