運命の日3
その生徒手帳が全てを物語っていた。
あいつはもう――
「感傷に浸るのはそれくらいでいいだろう?」
「――貴女は!」
寮母さんは、冷え切った瞳でそう言った。
まるで、人の死など何も感じていないかのような目だ。
暗殺なんて言葉を軽々しく言える人なんだ、それが当然の異常者なのだろう。
「お前達には、今二つの選択肢がある。」
「どういう意味です?」
「黙って聞け。」
寮母さんの目の鋭さが増す。
睨まれただけで、心臓の鼓動が止まりそうになる。
「一つ目、時空龍共に捕まって実験体になる。」
あぁ、そういう事になるのか。
黒島の研究には、時空龍達も興味を持つだろう。
生きた検体がいるのならば、確実に手に入れようとするだろう。
僕達二人は、そもそも身を寄せる相手もいない。
逃亡の果てに捕まるのも時間の問題であろう。
「二つ目、私が与える試験に合格して、私達の仲間になる。」
「え?」
それは意外な選択肢だった。
この人達の仲間に? 僕達が?
ありえない、なんでわざわざそんな……
「私は、黒島を殺したお前達を評価している。 奴はかなりの魔法使いだった。
それを、子供二人が倒したという事実……」
「それがスカウトの理由ですか?」
「そうだ。 逃げ場の無いお前達には最高の申し出だろ?
住む場所も、仕事も与えてやろうと言ってるのさ。」
でも、その選択肢を選ぶという事は――
一瞬、黒島の顔が脳裏に浮かぶ。
僕も、人殺しになるという事だ。
生きるために、誰かの生を奪う存在に。
「さあ、どうする?」
「……」
横たわるレイの姿を見つめる。
そうさ、僕は守るって決めたんだ。
夢のあの人の代わりに、彼女を守ると。
「――その試験、受けさせてください。」
僕は、覚悟を決めてその言葉を吐き出した。
~ヴェネティア・スラム街~
ヴェネティアの西部に存在する場所。
急速な開発のしわ寄せで生まれた貧困街である。
家を失くした者、職を失った者、様々な事情の者達が集まり、1日の糧のために動いている。
犯罪も絶えず、それに対して警察も動く事が無く、無法地帯と化している。
それを利用する形で、あえてこのスラム街に”紅桜”のアジトが作られた。




