迷宮の番人2
「やぁ、おめでとう。」
男の声が響く。
広い部屋の中央に一人の男が立っていた。
その男はよく知る人物であった。
「火内先生……?」
2期生の担任である火内先生が何故かそこにいた。
「君達は無事に試験クリアだ。
後ろにあるゲートを通れば元の場所に戻れるよ。」
そうは言っても何か引っかかる。
ゲートを通るだけならわざわざここで待つ必要はない。
レイと健司も終わってない事を悟り、臨戦態勢になる。
「いやぁ、実に賢いね君達は。
そう、僕が最後の試験さ。」
いつもの笑顔を絶やさずに向こうも構える。
――ゴクリ。
「本気でかかってきなさい。」
空気の重さを肌で体感できる重圧感。
冷や汗が額から頬を撫で、床へと滴り落ちる。
お互い視線を絡み合わせ、長い沈黙が続く。
しかし、一瞬かもしれない……
”サンダーボルトⅡ!”
先に動いたのは健司だった。
雷が火内先生めがけて落ちる。
”マジックシールドⅢ”
火内先生の周りに魔法障壁が現れ、雷を打ち消した。
あの防御魔法はかなり強力な障壁である。
並の魔法は通用しないだろう。
「細かい攻撃で相手の魔源を削るか、強力な魔法で一気に攻めるか――どうする。」
「俺はお前の作戦に合わせるぜ。」
「私もだ。」
二人は僕を信用してくれている。
ここまで来るのに、3人共魔源をかなり消耗している、長期戦は不利だ。
「よし、一気に攻めよう! 健司、全力で頼む!」
「任しとけ!」
健司が詠唱を始める。
一撃で決めるには一番火力のある健司の攻撃が決めて手となる。
”ウィンドカッターⅡ!”
強力な風の衝撃の波を火内先生へと向けて放つ。
――ガキン!
当然の如くそれは魔法障壁によって弾かれた。
しかし、間髪入れずに僕は続ける。
”ウィンドカッターⅡ!”
――ガキン!
同じく魔法障壁によって弾かれる。
所詮は時間稼ぎだ、問題ない。
”ファイヤーウォールⅡ!”
レイも僕の攻撃に合わせる。
「待たせたな!」
真打登場とばかりに健司が笑顔を見せる。
頼んだぞ健司!
”フレイムタワーⅢ!”
強烈な炎の柱が魔法障壁ごと火内先生を覆った。
火内先生の顔が驚きに変わる。
パリーン!
魔法障壁が砕ける音。
僕達の勝利の音でもある。




