ドライブが嫌いな男
俺はドライブが嫌いだ!
いや、別に車の運転そのものが嫌いということはない。
単純にドライブが嫌いなのだ。
だってそうじゃないか?
あてもなくただプラプラとするなんて意味がないと思わないか?
それならエンジンをうならせて直線をかっ飛ばして、
この軽やかに走る相棒とひとつになるほうがはるかに楽しい。
ましてや隣に女の娘が乗ってるならなおさらだ。
え?おっ、おいちょっと待てって、
別にいいだろ? 女の娘と過ごして何が悪い?
お前だってそのうちそうなるさ。
もうちょっと俺の話に付き合ってくれよ。
助手席を見れば笑顔の君がいた。
その笑顔が見られれば本当に幸せだった。
他に何もいらないくらい、本当に幸せだった。
でも俺はドライブより早くどこかで落ち着いて、
君の手を握ったり、抱きしめたりしたかったんだ。
そうする事ですごく安心するし、興奮だってする。
でも今は隣に誰もいない。
どうして居ないかって?
どうしてなんだろうな。
運命の悪戯……だったのかもしれない。
いや、それはどうでもいいんだ。
別に居ないのがいいわけじゃないぞ?
ただ……いや、うん、そうだな。
居なくなって気が付くというのはよくある話で、
君を隣に乗せて、このくそったれな俺の住んでる街を、
あれ? なんでこんなくそったれな街を君に紹介したいんだろう?
俺の好きな曲流しながら連れまわしてさ、
テンション上がって歌いだしたりしながら俺の歌を聴いてもらって、
俺の事もっともっと知ってもらっちゃったりなんかしちゃって……
今度は君の街を観に行きたいな、
そんなこと思ったりしたんだろうな。
本当にあっという間だったんだ。
まるで花火のように一瞬の恋。
ああ、ほんとドライブってつまんねえな。
俺は誰もいない助手席をちらりと見て、
今日も車を走らせるのだろう。