新卒で疾走した話聞く?
初めは何でも、そして誰もが辛いと感じるもの。
私だけじゃない。
私が悪いと思うな。
理解しないから。頭が悪いから。学力が足りないから。
私だけが置いて行かれてる気がする。
だって、勉強してこなかったから。
こうやって私は生きてきた。
二十三年間。
こうやって。
そうしたらどうなったと思う?
…私は疾走した。
第一章 深夜の衝動
ドクン。
と、体の中心が叩かれた気がした。
そんなあってもないような衝撃に駆られて、私はビクリとして目を覚ました。
またか…。
そう心の中で思ったかと思えば、鳩尾辺りに痛みを覚えた。
最近ずっとそうだ。
だが、病院へは足を運ぼうとは思わなかった。
理由は簡単なものだった。
一つ目は、単純に面倒臭いということ。
そして二つ目は、病院に足を運ぶほどの心の余裕がないこと。
これだけの事だった。
それに、新卒が腹痛を患うなんて百パーセントと言っても過言じゃない。
飽くまでも私個人の意見に過ぎないけれども、
社会人をそれなりに経験してきているサラリーマンでさえ
そういった症状になったりする。
何か他の病気かもしれないだなんていう発想も無い。
都合よく病気になっていたら人生苦労しない。
…都合よく病気…か。
うっすらと目を開けた。
真っ暗な部屋は闇に包まれていて、世界から光が消えたんじゃないかって
思ってしまう程だった。
…都合よく病気になってくれたら。
そんな事、人生で一度も思ったことがなかった。
自分が病気になりたいだなんて、思う日が来るなんて。
新卒っていうのは、皆こうなのかね?
そう思いながらも、私は再び眠ることだけに集中した。
眠らなきゃ、明日が辛い。
夜遅くまで起きてしまったから、明日起きるのが辛くなる。
焦りが余計に睡魔を遠ざける。
私は仰向けになって天井を見る。
見えるはずの天井が暗闇に覆われていて、白い色をした天井が
底なし沼のように見えた。