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水沢江利の怪事件簿  作者: 袖利
中学校一年生編
2/63

始まりの始まり#2

 この頃あたしは『シルバーデビル』などと変な渾名を付けられていた。何故本人が知っているのかというと、一部の男子生徒があたしの顔を見てひそひそと話している声が聞こえたからだ。噂をするなら本人の知らないところでしてほしい。

 幼い頃から摩訶不思議な力を扱えるあたしは、その影響からか前髪の一部分が銀色ーと言い張っているが白髪ーになっている。それに起因して妙な呼び名を付けられたのだと思う。あたしだってこの中途半端な白髪が好きではない。

 加えて女のわりに腕っぷしだけはたつあたしは男子に喧嘩を売られた時に返り討ちにしていたり、自己紹介でかましたりと根も葉もない噂の格好の餌食だった。

 ならば放っておけばいいだけの話なのだが、喧嘩は倍の値段で買えと教育されているあたしには無理な話だ。

 おまけにここの地域の中学校や高校は他の地域と比べて荒れているらしく、夜中に1人出歩けば他校の生徒に絡まれるという田舎民にはびっくりな治安の悪さ。シルバーデビルなんてものも仕方がないかもしれない。あたしをその名で呼んだ奴らは例外なくぶちのめしているが。

 それでも尖っている思春期なあたしから勝手に人が離れてくれたのはありがたかった。孤独に平和に1ヶ月が経ったある日、部活にも参加せず、下校するため校舎から出てすぐ1人の男子生徒に引き止められた。

「水沢江利。」

 フルネームで呼ばれたときは大抵悪いことが起こる。流石に無視をするのは忍びないと思ってきていたあたしは、

「何?」

と冷たい声で返事をする。声をかけてきたのは同じクラスの男子生徒だ。学ランのボタンを開けて、少し着崩しているそいつは感情の篭ってなさそうな大きな暗めの赤色の瞳でこちらを見つめていた。くせっ毛の黒髪にも少し赤毛が混じっている。なかなか整った顔をしているのではないだろうか。そしてあたしはこの学校に来て初めてまともに人の顔を見た気がする。名前を覚えることが苦手なあたしは、前に渡されたクラス名簿を必死で思い出す。

 時やら時空やらを飛び越えそうな名前だったのでそれで覚えたのだった。だがいまいちしっくりこない。そして何の用だろうか。今日のあたしは原因不明の偏頭痛がして具合が悪いところなのだが。

「3年の佐藤先輩。」

「……誰それ?」

 本当に知らない人の名前が出てきた。1クラスも覚えられていないのに、他の学年なんてもっと覚えられるわけが無いだろう。

「前に呼び出されていただろう。」

 色々な人から最近呼び出されているのでまったく覚えてない。

「気をつけたほうがいい。」

「はぁ?」

 男子生徒はそれだけ残してとっとと帰ってしまった。自分も大概変だと思っていたが、あれは更に変な奴だ。その警告の意味が分かるのはすぐ後のことだった。

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