背負うもの1
帰還後に待っていたのは、副隊長のお説教であった。
たっぷりと二人で絞られ、解放されたのは1時間後であった――
「はぁ……」
「葉助、吸うか?」
副隊長の晧月さんが煙草を差し出してきた。
俺は煙草を受け取ると、魔法で火を点けた。
口に咥え、軽く煙を吸う。
「俺も心配なんだ、あの人に何かあったらと思うと……」
「晧月さん……」
「そういえば、お前に銀華さんの話をした事がなかったな。」
頷くと、晧月さんはソファーに座るように促してきた。
俺は素直に従い、ソファーに腰掛けた。
「あの人はな、全てを奪われたんだ。 地位も、家族も――」
銀華様は、時空龍達の王”九垓”様の娘として生まれた。
つまり王女様だったって事だ。
それが何故、こんな生活をしていると思う?
彼女の父はとある男の計略で殺されたのさ。
その犯人が、お前もよく知る宗月さ。
当時の奴は宰相という立場にいて、自らが王になる事を望んでいたのさ。
まぁ、結果としては失敗に終わったがな。
王は殺せたが、肝心の戦争に負けて時空龍達は敗走した。
各地の世界に生き残りが散らばり、宗月はこの世界で偉そうにふんぞり返ってるわけさ。
「つまり、銀華さんの目的は復讐?」
「その通りだ、だからこそ危なっかしいんだよ。」
そう言って晧月さんは遠くを見つめるように天井を見上げた。
それは何かを思い出すような顔だ。
「もう、あの人を守れるのは俺だけになってしまった。 みんな死んじまったのさ。」
「……」
「俺もいつまで生きてられるか分からねぇ、だからお前に――銀華様を守ってもらいたい。」
「俺に?」
「そうだ、あの人を守って欲しい。 それが出来るのは、きっとここではお前だけだ。」
俺が、守る?
俺よりも遥かに強いあの人を守る?
守られてるのは、俺の方だ――
最初から、そして今も……
「お前に重荷を押し付けるようで悪いな。」
「俺に、出来るでしょうか?」
「仮にも、俺はそう思ってるよ。」
守る――
その言葉が頭の中で反響していた。




