初めての仕事3
ぴちゃぴちゃと耳障りな水音が聞こえてくる。
その音に合わせて、頬を何かが這っている感触――
気持ち悪くなり、手で撥ね退けようとするが、両腕が動かない。
徐々に意識が覚醒していく中、自分が置かれている危機的状況に声も出ない。
どうやら、今ベッドの上に横になっているらしい。
両腕は、ベッドの支柱にロープで縛られている。
目の前には、先ほどの男が覆い被さっていた。
先程の気持ち悪い感触は、どうやら男の舌のようだ。
「よう、お目覚めか。」
男はニヤニヤと笑っていた。
ターゲットは一人じゃなかったのか……
明らかに、この男はターゲットのお仲間だ。
「きもちわるい。」
「そう言うなよ、アイツが帰るまでに味見くらい許されるだろ?」
そう言ってペロリと唇を舐めた。
不思議と、激しい感情が沸き上がってこなかった。
ある程度、こういう状況になるのは覚悟していた。
さて、手は縛られているが、魔法を使うのには支障はない。
風属性の魔法を使えば、ロープを切るのに造作もないだろう。
問題は、コイツが離れてくれればいいんだが……
ピンポーン!
インターホンの音が家の中に響く。
「くそっ、お楽しみの最中に誰だよ!」
そう言うと、男は立ち上がり歩き出す。
どうやら来客の対応に向かうらしい。
これは抜け出すチャンスだ。
男が部屋を出たのを確認してから、ロープの位置を確認する。
”ウィンドカッターⅠ”
出力を抑えて、風の刃をロープに向けて放つ。
綺麗に両腕の真ん中を飛んでいき、ロープは真っ二つに切れた。
僕はベッドから起き上がり、静かに扉へと近づく。
――何か話声が聞こえる。
ゆっくりと扉を開き、聞き耳を立てる。
「てめぇ、俺より先に手ぇだすなって言っただろ!」
「わ、悪かったよ兄貴!」
男2人の話声――先程の男と、相手はターゲットの男か?
どうやら言い争っているようだが、これはチャンスかもしれない。
「やっぱりお前は足引っ張りだな……」
「兄貴……?」
ゴン! という鈍い音が響いた。
「いけねぇよなぁ、お前は出来損ないだからよぉ!」
何かを殴るような、鈍い音が規則的に聞こえてくる。
大体予想はつくが、ゆっくりと部屋から出て様子を伺う。
丁度、2階から下が吹き抜けで観察出来る作りになっている。
1階では、予想通りの惨劇が繰り広げられていた。
先程の男は、血塗れの床の上に寝そべり、ぴくりとも動かない。
その頭部は、無残にも潰れてしまっていた。
ターゲットの男は、鉄パイプを今も男の頭部に振り下ろす動作を繰り返している。
「くひゃひゃひゃ!」
下品な笑いを続け、それでも尚殴る事をやめない。




