大山レナの発見
街のあちこちを探し回ったのに、成果はゼロ。こんなことってあるのかしら。そろそろAOAに戻って、現状を報告しないと。ロビーに集まって会議を始めるけれど、これといった手がかりはないみたい。
ボスと高尾さんはさすがにお手上げのようで、顔をしかめたまま動かない。凪紗はぼけっと突っ立ってるし、この頃茂木くんとなにやらトレーニングをしていたもりりんは心配からか顔色が悪い。
「そういえばみーなは?」
居ない。なんだよどいつもこいつもすぐ消えやがって。
「こうやって一人一人消えていって……最後には……」
「そして誰も居なくなった……とな?」
「ギャア凪紗やめてこわぁい」
そんなやり取りをする私たちに、高尾さんはあきれ顔だ。
「あ、帰ってきたぞ」
森井さんが指をさした先にはみーながいた。丁度ロビーに入ってきていたらしい。三メートルくらい離れたところで、立ち止まった。会話をするには少し遠い。わたしは大きめの声で尋ねる。
「最後にきたんだからなにか見つけたんでしょうね?」
そうじゃなかったらただじゃおかないわよ。よく見るとあいつは手に紙を持っている。みーなはそれを折って紙飛行機を作り、私たちの方へ飛ばす。
そして手の甲を見せると、外へ走り去ってしまった。誰も彼女を追い掛けることができなかったのは、みーなの手の甲にあくまのマークがあったからだ。紙飛行機が私の額にコツン、と当たって落ちた。
「はあああああああ!?なんなのあいつ!」
「落ち着けレナ殿!」
混乱も束の間、すぐさま次のことが起きた。
「みんな!茂木くんから電話が来てるわ!」
盛川さんがそう告げるや否や、全員が受話器のまわりにあつまる。怒濤の展開ってやつね。
「聞いてください、藤原はなんらかの理由であくまに寝返りました!もしかしたら洗脳とかかもしれません!だからうかつに信じないようにしてください!」
場が静まる。疑惑が、確信にかわった。
「茂木くん!?無事なの?いまどこに……」
ブチッと音がして、電話が切れた。これは事実だろうか。それとも、策略?
「藤原がどうなったのかはとりあえず置いておくと。大山は紙飛行機を開いてみるたい。なんか書いてあるとね」
そうだ。考えるのはもう少し先、情報を集めてから。くしゃくしゃになった紙には、みーならしい綺麗な字で
「茂木を誘拐した。明日正午までに武器を捨てて投降しなければ殺す」
とあった。なんだか変な文章。しかも明日って学校あるんだけど。なんて下らないことを考えていると、右下の署名に目が留まった。なんだ、にせものじゃない。
「ボス、ここみてください。みーなより、って書いてあるところ。みーなはいつも名前じゃなくて肉球をスタンプするから、この手紙は偽物です」
なるべく論理的に、理路整然と述べると、ボスが頷く。
「たしかにそうったい。なら、さっきの藤原はあくまの変装あたりが有力とね」
「みーなも茂木と一緒に捕まってる可能性が高いです」
当然、我らが美南様だもの、裏切るわけ無いわ!そのとき、私たちを後押しするように盛川さんが言った。
「美南ちゃんからのSOS信号をキャッチ!座標特定します」
完全なる追い風だ!私は愛銃デザートイーグルと、みーなの愛刀ちんちん丸をひっ掴んで駆け出した。あ、まだ場所聞いてなかった。一旦戻って座標をおしえてもらい、再び走り出した。