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水沢江利の怪事件簿  作者: 袖利
中学校二年生編
69/75

File9 そうだ、京都に行こう♯6

「え?」

 俺が叫ぶと同時に、男が短剣を取り出し、江利の前に振りかざす。

「わっ!」

 江利はすんでのところで躱した。銀色の髪が何本か宙を舞う。

 感電して倒れていた二人もよろよろと起き上がる。青い瞳、色白の肌、ハイブランドのスーツ、俺は一人の人物を思い出していた。

「シャーロット先生……。」

 聞こえてないのか聞こえないふりをしているのか、男に反応はない。

「び、びっくりした。あとワンテンポ遅かったら死んでたわ。」

「The princess is ordered to be taken alive. Your bad habits are showing again.」

「They wanted to be captured alive, but there was no requirement for them to be in five bodies.」

「ちょっとタオ。あんたお嬢様なんだから英会話教室くらい通ってんでしょ。翻訳しなさいよ。あたしより点数いいんだから。」

「私が通っているのは茶道教室だ。それにリスニングは毎回勘だ。」

 意外や意外。茶道教室に通っているのか。桃原が着物を着て、お茶を立てる姿を全く想像出来ない。

「翔瑠君は?」

「全然。ザしか聞こえなかった。」

「困ったわ。あたしだってスワヒリ語(ハクナマタタ)と南部弁しか分からないのに。」

 桃原は何か思い出したという顔をした。

「こいつら、すけさんが言っていたイギリスの諜報員だ。」

「諜報員?」

「ほら、イギリスのスパイ映画でよく見るだろう。」

 俺と江利は顔を見合せて首を傾げる。そもそも銃撃戦が苦手だから銃が出てきそうな映画は見れない。スパイ映画なんて血飛沫のオンパレードだ。

「MI6のことだ!なんでわかんないんだ。」

 桃原は敵を目の前に悠長にも組織の概要を説明してきたが、興味もないしさっぱりだった。

「それで、テロ組織の監視係がなんでテロリスト紛いのことをしてるのよ。」

 江利はしっかり聞いていたらしい。

「怪異対策課なる組織が非公式で存在しているらしくてな、そいつらが他国の怪奇現象に首を突っ込んできては、元凶を封印して回ってる余計なお世話な組織だ。MI6の中では変わり者の集団として爪弾きにされているくせに。」

 研究室も他所のこと言えないと思うが。

「こいつらはその一員ってこと?」

「たぶんな。たった三人だが、潰しておくにこしたことはない。」

 桃原は再び雷を落とすべく、でんでん太鼓を掲げる。

「オーバーツーリズムにも限度というものがあります。凛君を傷つけた罰を受けてもらわないと。」

 時雨と人間に戻った凛がいつの間にか隣にいた。驚いたことに火傷を負っていた凛の体には傷一つなかった。服も着ている。龍は回復力も服の再生も自力でできるのだろうか。

「What shall we do? Even if they're just kids, five psychics against the three of us is a bad deal.」

「All right, the main course will be served shortly.」

 スーツの男は不敵に笑う。すると時雨と凛はハッと振り返る。

「龍神様!!」

「お前ら、龍神様に何したんや?!」

「What's?」

 お調子者っぽい男はニヤニヤとしている。

「こんな奴らに構っていられへん!時雨!龍神様のところに行くで!……ッ!」

 凛は顔を顰める。

「駄目だよ凛くん!まだ傷治ってない!」

「かまへん!龍神様のためならこんな傷!」

 すると横にいた江利の頭のてっぺんにあるアホ毛がピンと伸びた。

「翔瑠君、あたしいいこと思いついたんだけど。」

 また始まった、と俺はため息をつく。

「一応聞いてみる。」

「あたし達だけで龍神を助ければいいんじゃない?そうすれば龍神に恩も売れて、そのお礼として雨宮さんのご両親も解放されて、あたし達は明日は京都観光に全てを費やせる。ウィンウィンってやつよ!」

 京都観光はまだ諦めていないらしい。

「そんな上手くいくか?しかもさっきモブにやられそうになってたじゃん。」

「違うわよ!あいつは組織の中でもNo.2なのよ。だからこれ以降の敵はきっと弱いわ。ちょっとタオ、あの似非マフィアと雨宮さん達を引き付けておいて。」

「えー、私も行きたい!」

「あんたにしか頼めないの。お願い。」

 桃原は江利渾身のお願いにほんのり頬を赤らめ、

「そんなに言うならしょうがないなぁ!」

と、快く承諾し、気を引くために再び雷鳴を呼び寄せた。チョロすぎる。

「チョロすぎて心配になってくるわ。まあよし、翔瑠君、行くよ!」

「はいはい。」

 俺は今度こそ超大型犬に変身し、江利は颯爽と俺の背中に乗る。タオのお陰で気が付かれていない。

「そういえば、龍神がいる場所ってどっち?」

「知らないわ。」

「え?」

 まさか無策どころか場所さえ分からないとは思わなかった。

「ちょっと待ってね、今気配を感じ取っているから。うーん、たぶん北ね、北に進もう。」

 先行きに不安を感じながらも、俺は取り敢えず北に進んだ。

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