私とザーク
私の中で、魅力的な男性から、ストーカー疑惑の危ない奴に変わったザークは、私の肩から相変わらず離れない。
さっきまでは、心臓を返してもらう前に話を聞こう!
なんて思っていたけど、さっきのよくわからないザークの言葉から、
なんとかして心臓を取り戻して逃げよう!
にとりあえず考えが変わった。
でも、未だに私の肩に頭を乗せて泣いているらしい彼をどうしようかと思う。
心臓をどう取り戻したら良いのかも、魔術を使えるザークしか分からないし。
黙ったまま今の状況を、どうしようか考えていると、ザークが突然口を開き出した。
「アルテナ、君のその紫色の瞳は、魔女の証なんだ」
私は、ザークの言った事が理解できなかった。
「え?どういうことですか?
確かに私の瞳は珍しいと思うけど、魔女だなんて……」
ザークは、私の肩から顔を上げると、私の顔を見つめてくる。
「魔術師や魔女の見た目は、普通の人達と変わらない。ただ瞳の色だけ違う。
内にあるエネルギーが、眼球の中の水晶体の色を変えるなどと言われたりしているが、詳しくはわからない。
ただ、代々魔術師や魔女は、紫色の瞳だ。」
代々、魔術師や魔女は紫色の瞳?
私は、魔女って事?
でも、そんな事知らなかった。
私を連れてきたあの人は、その事を知っていたの?
頭の中が疑問でグルグルし始める。
ザークは、淡々と話し続ける。
「魔術師と魔女は、常に男女のペアで生まれる。
そして、お互いは唯一無二の存在だ。
離れた土地に居ても、引き寄せられるようにお互いを知ることが出来る。
アルテナ、君の場合は、付き添い人の魔女が連れてくる話になっていたと聞いている。」
確かに私は違う土地から来た。
母親ではないらしい女の人に連れられていたとは聞いているけど、その人が魔女で付き添い人?
「……なんで私はこの街に連れてこられたの?
ザークさんの話なら、勝手に出会うはずなんじゃ……」
「今は、昔と違って魔術師も魔女も生きにくい世界だ。もちろん、自然に出会う事は出来る。
ただ、万が一他国に匿われたら、生きて会うことは叶わないだろう……」
ザークの顔が歪む。
もしかすると、他国に囚われた同胞のその後を知っているのかもしれない。
「だから、早くペアを会わす必要があった。」
ザークが、私の顔にその端正な顔をぐいっと近づける。
吐息が頬にかかって、彼の熱を感じる。私の体温が上がる。
「アルテナ。
君は、俺だけのペアなんだ。」
ザークの言葉が、頭の中に反響する。
私がザークのペア。
見つめるザークの熱っぽい視線が、少し揺れてる瞳が、私に必死に訴えかけてくる。
まるで縋るような視線。
なんだろう。
心臓がないはずなのに、感情が抜け落ちているはずなのに、胸が苦しい気がする。
ザークは、その綺麗な"青い瞳"で私に訴えかける。
……
……
……
……ん?
……青い瞳??
「ザークさん。
あなたは、魔術師じゃないですよね?」