表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
戦友スパイ  作者: 夕凛
太陽は堕ち、地は影る。
3/7

偵察開始

 ────今回の任務は、極めて重要度の高いものとなる。よって、他のスパイスチームと合同で偵察を行うことにする──────


「ボスからメンバー全員への通達だ。全員聞いたな?」


 早朝より不在のボスに代わってメンバーをまとめるのは、スパイチーム『朧』メンバーのイェーラ。

 コードネーム「明朝(みょうちょう)」。

 チーム最年長で長身の女性。

 『朧』メンバーからは、(あね)さんと呼ばれている。

 

 この姐さんを怒らせると、周囲の空気はシーンと静かになる。文字通り、嵐の前の静けさと言うやつだ。そして姐さんの怒りの発端となったもの以外全員、とばっちりをくらわないように、その場からそそくさと逃げる。それはボスやレーゲンですら例外ではなかった。


「返事ぐらいしないか」


「ハイッッ!」


 全員の声が重なった。


 『朧』メンバー全員で臨むという異例の自体のため、極力慎重に事を運ぶ。

 

 任務開始前の偵察。

 

 帝国のスパイへの奇襲は、本当に「(かすみ)」メンバーの仕業なのか。そうでなくとも、それはそれで

「霞」以外にも強力なスパイチームがあるという事で問題になる。

 

 よって偵察内容は、あくまで任務を行う立地や時間帯による人混み具合の観察といったものだ。


 追記:各々の班に分かれて行動を開始するように。


 追跡班の偵察。


 追跡班は、ヘイリーとアンネの二人。

 二人は、任務当日に合同で追跡を行う別のスパイチームと一緒に偵察へあたっていた。


「今回はよろしく。敵も相当な手練(てだれ)って聞いてるから、見失わないように」


 アンネがそう釘を指す。

 彼女は、先日酒場でジンのカクテルを頼んでいたショートヘアの女性だ。

 気が強く、物怖じしない性格で、暗殺だろうと潜入だろうと難なくこなす。

 元軍人で、ボスによって軍から引き抜かれた。

 好きな食べ物はチーズ料理。

 槍を扱うのが得意だが、目立つ武器は使えないため、使用することは無い。


「こちらこそ、よろしくお願いします。あの『朧』のチームと合同で任務に着けることを光栄に思います。足を引っ張るつもりはないので、何卒、こき使って下さい」


「『足を引っ張るつもりはないので』って言った?もとよりそのつもりなんだけど。引っ張られてはこっちが困る」


 アンネがとても威圧的に応答した。

 それくらいしなければ、ならなかったのだ。

 アンネたち追跡班と行動をともにするスパイチーム「(きびす)」。

 彼らは間違いなく、『朧』と合同で任務にあつるというこで、スパイとしてあるまじき安心感を覚えてしまったのだ。

 それを正すべく、アンネはあえて強く当たっていた。


「いいか、よく聞け。今回の相手はあの『霞』の可能性が極めて高い。そんな気の抜けた生温いことを行っているようでは、(おとり)以前に我々の盾にすらならないよ」


「踵」のメンバーは、とても落ち込んでいた。

 それもその筈、帝国のスパイである誰しもが憧れる存在に、思い切り叱責されたのだから。

 彼らの気持ちにも無理はない。

 そんな彼らを横目に、アンネとヘイリーはさっさと次の偵察場所へと移動していった。

 追跡班は、追い込みルートの確認をした後、そのルート周辺の一日の人通りを観察することを偵察内容としていた。

 三階建のビルの上から丸一日かけて、人通りを観察する。


「この辺りは、朝の六時半から九時半頃まで、昼の十時半頃から二時頃まで、夕方の三時から午後の九時頃までの間が、人通りが多いですね」


 ヘンリーがアンネに観察結果を報告する。


「だとすると、決行は真夜中になりそうだな。よし、『踵』の奴らにも伝えておいてくれる?」


「分かりました」


 追跡班、打チ合ワセ完了。

 各々、訓練ニ従事ス。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ