決戦の時2
敵の姿は見えない。
部屋が更に歪み、事態は悪化する一方だ。
「ふふふ……」
黒島の不気味な笑い声が部屋中に響く。
まるで嘲笑うかのような響きに苛立ちが増す。
「くそっ!」
”ウィンドカッターⅢ!”
真空の刃を広範囲に拡散させて放つ。
しかし掠った感触はない。
「無駄だよ。」
まるで、奴がここに存在していないかのような……
いや、本当に存在していないのではないか?
心を落ち着けてもう一度思考をめぐらせる。
「……」
そもそもこの部屋におびき寄せるのが奴の目的だったとしたら――
「観念したか。」
だとすれば、この部屋から脱出しなければ。
「では――死ね!」
全方位から真空の刃が迫る。
これは、マジックシールドでは防げない――
パリン!
何かが砕ける音が響く。
空間に裂け目が出来ている。
「こっちだ!」
誰かの声がする。
僕は夢中でその裂け目に飛び込んだ。
――
―
そこは見覚えのある廊下だった。
どうやらあの空間からは脱出できたようだ。
「葉助、よかった……」
「レイ!」
声の主は僕がよく知る人物だった。
いつもの見慣れた障壁を展開したレイの姿だ。
「校舎が歪み始めて様子を見に来たら――ぎりぎりだったな。」
「ごめんレイ……」
「大丈夫、これは戦いじゃない。」
それでも僕はまたレイを危険な目にあわせてしまった。
しかし、このままでは――
校舎の歪みは着々と進行している。
それは境界移動が進行しているのと同義である。
”……”
一瞬誰かの気配を感じて振り向く。
”……”
あぁ、彼女だ。
今まで何度も僕の前に現れた……
過去のレイの姿をした幻影。
それが今、再び僕の前に現れたのだ。
”……”
彼女はついて来いと言わんばかりに、僕達に背を向けて歩き出した。
「葉助?」
急に歩き出した僕に驚きながらも、レイが後ろをついてくる。
――たどり着いたのは2階の警報機の前。
レイの幻影はにっこりと微笑むと、警報機を指差した。
これを押せっていうのか……?
警報機のボタンへと指を伸ばす。
「葉助、何を……?」
”そう、それでいいの”
誰かの声が聞こえる。
”私が干渉できるのはここまで、あとは貴方達が……”
強く警報機のボタンを押し込む。
ガチン!
何かがはまる音。
それと同時に、音もなく警報機のある壁が消えていく。
「この先に――」
この先に――奴の本体がいるのか。
おそらく相手はまだ気づいていないはずだ。
時間もない。
「レイ――」
「断る。」
言おうとした言葉は即座に却下された。
「お前の言いたい事はわかる、けど――」
「……」
「これが最後だから――だから!」
強い意志を持った瞳。
僕はそれを、止めることはできなかった。




