不穏に動く人と、時間。
土曜日に投稿を忘れてました、無能です
秋夜が教室へ戻ると、麻生と信志が小馬鹿にするような笑みを浮かべながら彼の元へと歩み寄ってきた。
(また面倒なことになるなぁ)
そんな嫌な予感を胸に、秋夜は素知らぬ顔で彼らを横切ろうとする。
「良かったじゃん、珍しい無属性だけの適性だなんてさ。
まぁ、オレらは無属性以外にも他属性の適性があるんだけど」
しかし、それを許すハズがなく信志達は皮肉を添えながら秋夜の無属性であることを祝福する。
若干、秋夜は苛立ちを抱くが只管に堪えろと己に念じる。
だが、必死に火消しを行う秋夜に更に火を投げるのが彼らであった。
「ホンットに良かったな? シンジも今日は珍しくお前の事を優しくしてやろうぜって言ってくれてんだわ」
「あぁ、ていうかそのネックレスってもしかしてさっき言ってたコネってやつ?
ハハ、こんなショボイの貰うために作ったコネなんてしょぼ───────」
「アンタ達、自分がダサいって思わないわけ?」
だが、その二人に割って入る一人の少女。
甘栗色の髪の毛を伸ばしている、冬華のような幼く可愛らしい顔立ちではなく少し大人びた、美しく整った顔立ちの少女はその美貌を怒りを浮かべ、視線には不愉快な感情が籠っていた。
その琥珀色の瞳は、二人に非難の視線を向けていたのだった。
「な、なんだよ!!
オレと麻生はコイツに家族を死に追いやられたんだ、それにオレらの事もそうだけどコイツはお前達の事を見下してるんだぜ!?
そうだって言うのに庇うって言うのかよ!!」
「だって、この子は昨日に言ってた事をしてきたって事でしょ?
それなら、私達は何も言い返せない……それどころか、今から真似したっていいくらいじゃない!!
それに、アンタたちの親御さんが亡くなったのは気の毒だけど……けど、女の子一人を助ける為に大人を敵に回すなんてすっごくカッコイイじゃん!!」
動揺しながら、精一杯の言い返しをする信志に少女は勝気な姿勢で答える。
その少女の傍らに立っている、温和な顔立ちの少年も、こくりと頷くのだった。
「あぁ……俺ならチビってしまうかもね。
なぁ御門君、キミは家族を奪われたから俺もあんまりどうこう言いたく無いけど、風魔君も大事な人を奪われそうになったんだ。
ここはさ、先にキミから殴ったっていうのもあるし……状況が悪かったってことで一旦手打ちでもいいんじゃないか?
後は成績争いとかでさ、頑張って抜かして悔しがらせばいいじゃないか」
「……結城と蝶姫は家族を奪われた事がねぇからそんなこと、言えんだわ」
三人の間に、麻生が静かな怒りを滾らせながら割って入る。
「お前らは家族を殺した奴が目の前にいても、『これから仲良くしようね』って言えんのか?
血がベッタリ付いた手を差し出されて、握り返すことが出来んのかよ!?」
「オレはそう言うつもりだよ、鬼でなければね。
……まぁ、信じなくてもいいけどね。キミ達の気持ちは真に分かるものじゃないし」
結城と言われた、黒髪の少年は微笑みながら麻生の怒りが混ざった問いに答える。
その中に嘘偽りがない、本心からの返答と麻生に伝わったのか彼はバツの悪そうに舌打ちをし、
「……偽善者がよ、キメェんだわ。
シンジ、コイツらと関わるのやめよーぜ。
くだらねぇや」
そう言い、信志の腕を引っ張り教室の隅へと移動するのだった。
その二人を見届けたあとに、蝶姫と呼ばれた少女は秋夜の方へ振り向く。
そして、太陽のように明るい笑顔を見せるのだった。
「御門も麻生も本当は優しいんだけど…キミには優しく出来ないみたい……あんまり力になれなくて、ホンットにごめん!!」
「いや、いいよ……元はと言えば悪いのは俺だし。
えっと……夏目さんだっけ?」
春の穏やかさを思わせるような冬華の笑みとは違う、夏のように熱を感じる明るい笑みに緊張してか、少し緊張した様子で秋夜が訊ねる。
明るい笑顔のまま、少女は答えた。
「そーそー!!
私は夏目蝶姫で、こっちの男子は結城康秀って言うの。
よろしくね、シュウ君☆」
「シュウ君……って俺の事?」
「……蝶姫はよく、人にあだ名を付けるんだ。
距離感が近かったらいつでも言ってくれたらいいさ、その時は俺が注意するから」
戸惑う秋夜に、康秀が答えた。
蝶姫に呆れながらも、“熱”を帯びた笑みを秋夜は不思議に思いながらも受け入れるのだった。
「秋夜、休みの間にどこに行ってたんだい?」
それと同時に、充が秋夜の元へ歩み寄り訊ねた。
秋夜は、松永に貰った首飾りを充へと見せたのだった。
はて、と不思議そうに首を傾ける充に、秋夜は説明する。
「これは兄が、俺の為に残してくれていた呪装具で僕に火、水、風、地の四属性を与えてくれる効果があるみたいだよ」
「……でも、それは無属性の呪術になんの意味も無いんじゃないかい?」
「あぁ、本来ならね。でも俺はついさっきに呪術を一つ得たんだ。
それが、模倣って言ってね。相手の呪術を真似出来る」
秋夜の言葉に、充は大体を察し少し呆れた笑みを浮かべた。
「なるほどね。つまり、キミはこれで四属性全ての呪術を模倣できるわけだ……キミのお兄さんはとんだ弟思いだね」
「とても有難いよ。
でも、そういう充も呪装具は何個か持ってるんじゃないのか?」
「一応ね。
僕はどうやら……支援がメインみたいでね。
それでは直ぐに死んでしまうからって、煌月の人達が色々と持たせてくれたんだ」
「煌月の人が……ね」
秋夜は、ふと疑問が芽生えた。
本当に煌月充は、犯罪者の子供なのかと。
犯罪者の子という扱いでは無いのは明白であった。
明らかに貴重に、死なすことなく丁重な扱いを受けていると秋夜は思っていた。
(……油断させるため?
首位になれなければと息巻いている俺の隙をついて蹴落とそうとしているのか?
───────いいや、そんなハズはない。
それは、彼の微笑みが証明してくれてたじゃないか!!)
抱いていた疑念が、昨日の微笑みに掻き消される。
自身が恋い焦がれた一人の少女、冬華と重なる微笑み。
その優しい笑みは嘘偽りで作れるものでないと、秋夜は無自覚ながらに理解していた。
故に、彼は充を信じることにするのだった。
だが、それでも気になりはするのが彼の余計な探究心である。
「なぁ、充」
「なんだい?」
少し緊張した様子の秋夜を見て、充は不思議そうに首を傾げた。
そして、彼の言葉を待つのであった。
少し間が空いて数秒後、意を決し。
「……君の親はいった───────ッ!?!?」
秋夜が口を開いた直後、強烈な殺意を感じ外へと振り返る。
身の毛がよだち、思わず言葉を止めてしまうほどのまるで獣に狙われたかのような殺意。
しかし、その殺意を探るべく窓の先を見たが人影はない。
「秋夜、あまり僕の事は調べようとしない方がいい」
だが、充の言葉で秋夜はその殺意の正体が分かった。
それは充から発せられたものであると。
否、充の隠している呪装具の何かからだと。
その殺意に気圧され、秋夜はこくりと頷く。
「ごめんね、秋夜。
……僕の本名を口にした者、または僕を詮索しようとする者は例外なく殺されている。
どれか分からない、持たされている呪装具のどれかが、そんな効果を持っているんだと思う」
「……いや、こっちこそごめん充。
そもそも君にだって、知られたくのない事情くらいはあるよな。
なるべく気にしないようにするよ。
───────ところで、冬華って煌月家ではどう言った扱いだったんだ?」
言って、秋夜は直ぐに話を切り替える。
「ちゃんと、丁重な扱われ方だったよ。
まぁ……何しろ彼女になにかあれば君はまた何かやらかすと思われてたからね」
「当たり前さ、そりゃあ……風魔の屋敷を爆破くらいはしてただろうね」
不敵な笑みを浮かべた、堂々とした自慢げ有る秋夜の答えに、充は呆れた笑みを見せたのだった───────。
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───────もしもし。
予定通り、あと5分後に仕掛ける。
対象は今、データで送った。
これも、平和の為だから仕方あるまい。
子供の命が喪われるのも───────
以降気をつけます……




