復讐者2
”ヨルムンガンド”の準備には、早くても10分はかかるであろう。
それまで私が生きていればいいのだが。
銀華はそう思いながら右手のヘルの引き金を引く。
撃ち出された弾丸は魔法障壁を貫通するが、強固な鱗を貫通する事は出来ない。
やはり手持ちの火力ではダメージを与える事は不可能である。
「おや、姫様は変身しないのですか?」
「お前相手にその必要はない。」
「ふん、強がりだな。」
巨大な右腕を振り上げて、こちらに向けて勢いよく振り下ろす。
急いで後方へと跳ぶと、数秒前に立っていた床は粉々に砕け散る。
あの鋭利な爪の前では、魔法障壁ごとこの身を引き裂かれるだろう。
「まぁ、当てられればだが。」
今度は狙いを右目に変えて、ヘルの引き金を引く。
無防備な目ならば攻撃も通るはずだ。
宗月は目をかばうように左手で顔を覆った。
弾丸はやはりその鱗に弾かれる。
しかし銀華は、同時に左手のナルヴィの引き金を引いていた。
「奇術弾」
撃ち出された弾丸が全て掻き消える。
状況を理解出来ない宗月は、がむしゃらに両手で虚空切り裂き続ける。
「そこかぁ!」
微かな魔力を頼りに左手を振り下ろす。
数発の弾丸が切り裂かれた。
「残念、外れだ。 ”ウィンドカッターⅢ!”」
「何っ――ぎゃぁぁぁぁああ!」
咆哮のような悲鳴が上がる。
宗月が切り裂いた弾丸の反対方向から飛来した弾丸は、確かに彼の左目を貫いたのだ。
風の刃が、その目をズタズタに引き裂いた。
奇術弾は、通常以上の魔源を込める事により遠隔操作を可能にした技だ。
先程の場合、わざと魔法を発動させて相手の注意を引き、本命を叩き込んだというわけだ。
「隊長! 準備できました。」
「よくやった!」
部下の報告を聞き、銀華は唇を吊り上げた。




