刻まれた真実の記憶1
夢だと思っていたもの、それは記憶の断片。
とある青年と少女の記憶。
「俺はお前が欲しかった。 自分だけのものにしたかった。」
青年は狂気に満ちた笑顔で語る。
少女は、この青年がもう自分の知ってる兄ではないと悟る。
「貴方は誰……?」
その問いに青年は行動で答えた。
「今こそ愛の契りを!」
青年はその血濡れの剣を……
――少女へと振り下ろした
しかし刃は、少女を切り裂く事は無かった。
「くっ、俺は……」
青年、ユニス・リヴァイアスは何かに耐えるように苦悶の表情を浮かべている。
少女には分からなかった。
自分の両親を殺したのが、本当に自分の最愛の兄なのか。
目の前には確かに兄がいる。
しかし、兄であって違う者を感じている。
「貴方は誰……?」
もう一度同じ問いを投げかける。
「俺は!」
ユニスは握っていた剣を自らの腹部へと突き刺した。
少女は、兄の唐突な行為に唖然となって見ている事しか出来なかった。
「いいか、よく聞け。」
腹部から血を流しながら語りかける。
確かにその姿は、最愛の兄のものであった。
「お前だけでも、ここから逃がす。」
分からない。
何を言っているのだろうか……?
「お前が、クロトの手の届かない所まで……」
聞き覚えのある名前。
たしか校長先生の名前――
ユニスは、自らが妹に送った胸元のペンダントに触れる。
これは境界結晶を使って作ったものだ。
ペンダントが眩しく光りだす。
「えっ?」
何をしようとしているのか分からなかった。
ただ、兄が何かを呟くたびに光は強さを増していく。
「まずい!」
誰かが部屋に乱入してくる。
いや、見覚えがある――
「ちっ!」
その姿を捉えたユニスは、左手で短剣を投げつけた。
ずぶり!
っと短剣は男の左足に突き刺さった。
「何をしているユニス! これでは話が!」
「クロト、お前に邪魔はさせない!」
あぁ、この人を私は知っている。
セイントガルド魔法学校の校長先生だ。
「さっさと妹を殺せ! それでお前の願いは!」
ペンダントの光が更に増す。
「レイ、生きろ……」
ユニスは、少女――レイ・リヴァイアスに向けて最後の言葉を贈った。




