運命の日1
あの日の事は、今でもはっきり覚えている。
そう、あれは僕がレイを背負って歩いていた時だ――
―――
――
―
校舎が少しずつ離れていく。
僕等が帰る場所――寮を目指して歩く。
他に帰る場所もない、今思いつくのはそこだけだ。
重い身体を引きずるように進む。
背中に背負ったレイは冷たいままだ。
壊れかけた眼鏡が地面に落ちる。
それでも、前に進む……
「――したのか?」
「え……?」
人だ。
ぼやけてよく見えないが、そこに人がいた。
でも、この声はどこかで――
「黒島を殺したのか?」
「――」
そうだ、僕は黒島を――
急速に意識が遠のいていく。
もう、立っているのも、限界だ。
消えゆく意識の中、レイと健司の顔が浮かんだ。
―――
――
―
「おい、どうしたんだよ葉助?」
「健司?」
辺りを見渡すと、そこは見慣れた教室だった。
どうやら、休憩時間に眠ってしまっていたらしい。
目の前にいる健司が、心配そうにこっちを見ている。
「大丈夫か? まだ寝ぼけてんのか?」
「いや、大丈夫だよ。」
「そうか、なら良かったよ。」
そう言って健司が微笑む。
その笑顔は、どこか寂しさを感じさせるものだった。
「健司?」
「頑張れよ、葉助。」
「――健司!」
――
―
伸ばした手が空を掴む。
その時点で、僕の意識は現実に戻っていた。
「派手なお目覚めだな。」
聞き慣れた声が聞こえる。
ぼやけた人影は、僕に眼鏡を手渡してくれた。
それをかけて、改めて相手の顔を見る。
「寮母さん?」
「あぁ、そうだ。」
いつもと雰囲気が違うが、間違いなくその人は寮母さんだった。




