初まりの荒野(仮)第1部
2050年7月 (アメリカのどこか田舎)...
空が朱色く染まる夕暮れ時、所々瓦礫の残る荒野、3人のテンガロンハットをかぶった男がジャンクで作られた牢付きの馬車を駆り獣道を進んでいる。1人は手綱を手にし無用心な事に最終戦争後に作られたと思しき不格好なリボルバーピストルをベルトに直接差し込み、残る2人もこれまた不格好なリボルバー式ライフルを携行している。
「おい、大将!」
突然後ろから声をかけられ馬車を止めるとともに3人がバラバラに振り向く。ライフルを持った男の1人がつけた妙な眼帯が夕陽を反射しぎらつく。後ろから呼び掛けられるのが予想外だったのか完全に動揺し、緊張した3つの顔が夕陽に照らされる。
「街まで乗せていってくれない?」
これまた質問が予想外だったのか3人は目を見合わせるとヘラヘラ笑い出し手綱を持っている男が答えた。
「それよりも俺になるのはどうだい、嬢ちゃん?」
するとこのくだらない冗談が面白かったのか3人とも笑い出し無防備に銃に手もかけず汚いにやけ面をひっさげて馬車を降りて歩み寄ってきた。
(これだから男ってやつは...)
ある程度馬車から離れたのを確認するとタチアナは口笛を吹いた。途端に道の外れから銃声がし、眼帯の男の後頭部が弾け飛び、たんが詰まったような呻き声を上げながら倒れた。残りの2人は何が起きたかわからず目を見合わせた後片方はライフルを片方は拳銃に手をかけたがその時には既にタチアナも彼女の右腰に下げたナイロン製のホルスターから旧時代のピストルSAAを引き抜き狙いを定めていた。2発の銃声...いや、あまりの速射のため2発が1発に聞こえる系4発の銃声が埃まみれの荒野に響き渡りテンガロンハットの残りの2人は胸を押さえながらほぼ同時に倒れた。