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ザークという男


街で1番有名なレストラン。

夜は、ちょっと賑やかな酒場にもなる場所。


ここの料理長のザークは、20歳と若いがとても美味しい料理を作ると評判だ。


味付けが癖になる物ばかりで、リピーターがとても多い。

ライバル店もなんとかその味を盗もうとするが、なかなかうまくいかない。

とても難しい配分らしい。


そんな料理の才に長けたザークは、見た目に関してもとても魅力的だった。

キリっとした眉に少し釣り上がった青い目、高い鼻に薄い唇、少しシャープな顎。

目にかかりそうな、少し長めの藍色の髪から覗く、その顔には人を惹きつける美しさがある。

背はスラッと高く、レストランの仕事は重労働なのか無駄なものついていないがっしりとした体つき。

男性的な強さと色気が漂う彼は、独身でもある為、年頃の女性から大人気だった。


また、あまりおしゃべりが好きではない彼は、ちょっとミステリアスな雰囲気も相俟って、【スパイスの魔術師】なんて言われてたりする。



聞いた時は、ちょっとそのセンスは安易だなぁーと思っていたけど、今思うとあながち悪く無い。



だって、



ザークは、魔術師だったから。







なぜザークが私の心臓を取ったのか、未だに理由がわからない。


取られる際に、

「もう耐えられない」

と、言われたがそれもよくわからない。


心臓が私の元からいなくなり、死んでしまうのかとも思ったけれど、私はまだ生きている。

どうも、心臓が私の体に無くても問題はないみたいだ。





あれから、少し経ったけれど、今まで通りの生活を送っている。


変わった事といえば、感情を感じなくなった事くらいだ。



楽しい気持ち。

悲しい気持ち。

嬉しい気持ち。

怖い気持ち。



全てを感じない。


一応、前までの感覚を思い出して、この時はこう感じるだろうと、予想は出来るけれど、頭で考えて反応するような状態だ。


心が動いて反応するという事が、あれ以来無くなってしまった。



ザークは、一体何をしたいのだろう。

私から感情をとる事で、何か彼に得があるのだろうか。

それとも、私の心臓に価値があるの?



不思議で仕方がない。

普通なら不安や悲しさでいっぱいいっぱいだろうが、心臓のない私は、その感情を味わう事はない。

ある意味そのおかげで、冷静でいられるのかもしれない。



ザークに心臓を取られてから、仕事が終わると、毎日彼のレストランへ足を運ぶようになった。

レストランへ行ったからといって、とくにザークと話せたりするわけではない。

でも、何かタイミングがあって、あわよくば私の心臓を取り返せるかもしれない。

そんな微かな希望を持って、毎日通うことにした。



そんな状況ももうすぐ二週間経とうとしている…



それにしても、不思議だ。

今までザークと一切接点がなかった。

友人とザークのレストランへ食べに行く事はあったけれど、月に2〜3回くらいだ。


あれから毎日通ってはいるものの、今だに会話すら無い。

あの心臓を取られた日、なぜザークと話せたのか。一緒にいたこと自体も不思議だ。



考えても仕方ないか。



私は今日も、店の角のテーブルで、お気に入りのスパイスチキンとワインを味わう。

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