情緒不安定…
突然の彼の変化にちょっと戸惑う。
さっきまで、泣いていなかっただろうか。
熱っぽい吐息が私の首にかかるたびに、ぞわぞわが止まらない。
ちゅ。
少し首が濡れた感覚と柔らかい感触。
私の身体がビクッと揺れる。
ザークの頭が少し動いてる。
私の首に唇をつけている?
「あの…ザ、ザークさん?」
少し焦りながら、ザークに声をかけるも、隣からは艶っぽい吐息しか聞こえない。
どうも私の声が聞こえていないようだ。
ちゅ。ちゅ。
ザークの首へのキスが止まらない。
こんなことに慣れてない私は、彼から与えられる刺激になんだか背中がゾワゾワしてきた。
なんだかむず痒いような変な感じ。
少し身体が熱を持っている気がする…。
これは、まずい気がする。
目の前にいるザークの肩を両手で掴むと、自分の精一杯の力でぐいっと彼を引き離す。
「ザ、ザークさん!」
私から引き離されたザークは、目元を赤くしながらものすごい色気のある顔で、私を見てきた。
潤んだ瞳は、私をボーッと見ながらも、ハァ…と艶っぽい吐息が止まらない。
「ザークさん!
えっと……お話しないと!私聞きたいことがたくさんあるんですよ!」
少し早口になりながらも、ザークに私の意図を伝えないとと焦る。
まだ、少しとろんとしてるザークを、なんとかいつもの状態に戻さないと!
話ができない!
私との距離が出来たからか、少しずつザークの艶っぽさがなくなってきた。
そして、いつもの眉間に皺が入った表情に戻っていく。
そんな様子を見ながら、ほっとしつつ、私は単刀直入に聞いてみることにした。
「なんで、私の心臓が欲しかったんですか…?」
ずっと気になっていた。
考えてもわからない。
ザークはなんの意図があって私の心臓が欲しかったのか。
「前に耐えられないって言っていたけど…
それって、どういうことですか…?」
とても苦しそうにしていた。
もうこれしかないような、心臓をもらうしかないような、そんな感じさえ受ける姿だった。
私の声は聞こえているはずだけれど、目の前にいるザークは、目線を逸らすこともなく、じっと私を見つめ返している。
眉間の皺は深くなるばかり。
あぁ……やっぱり答えてくれることはないのかもしれない。
諦めかけてきたその時、ザークが口を開いた。
「アルテナは、俺のものだから」
ん???
「アルテナと俺は、生まれた時から決まっているペアなんだ」
は???
「俺は一目で分かったのに、アルテナはなんで分かってくれないんだ!!」
最後の方は、声が震え始めたザークは、言い切るや否やまたしても私の肩に顔を埋めてしまった。
鼻を啜る音が聞こえる。
ザークが泣いているのを横目に、私はより訳が分からなくなった。
とりあえず、何を言ってるんだ?
私はザークのもの?
生まれた時から決まってる?
ペア?
一目見たらわかる?
世に言うストーカーみたいなものだろうか。
ふと、そう考えると、肩に顔を擦り付けている美男子が、とてつもなく危ない人に感じる。