謎の転校生現る!2
授業の後、先生にみっちりしぼられてから教室に戻った。
どんな風にしぼられたなんて口でいえないくらいの苦痛だった。
「ところで健司、さっきの話の続きを教えて欲しいんだけど。」
先生にしぼられながらも、その事だけは覚えていた。
なんて律儀な青年なのだろうか僕は。
自分でも笑えてくるくらいだ。
「なんだよ、やっぱり気になってたんじゃないか。」
そう言って笑いながら僕の肩を叩く。
ちょっと力の入れすぎと思うのだが。
正直痛いんですよ筋肉馬鹿さん。
「そ、それで……転校生が来るっていってたけど?」
「おうおう、この時期に珍しいと思うだろ?」
確かにそうだ。
新入生ではなく、この6月に転入してくるというのは珍しい。
「噂なんだが、そいつは超エリート君らしいぞ?」
「エリート君ねぇ、でもなんでこの時期なのか。」
「それなんだよなぁ、まぁ所詮噂だしなんとも言えないよな。」
まぁその通りではある。
「そういえば健司。」
ふと、さっきの事を思い出したので健司に尋ねる。
「どうした?」
「さっきさ、外にいた女の子見なかった?」
「は? お前何言ってんの?」
予想通りの答えが返ってきた。
「だよねぇ~」
僕が見たあの娘は、なんだったのだろうか……
「まぁとりあえず帰ろうぜ~」
そう言って健司が歩き出す。
ふと、曲がり角から出てくる人影が見えた。
「あぶな――」
僕の言葉が間に合うはずもなく、二人はゴツンと衝突した。
「いってて、わりぃ……」
「――こちらこそすまない」
お互いに立ち上がり視線を交わす。
僕はそれを遠目で見ていた。
相手は初めて見る顔であった。
男とも女ともとれる美貌。
長く綺麗な金髪は後ろで一つに束ねられている。
ふと、先ほど見た少女に似ているなと思った。
「君は……?」
「あぁ、実は明日からこの学校で学ぶことになっている。」
僕の疑問の意図に気づき、そう答えた。
「へぇ、あんたが噂の転校生か。」
健司も興味津々である。
「私は、レイ・ラグナールだ、よろしく頼む。」
”ラグナール”
健司の言っていた超エリートの意味がそれだけで分かった。
誰もが知る3賢者の一人、カスパ・ラグナール。
その人物と同じ姓を名乗っているのだから……
かつて、人類は魔法を使うことができなかった。
60年程前に訪れた巨大な訪問者――蜥蜴のような姿の者達が現れた
彼らは自分達を時空龍と名乗り、人間達に魔法の知識を与えた。
その知識を初めて伝えられた3人が現在の3賢者である。
”バルト・ザーフィル”
”メル・オルフェン”
そして
”カスパ・ラグナール”
である。
魔術に携わる者であるならば誰もが知っている知識である。
「どうした?」
レイが困ったように首を傾げている。
正直、想像以上の大物であったため、僕も健司も思考が止まってしまっていた。
「な、なんでもないよ。」
とりあえず深呼吸をして高揚した気分を落ち着かせる。
「それで、一つ頼みたい事があるんだが……」
「別にいいけど?」
「実は職員室に行きたいんだが、迷ってしまってな。」
困惑してそう言った。
その程度ならいくらでもという所だ。
だが、先ほど職員室から戻ったばかりなんだけどね。
「それならすぐそこだし案内するよ。」
「うぇ、また戻るのかよぉ~」
健司はうなだれてそう言った。
まぁ気持ちはよく分かるが。
「すまないな……」
「お安い御用だよ。」
こうして俺達三人は職員室へと向かった。