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水沢江利の怪事件簿  作者: 袖利
中学校一年生編
19/75

File3 孤独なセカイ#2

『……沢さん、水……さん。』

 あたしの安眠を妨げるのは誰だ。

『水沢さん!』

「うるさいわね!まだ寝てんでしょうが!」

 ガバッと起き上がる。ジャリっという音がした。

「ここはどこ?」

 周りを見回すと学校の校庭だった。砂が髪に付くという文句は一先ず置いておこう。そもそもあたしは家のベッドで寝ていたはずだ。それがなんで学校にいるのだろう。

『やっっと起きましたね!何度も声を掛けたんですよ!』

 白子男の声がどこからか聞こえる。白子の2人の姿が見えないことになんとなく嫌な予感がする。

「また怪奇現象?」

『えぇ、ですが今回はいつもと特殊でして。……要注意団体が直接動き始めました。』

「どういうこと?てか車の音も電車の音も聞こえないんだけれど。」

 電車はもう既に終電が走り終わったから聞こえないのかもしれないが、車が1台も通らないのはおかしい。

 毎晩必ずといっていいほど暴走族がバイクのエンジンを爆音で鳴らしながら走り回るのが恒例となっているのにその音も聞こえない。

「ねぇ、一応聞いておくんだけど、なんであんた達音声だけなの。」

『江利さん達は、今、私達とは違う空間に存在しています。』

「なんだって?」

『江利さん達が地球から消えたんです。そちらの、仮に第二の地球としましょう、何者かによって江利さん達は転移させられたようです。今は以前お渡しした御守り兼小型通信機で音声を送っていますが、これもいつまで持つか。』

 御守りで音声を送っている、だと。あたしはまた一応聞いてみる。

「ちょ、ちょっと待って。さっきから達って、あの、もしや、鬼塚?」

『はい、鬼塚翔瑠も第二の地球にいます。近くにいませんか?』

 少し辺りを見渡すと鬼塚が倒れていた。なんてこったい。このタイミングでこんなことに巻き込まれるとは、とことん不幸体質だ。鬼塚が御守りをきっちり身につけるタイプで良かった。

「うん、いる。なんで?」

『わかりません。彼生きてます?』

 滅多なことを言うんじゃない。あたしは恐る恐る鬼塚の顔を覗く。何時ぞやの車内であたしに寄りかかっていたときと同じような顔をしている。

「いい夢見てそうな顔しているわ。」

『起こしてください。』

「このままにしてあたし達でなんとか出来るんじゃない?一般人にはハードモードよ。」

 最近塩対応をされて気まずいとは口が裂けても言えない。

『そんなこと言ってないで鬼塚翔瑠も鍵なんです!起こしてください!』

 あたしはただ指示に従うしかないため、罪悪感を抱えながら起こすことにする。体をゆっさゆっさするとビクッと体を震わせる。

「母さん?また、何かした?」

 なんて悲しそうな声を出すんだ。

「あたしよ!み・ず・さ・わ!!」

「水沢?なんて都合のいい夢……」

「夢じゃないわよ!現実!起きろー!!」

 再び体を揺らすと今度ははっきりと目を覚ました。

「な、なんだ?!俺は確か家で……」

「あたし達、第2の地球にレイシフトしたみたいよ。」

「は?」

『もう機密事項がどうとか言っていられません!どうも、あの時貴方が撒いた2人組です。』

「あー、すんません。」

「そんな意地悪言わないの。」

 白子から大事なところはぼやかして今の現状を聞いた鬼塚は、それはもう百面相で見ていて飽きなかった。

「で、あたし達はどうすればいいの?」

『1時間、待ってください。研究室は全力をあげてあなた方の帰還に尽力しています。』

「じゃああたし達は待ってるしかないの?」

『申し訳ございません。ですが、お2人は必ず地球に送り届けます。団体の好きにはさせません。』

「そいつらの目的って?」

『分かりません。が、あのマンションの1件であなた方に目をつけたのかと。もしかしたらその第二の地球が、地球乗っ取り計画の最終段階なのかもしれません。でも恐らくまだ試作の段階。帰る道は閉ざされてないはずです、たぶん。』

 そのたぶんが信用ならない。

『申し訳ございません。研究室の妖力を解析にすべて使うため、通信は一旦断ち切ります。心細いかもしれませんが、あと1時間、待っていてください。では、健闘をお祈りいたします。』

 有無を言わさずプツンと音声が切れた。

「あの白子やっぱ怪しいよね。」

「だから関わるなと。」

「そんなこと言ったってさ。」

 久しぶりに会話をした鬼塚の表情は辺りが暗くて分からない。

「ちょっと夜の学校でも散策しない?」

 不安であろう鬼塚の気を紛らわすべく腕を引っ張って、学校の中に入る。

 彼女さん、今は緊急事態なんだ。分かってくれ。学校の扉は開きっぱなしで簡単に侵入することが出来た。

「中は変わっていないのね。」

 2人でどこともなく彷徨う。夜の学校はどの肝試しよりも迫力があってこんな時なのに少し楽しい。

「七不思議とかってあるの?」

「聞いたことはない。」

「理科実験室は定番よね。」

「……。」

 返事がなくなってしまった。

「いやー、でも不幸体質もここまでくると今後の人生いい事しかないんじゃない?」

「……。」

 どんなに話しても返事がない。あたしもここまで反応されないともう何も言うことはなくなるぞ。次の話題を捻り出そうとしていると、鬼塚は立ち止まった。

「俺は、帰らなくていい。」

 とんでもないことを言い出した。

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