文化祭3
――だった。
ん……?
間違いだった。
「葉助、どうした?」
「な、なんでもないよ。」
不意に頭の中に浮かんだ言葉を振り払い、健司についていく。
健司はたこ焼きや焼きそばなどを両手いっぱいに持ち歩き、文化祭を堪能している。
というか食い気だけのような……
「そんなに食べてお腹苦しくならない?」
「いや、まったく。」
相変わらず驚かされる食欲である。
その姿に呆れていると、遠くに人だかりが見える。
「何の集まりかな?」
健司と二人で人だかりへと近づく。
そこには見覚えのある老人が、記者に囲まれていた。
黒島市長……
この魔道都市ヴェネティアの市長にしてこのラタトクス学園の学園長でもある男。
そのカリスマ性に民衆にも一目置かれる存在だ。
――視線が合った。
一瞬だけだが、間違いなくこっちを見ていた。
何故?
たまたま? それとも学園の生徒だから?
しかも、彼が微笑んだように見えたのは、それこそキノセイだろうか。
「どうした、葉助?」
健司に呼ばれて我に返る。
「ん、なんでもないよ。」
「今日のお前、なんかへんだぞ?」
――確かにそうかもしれない。
そうかもしれないが……
―は――だ。
「きっと寝不足で頭が働いてないんだよ。」
そう言い訳した。
健司に向けた言葉なのか、自分自身に言い聞かせたのか。
「おい、あれ見ろよ。」
健司が指差した先で、メイド服の誰かが黒島市長と話していた。
あの服は、間違いなくうちのクラス展のものだ。
「あんな子いたっけ?」
「いや、知らないな。」
二人で頭をかしげる。
そこまで人数の多くないクラスだ。
クラスメイトの顔を忘れるわけがない。
「どうする?」
健司がそう尋ねてくる。




