戦え茂木茂孝
データが破損したせいで書いて出しになってしまいました。。。
落ち着いたら何回か修正入れると思います。
八方塞がりだ。俺のせいで今頃AOAは大混乱に陥っていることだろう。
「そんなに気にすることないよ」
藤原はそういって慰めてくるけれど、俺の気持ちは晴れない。ペトリは檻のまえで藤原の姿のままだらけている。とうとう鼻ほじりだした。何故かものすごくイラッとする。
藤原は平然としているから、スライムの形をしていなければこわくないらしい。このまま何もできずにここで朽ち果てるのみなのか……。
そう思ったとき、壁が吹っ飛んだ。何言ってるかわからないと思うけど、見たままのことを言っただけだ。たぶんドゴン、とかでかい音がしたんだろうけど、驚きすぎて一瞬意識が遠のいた。藤原に目をやると、意外にも驚いていなかった。というより、呆れている。舞い上がった砂埃の向こうから聞いたことのある声がした。
「返り血で赤く染まったチャイナドレスを身にまとう屈強な戦士、レナ参上!」
この人たちにはダサい決め台詞を言わなきゃいけないルールでもあるのか。ちょっと恥ずかしいからやめて欲しい。気が抜けちゃったじゃないか。
「ワーレナタスケニキテクレタノネーカッコイー」
「ちょっとみーな何よその棒読みは。それに私が助けに来たのは茂木であってあんたは勝手に捕まっただ
けじゃないの」
「つめたぁい」
ふざけてる場合じゃないだろう。
そう言っている間に、藤原の姿をしたペトリが戻ってきた。
「ぺーッ!?貴様はっ!どうしてここがわかったぺ!?」
それは俺も知りたい。よくドラマである、電話を逆探知するやつでも使ったのか?
「アタシのチョーカーにはいざというときのためにSOS信号を発信できるボタンがあるのよ!詰めが甘かったね!やーい!」
藤原がこどもみたいなからかいかたをしているうちに、顔を真っ赤にしたペトリ(藤原の姿)がおれに襲い掛かってきた。
あわやというところで、転がって避けた。俺がいたところに、何か液状のものを吐き出すペトリ。藤原の姿で口からねばねばとした液体を放出されるのは、何か思うところがあるなあ…。
白く濁った液体は、煙を出しながらコンクリートの床をえぐっていく。おそろしい…。森井さんに投げられまくっておいて良かった。しかし、今はそんな達成感に浸っている場合ではない。途端にレナが発砲する。両手に、女子の手には少し大きく見える拳銃が握られていた。藤原は日本刀を取り出して、いざ斬り込もうと構えていた。
「ぺーぺぺっぺ!ペトリにそんな技は効かないぺ!いくら切っても無駄ぺ!」
確かに、俺もあの時ガスガスと殴っても効かなかった。相変わらず藤原の姿で戦っているが、語尾にぺが付くから間違うことはない。
二人も硫酸のような液体を上手くよけながら攻撃を入れるが、全く効いている気配はない。銃弾も刃も、ぬめりとすり抜けていってしまうのだ。
このままでは埒が明かない。俺はいつ自分のほうに酸が飛んでくるか分からず、部屋の端っこで立ちすくんで
いた。後ろの壁はレナが壊している。ここから逃げることもできる。正直俺がここにいても足手まといなだけじゃないか?
そう思ってポケットに手を入れると、何か固いものがあった。
ストラップだ。仕込み刃の。
そうだ、俺はもう守られるだけの人間じゃない。森井さんに鍛えられて、縄を抜けた時だって、酸を避けた時だって、成果は出ていたんだ。
見えていた。さっきから、藤原とレナがとりわけ勢いよく攻撃したときに、ちらりと覗く赤いガラス玉のようなもの。やってみる価値はある。
「藤原、レナ!二人で合わせて、大きい風を出してくれないか!」
二人は顔を見合わせた。急に何を言っているんだろうという、沈黙の間。
しかしすぐに、
「「わかった!茂木くんが言うなら!」」
なんとも息ぴったりな返事がきた。
「ぺーっぺっぺ!何をしたって無駄ぺ!」
みてろよ目でかスライム野郎!
三人で息を合わせる。ペトリが酸を吐こうと口を膨らませる。
「いけーーー!」
レナが引き金に手をかけた。藤原は刀を振りかぶった。おれはそれと同時に、ちいさなナイフを持って駆け出した。
二人が出した技はペトリに向かって突風を作り出した。赤いガラス玉のようなものがキラリと光る。
ペトリは口に貯めた酸を放出しようとする。
俺はありったけの勇気をかき集めて、赤い球に刃を突きつけた。