表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

ネトコン14応募作品

リンとフジ

作者: 冬月 聖

 教室の窓からグラウンドを眺めている私の幼馴染みのフジは、極端に無口だ。一日に五回声を聞くか聞かないかというくらい、何も話さない。

 その代わりに、感情に合わせて表情が変わるから、何を考えているのかすぐにわかる。そんなフジとは幼稚園の頃からずっと一緒で家も近所だから、付き合いも長い。


 彼の好きなもの、嫌いなもの、興味のあること、悩んでいること。色んなことを私は知っている。もちろん、フジも私の色んなことを知っている。


 でも一つだけ、彼に言えてないことがある。

 それは、フジのことが好きってこと。

 私は、いつの間にかフジに恋をしていた。



 だけど、この想いは叶わない。

 だって。



「……」


 一点を見つめるフジの視線を追う。そこには、クラスメイトの男子がいる。



 フジの恋愛対象は、同性だから。



「……」


 グラウンドで楽しそうにサッカーをしているクラスメイトを見ていると、胸の辺りが痛んだ。遠くに見える山に視線を移しても消えない。嫌だな、この痛み。


 彼の恋愛対象を知ったのは小学五年生の頃。

 二人でフジの家で遊んでいた時に「リンだけには知っていて欲しいことがある」って言って話してくれた。それを聞いて、正直驚いた。「まさかフジが」って思ったけど、偏見はなかった。誰が誰を好きになろうと、自由だと思ってるから。

 なのに、心はモヤモヤしていた。何だろうってずっと考えてた時、初めて自分の気持ちに気付いた。


 そこから私は、叶わぬ片思いをしている。


「フジ、見過ぎだよ」


 指摘すると、フジは恥ずかしげに私と同じように視線を遠くの山に移した。そういう反応、可愛いなぁ。私が小さく笑うと、フジが不貞腐れた表情を向けてきた。きっと「何で笑ってるの?」って思ってるんだろうな。


「フジの反応が可愛かったからだよ」


 言いながら、少し高いところにある頭をわしゃわしゃと撫でる。

 すると、フジにお返しとばかりに同じ行動をされた。


「わっ、何するの!?」


 私は思わずフジから手を離した。フジを見上げると、ニッと笑った顔が見えた。胸がキュンとなる。私の、一番好きな表情。

 ついつい、じっとその顔を見つめてしまう。


 すると、フジが不思議そうに見つめ返してきた。

 その視線が私を我に返らせる。


「ごめん、ボーッとしてた……!」


 慌てっぷりが面白かったのか、フジがまた笑った。私もつられて笑う。

 とりあえず話を逸らそう。不自然じゃない話。


「あ、そうだ! 今日の放課後、ラーメン食べに行かない?」

「行く!」


 彼の明るい声と表情が、私を嬉しくさせる。

 私の気持ちを伝えたら、きっとフジを困らせると思う。二人の関係が壊れることはないだろうけど、そんなことさせたくない。だから、気持ちを言えずにいる。いや、言わなくていいんだ。

 フジの隣にいられるだけで幸せだから。

 これ以上は、何も望まない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
少女の儚くも、でもしっかりとした想いの詰まった恋心が、パステル調の透明感のある文章で綴られています。 男の子との関係性も理想的で、憧れのシチュエーションでした。 だからこそ、男の子の嗜好が自分の向くこ…
[良い点]  なんて優しい文なんだ。  叶わぬ恋と知りながらも変わらず接する姿は健気で尊く、何よりすごく愛おしい。  短編故の美しさ。  そして儚さを巧みに活かせていて、凄く心に染みました...! …
[一言] 柔らかさと物悲しさを感じる、優しい話だなあ、と思いました。 2人に可愛らしさが感じられるところがとても読んでいて楽しかったです!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ