↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Overline ~落ちこぼれ魔法使いは、実は天才!?~  作者: 空野流星
後編 エピローグ
143/144

無名の英雄3

―ヴィラン・ラタトクス学園―



「そして時空龍と我々人類の間に条約が結ばれ、戦争は回避されたのです。」



教室での授業風景。

教師の女性が近代史の教科書を読み上げている。

多くの者が授業に集中する中、一人だけ窓の外を眺めている者がいた。



「――せいっ!」



女教師はチョークを投げつけると、窓際の生徒の頭部にクリーンヒットする。



「いてっ!」


「お前! 今の話を聞いていたか!」


「す、すみません。」


「まったく、まるで――」



女教師は誰かを思い浮かべ、頭を振って振り払った。

その者の名を口にしてはいけない、それが決まりだったからだ。



「先生は、その戦いにも参加してたんでしょ?」


「そうよ、旦那――学園長と共にね。」



正直、死を覚悟していた。

カスパ・ラグナールの策が間に合ったのは奇跡としか言いようがない。



「じゃあ、”無名の英雄”ってどんな人だったんですか?」


「そうね、彼は”普通の人間”だったわ。 どこにでもいる――そう、あなた達みたいなね。」



そうだ、彼はただの人間だった。

生まれがどうであろうと、私の可愛い教え子だったのだ。



「でも、卓越した魔法の才能を持ってたんだろ?」


「そうね、でもそれと英雄になる事は別でしょ?」


「確かに……」



そもそも、彼はそんな事を求めてはいなかった。

ただ生き残るために必死で足掻いて、答えを探していたのだ。

そして私は、そんな彼に何も出来なかった。

私に出来るのは、名を伏せて彼を語り継ぐ事だけだ。

それが、彼の代わりに戦って死んだ晧月との約束でもある。



「ラグナール先生! ”無名の英雄”は最後どうなったんですか?」


「そこは教科書には記載されていないわね…… いいわ、特別に教えてあげる。」



女教師――キャシー・ラグナールは、一呼吸置いて口を開いた。



「彼はね、安息の地に旅立ったのよ。 そこは争いの無い平和な世界。

 残りの余生を静かに暮らしたかったのね。」


「へぇ、なんだがおとぎ話みたいですね。」


「別な世界でも平和のために戦ってるかもしれないぜ!?」


「確かに、それもありうるわね。」



想像を膨らませ、生徒達の憶測が飛び交う。

彼らの頭は”無名の英雄”の事で一杯のようだ。



「さて、授業を続けるわよ!」



時空龍殺(ドラゴンスレイヤー)しとして語られた彼は、今は無名の英雄として語られる。

これで少しは役に立てたのかしら……

ねぇ葉助、貴方は幸せになれたのかしら?



”ありがとう、先生”



ふと、声が聞こえた気がした。

風に乗って桜の花びらが飛び散る。


平和な日が、今日もまた始まる。






―完―

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。