オペレーションナガルザル2
「いいかレイ、今回もいい子でお留守番してるんだぞ。」
「……」
レイは何故か神妙な面持ちでこちらを見ている。
俺はあえて視線を逸らして、準備を続ける。
「返事がないな、どうなんだ?」
「――やだ。」
「ん?」
明らかに様子がおかしい。
確かにいつも怒ってはいるのだが、返事はしてくれていた。
明確に拒否反応をするのは初めてだ。
「そうやって、また私を一人にするんでしょ?」
その瞳には涙が浮かんでいた。
”また”
彼女はそう言った。
それは普段の任務に対する”また”なのかそれとも――
「レイ、それはどういう――」
「どうしてそんなに死にたがるの!」
問いただす前に、彼女の言葉に遮られる。
「そうやって、お兄ちゃん達は私を一人に――」
レイは急にふらりと倒れかける。
俺は咄嗟にレイの身体を抱きかかえた。
腕の中で、頭を押さえながら苦しそうにしている。
「くっ……!」
俺は急いで医務室に走った。
まさか、彼女の記憶が戻りかけているのだろうか?
息も荒く、額には汗が浮かんでいる。
俺は走る速度を上げて医務室を目指す。
彼女の異変に気づけなかった俺の責任だ……
すまない、レイ――
俺は医務室に駆けこむとすぐにベッドにレイを寝かせた。
医者は驚いた顔をしたが、彼女を見るとすぐに診察を始めた。
「こりゃぁ、魔源が不安定になっとるな。」
「どういう事だ?」
「彼女のエーテル器官が何かに過剰に反応しとるんじゃ。」
そう言いながら、医者は彼女に何かを注射した。
次第に、レイの表情が柔らかくなっていく。
「レイは、過去の記憶を思い出しそうになっていた。」
「それが関係しているのかもしれんのう。」
知らなかった。
もしかしたら、この症状を今まで隠していたのかもしれない。
そうさせたのは、俺だった。
「すみません、俺は任務があるので彼女を頼みます。」
「あぁ、分かった。」
そうだ、この任務が終わったら彼女を元の世界に返してあげよう。
そうしたら彼女も良くなるかもしれない。
彼女の戦いはもう終わっているのだ、普通の少女としての人生を歩ませたい。
ならば、ここにいるのは間違いだろう。
そして、その傍で最後まで彼女を守るのが俺の仕事だろう。
「さっさと終わらせてくるか。」
先を考える事で、目の前の恐怖を押し殺した。
それが、俺に出来るやせ我慢だった。




