迷宮の番人3
「……」
火内先生がそのまま立つ尽くしている。
これで合格なのか……?
「ふふふ……さすがですね。」
火内先生の表情に笑みが浮かぶ。
その笑みの不気味さに嫌な汗が流れる。
「き、きき君達はははは……」
「な、なんだ?」
急に火内先生の話し方が変になる。
刹那……
――グチャリ
火内先生の顔が割れた。
「え……?」
この世のものとは思えない状況に絶句してしまう。
「クケケケけけヶ!」
とても人間とは思えない笑い声を上げながらこちらに向かって走ってくる。
割れた頭部からは、うねうねと触手のような物が生えていた。
”まずい!”
とっさに魔法障壁を張ったが遅かった。
「うっ!」
触手を鞭のように振り回し、魔法障壁を貫通したそれは僕の身体を吹き飛ばした。
ドン! と背中に鈍い痛みが走る。
部屋の隅まで吹き飛ばされた事に気づくまでそれなりの時間がかかった。
朦朧とする意識の中で状況を確認する。
健司も同じように反対側の隅まで吹き飛ばされ気絶していた。
非常にまずい状況だ。
現実じゃないと否定したくなる。
こんなの――試験なんかじゃない!
レイ……逃げるんだ……
声にならない声をあげる。
化け物はレイの目の前まで迫っていた。
――あぁ、ダメだ。
無理矢理繋ぎとめていた意識が途切れかける。
「レ…イ……」
―――
――
―
”諦めないで”
声が聞こえたような気がする。
”――ならきっと”
少女。 そう、どこかで見たことがあるような……
”――で――”
よく聞き取れない。
何かを訴えようとしているのだろうか?
少女は右手を差し伸べた。
何故だろう。
でも無意識に僕は、その手をとった。
「僕は……俺は……誰だ?」
混乱する思考。
突如流れ込む情報の奔流。
脳の回路が焼き切れんばかりの熱を帯びる。
刹那――それは弾けた。
~境界移動~
境界線を越える秘術、又は越える行為の事を指す。
それなりの下準備が必要だが、本来ならば誰でも可能な魔法である。
現在は時空龍達がこの秘術を禁忌として禁止しているため行われる事はない。
ただし時空龍達は、この境界移動を頻繁に行っている。
ゆらぎと呼ばれる現象により、意図せず別世界に移動してしまう事も境界移動と呼ばれる。




