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第三投 放課後の梢

 面倒くさがり屋の土方 梢が何故、ウィンドウボール部を作るなどという面倒なことを言い出したのか。

 それは更に前日の夕方に(さかのぼ)る。


〜〜〜


 梢は、ネットのラジオを聞くのが好きだ。

 ラジオは、テレビと違って画面に顔を向ける必要がない。

 寝ていようが、勉強していようが、関係ない。


 今も梢は、自室で布団に入ってぼーっとしながらラジオを聞いている。

 御飯前のこの時間。お気に入りのパーソナリティの枠になる。

 少し、体を起こして聴きに入る。


 番組も(なか)ばになり、お便りコーナーのタイトルコールが始まった。


風見鶏(かざみどり)のお便りコーナー。


 はい、今日もこのコーナーが始まりました。

 このコーナーでは、リスナーからの紙の手紙をお読みします。

 ちなみにに、皆様は既にご承知かと思いますが、ここではメールやメッセージは一切なし。

 手紙という媒体を使うことで、心のこもったメッセージを今日も皆さんにお届けしてまいります」


 この時代、ほとんどの番組ではお便り(紙の手紙)もファクシミリも受け付けていない。

 仕分けに手間もかかるし、ファクシミリに至っては設備も必要になるのだが、経費削減やら人件費削減やらでそういうのは()めてしまったのだ。


 しかし、この番組ではパーソナリティの人も話していたとおり、お便り(紙の手紙)しか受け付けていない。

 この番組は、ラジオが全盛だった頃の手法を真似ることで、逆に目新しさにつながるのではないかという観点から企画されたからである。

 そして、スタッフの目論見通り、他の番組よりも少しだけ聴取率(数字)を取ることに成功していた。


「では早速、一枚目のお手紙を読み上げていきましょう。

 横山市のよっちゃんさんからのお便りです。


 『先日、私は中学生になったのですが、今日、学校の先生から、全員部活に入るように言われました。

  でも、入りたかった弓道部は二年前に廃部。

  私は先生に、

   ‘弓道部が無くなったので、帰宅部でいいですか?’

  と質問したのですが、先生から、

   ‘全員入るのが学校の方針なので、例外は認めません’

  と言われました。

  学校の都合で廃部にしておいて、例外は認めませんって、おかしいと思いませんか?』


 と書いてあります」


 梢も、今年中学に入ったばかりである。

 ひょっとしたら、部活をしないで済む上手(うま)い言い訳が聞けるのではないかと思ったのか、体をしっかり起こしてスピーカーのある方に注目する。

 別に、そこに画面があるわけでもないのだが、その方がよく聞こえるので、しっかり聞きたい時はそうするようである。


「あら、まぁ。

 今どきのお悩みですね。


 私が学校に通っていた頃は、まだ学校の働き方改革が行われる前だったので、自分でやりたい部活を作っちゃいましたが、今は先生の確保が出来ないそうですからね。

 でも、ダメ元で先生に聞いてまわったり、署名を集めて頑張ってみてはどうでしょうか。

 もし、作れなかったとしても、大人になった時、自分は学生の頃、こんな事をやっていたんだよって自慢できるかもしれませんよ。


 では、音楽を行きましょうか。

 よっちゃんさんの弓道部が出来ることを祈って、このナンバーをお届けしましょう。

 テクノドロップで、『やってみなくちゃ分からない』」


 ラジオから音楽が流れ始めた。


 梢は、何か考えているようだ。


「部活を作る・・・。

 ちょっとかっこいいかも」


 彼女にしては珍しく、独り言をつぶやいた。

 どうやら梢は、好きなパーソナリティが学生の頃に部活を作ったと聞いて感化されたようである。

 ただし、梢にはやりたい事があるわけでもない。

 曲が終わる頃には、部活を作りたいという思いも消えていた。


 しかし、翌日、ホームルームが終わった後、部活を作る相談をしている微風と夏菜を見て、自分もこれに乗っかって部活が作れたら、ちょっとかっこいいかもと思ってしまったのだ。

 これが、梢がウィンドウボール部の創部に関わることになったきっかけであった。


 おっさんが学生の頃は、勉強のお供によくFMラジオを聞いていたものです。(^^;)

 今の学生は、どうなのでしょうか。。。


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