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漂流秘密基地

 机や椅子が散乱している指令室の中で、水をぼーっと眺めているのにも飽きた。


別にエルに言われたから見ているわけではない、やることがないし体がだるいからだ。俺の横でライオネルは黙々と首を回したり、股を開き腰に手をあてトレッチをしている。

 

 どこに行くのかも、もしかしたらどこにも行き着くことがなくこのまま漂って終わるかもしれないこの状況。


 ただ俺とライオネル、機能制限があるエル・プレジット、それに残った戦闘員だけじゃ今出来ることなんて何もない、まあせいぜい指令室の片づけくらいか、現状はエナジーポット室で治療中のドクターイリスが出てくるの待ちといったところだった。


 しかし眠い、眠すぎて、尻が椅子から離れない、腕を組んで顎をかけ必死にうつぶせになるのを避けてはいるが、いつ崩れ落ちてもおかしくなかった。


 ただ総統としてこんな状況でも無様な姿を見せるわけにはいかない、誰よりも先に爆睡してたら格好悪いだろう。威厳もへったくれもあったもんじゃない。


 それもこれもヒーロー達のせいだ、秘密基地の場所が世間に知れ渡った時からここ数か月、ほぼ寝ていない日が続いたからだ、くそ。


 バレた日からはやることが山ほどあった。秘密基地の改築だろヒーロー達への対策会議に防衛線にする秘密基地近くの山岳地帯への兵器や塹壕の増強もやったなそれに……あーなんかむかむかしてきた。一つ一つ思い出していくだけでむかむかしてくる。これも全部ヒーロー達が悪い。


 イライラして椅子を蹴りたくなったくらいの時に三人の戦闘員が部屋に戻ってきた。


 戦闘員達は黒い仮面を付けているので、その裏側にある素の表情は読み取れなかったが、彼女達もたぶんきっと疲れているはず、俺の後ろをずっとついてきて優秀な秘書っぷりを発揮してくれていたのだから。


 彼女達は部屋に戻るなり、何を言われたわけでもなく、すぐさまテキパキと乱雑に散らかった指令室の中を掃除しはじめた。有能。


 髪が赤髪の戦闘員の一人が、外の様子をモニターに映し出そうとしていたが、カチカチパチパチと色々操作しているようだったがモニターは何も映し出されることはなかった。


「レッド、外のカメラなら壊れてますよ」という興味なさそうな無機質なエルの声がスピーカーから流れてきた。


 レッドと呼ばれた赤髪の戦闘員は疲れ切った深いため息をついて、なにもないよりはましだろうという風情で秘密基地の内部カメラに切り替え、モニターには廊下やエナジーポット室、倉庫の様子などが映し出された。


 俺に付いて回った彼女達、総統閣下付きの戦闘員の三人、その三人は仮面の後ろから伸びる髪の色が、それぞれ赤髪、青髪、金髪と髪の色が違っていたので、レッド、ブルー、ゴールドとみんなからはそう呼ばれていたし俺もそう呼んでる。イエローじゃないのは信号機ってあだ名になるのが可哀そうだったからだと思う。


 ただ俺としてはその呼び方が、戦隊物ヒーロー達の呼び方と似ているじゃないかとむしろ一緒じゃないかと心の中に大きなしこりがあったが、見たままで呼びやすいし、誰が言い始めたかわからない内にそのそれぞれの髪色で呼ぶことが定着していたのでもう変えようがなかった。いちいちそんなところで目くじらを立てて、器の小さな総統だと誤解されるのも嫌だったしな。


 ここはひとつ器の大きさを見せるために彼女達をさっさと休ませるべきだろう。


「お前達、ここの片づけはもういい、大分疲れているだろう、部屋に戻って休んでくれていいぞ」


 俺のその言葉を聞いた三人はピタッと動きを止めてこちらを向いた。


「いいんですか? 閣下」一番初めに口を開いたのはゴールドだった。


 ゴールドはレッドとブルーよりも背が高く、いつも率先して前に出て三人の纏め役といった感じだった。


「ああ構わない、ゆっくり休んでくれ」


「じゃ、じゃあ、お言葉に甘えて、失礼します」とゴールドが言うと残りの二人も失礼しますと言って司令室を出て行った。


 指令室には、フッフッフッというライオネルが筋トレしている声だけが響くようになった。なんか鬱陶しいな、いやなんかじゃないひどく鬱陶しい。こういうのは一回気になると気になってしょうがなくなる。


 こいつは眠くないのか? ライオネルも寝てないはずだが、まあいい俺も部屋に戻って寝るか。


「俺も休む、ライオネル、エル、もし何かあれば起こしてくれ」


「何かあれば起きるのなら、ずっと起きてればいいじゃないですか」


「お前みたいに寝なくてもいい機械の体じゃないんだよ」


「残念閣下、私にもスリープモードがあるんです」


「そうか、俺は突っ込まないからなおやすみ」 

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