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帽子男の短編集

なんだっけ

作者: 帽子男

 男は昼過ぎに起きた。起きるとものすごく頭が痛かった、理由は単純で酒の飲みすぎである。昨日の晩、仕事がうまくいき調子に乗ってしこたま飲んだのがまずかったようだ。彼は殺し屋。既婚者で、真面目で、それに腕の立つ殺し屋だ。昨日の晩も金持ちの富豪を一人殺した、そしていつもの仕事の給与より多くの金が口座に振り込まれたので、珍しくその殺し屋は浮かれて美味しいと評判のBarに入りそのまま遅くまで酒を飲み、フラフラで帰れなくなってしまったので近くにあったホテルで一晩過ごしたという事だった。

 殺し屋は起きるとシャワーを浴び、歯を磨き、朝食をとった。それから少しして殺し屋は何か重大な事を忘れている気がした。しかし、何を忘れたのか思い出せない。もしかして昨日の仕事内容にへまがあったか、そう考えた殺し屋は昨日の出来事を初めから思い出していった。


 午前8時、殺し屋はターゲットの写真を確認する。太っている豚のような醜い男の顔がそこには映っていた。さて、この醜い男をどうやって殺そうか、その男が住んでいる館の見取り図と警備員お呼び使用人の巡回ルート、そして男のスケジュールを確認する。まるで美術品のように守られている、使用人に化けて毒殺するのが良いか、それとも事故に見せかけて高い所におびき寄せて落としてしまうか、はたまた寝ている間にそっとナイフで刺殺してしまうのが良いか。

 まず、使用人化ける方法だがこれはやはりやめておこう。今日中に殺すとなると服や他の使用人に見つかった時の対策が不十分になってしまう。それに毒の入手するのは問題はないがどこで毒を混入させるかが難しい、却下だ。

 次に高い所におびき寄せる方法だがこれにも問題はある。今回のターゲットはかなり用心深い、寝るときにされ殺されるかもしれないと言って使用人を部屋から追い出すほどだ。例えば館の「お前の秘密を知っている、屋上に一人で来い」などと手紙で誘ってみてもたぶん来ないだろう。ある意味殺害ではなく、自殺になる方法を取りたかったが、これも却下だ。

 次だがいつもやっている後ろから刺殺してしまう方法はそうだろうか。この男は自分が寝ているとに誰も部屋に入れることはない。部屋に入ってしまえば殺すのは簡単であるし、朝に誰かが起こしに来るまではそのままだろう。侵入経路はどうだ。その男の館は森と隣接しており、森の中を隠れて木に登って部屋の近くの廊下に窓から入ってしまえば問題は無いだろう。廊下で使用人にあってはしまわないか、それも心配無用、使用人の監視時間は把握している。男が寝る午後9時から一時間交代で使用人が代わる。交代の時、他の使用人が来るまで三分の時間が空くことも知ってる。その隙に部屋に入ってしまおう。部屋には鍵がないことも確認済みであるし、これなら大丈夫であろう。


 午後2時、殺し屋はいつも行く殺し屋専門の裏雑貨屋から新しいロープとナイフを買い、館に隣接している森に入った。森の中は薄暗く視界がかなり悪かった。視界が悪いという事は外からも殺し屋を発見しにくいという事なので好都合であった。男は今晩のために準備をする。まず廊下の窓に一番近い木にロープを括り付けいつでも登れるようにする。次に木に登り廊下の状況と使用人がきちんといるか確認する。使用人が自分が持っている警備員お呼び使用人の巡回ルートが正しいか確認するためだ。廊下に誰もいなくなったところで殺し屋は窓の鍵を外から開ける。まず外側から窓の両はじを持って多少強めに上下に揺すり、そうするとその振動で少しずつカギが外れていった。完全に外れると殺し屋は問題が無いと判断し木から降りて夜になるのを待った。


 午後9時、木に登り男が寝室に入るのを確認する。ここまでは問題ない、あとは一時間後に使用人が交代するのに合わせ中に入りターゲットを殺しだけである。

 

 午後10時、使用人が交代のため他の使用人を呼びに行った。今だ、殺し屋は窓からスッと忍び込みターゲットの男の部屋に入った。男はぐっすりと寝ていた。男は喉にナイフを一突きすると男の写真を撮り部屋を出て、窓から木を伝って降りた。ロープなどの痕跡が残らないように持ってきた物をすべて回収すると男は雑貨屋に寄ってそれらの始末をしてもらい、依頼主に写真を送り、それを消した。それから、普段着に着替えて殺し屋はBar向かった。


 午後11時30分、殺し屋はかなり酔っていた。近くの交番に「この辺に安くて綺麗なホテルはないか?」と尋ね警官にホテルまで連れて行ってもらい。そこでぐっすりと寝た。


 ふむ、特にはなさそうだ。いつも通り朝に作戦を立て、仕事をし、仕事をした日にBarに行って一杯やる。

昨日は一杯では済まなかったが、それ以外は別段変わったものはない。なんだっけか、何を忘れているんだ。 

 テレビでは昨日殺した男のニュースが流れていた。特に変わったことはないよな。


「7月5日、今日のニュースをお伝えしました」

 

 男はハッと気づいた、今日は嫁の誕生日だ。今の時間は13時。これから殺し屋にとって死んだ方がましな出来事が起こる事が起こる、そんな気がした。

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