第三十九話「ボロ雑巾」
――――皇帝陛下謁見前。
「何をしておる!?」
「しかし皇帝陛下。アルシア皇女殿下が生きているという事実は」
「あやつは偽物じゃ! そんなことも分からんのか貴様は!!」
「しかし……」
声もそこから溢れる威厳もアルシア様そのものだった。
敵がわざわざあんな高等な策を使えるはずがない。
――――ナンバーズ専用控え室。
「2と7、本当なんだろうなあ?」
「あの声はアルシア様としか考えられない」
「しかし、皇帝陛下は偽物としか言ってねえぞ」
「それは!」
「それじゃあこういうのはどうだ?」
5が話に割り込んできた。
「何だ? 5」
「アルシア様を皇帝陛下の元へお連れする」
ほう、いい提案だ。
「俺様は賛成するぜえ」
「俺も賛成だ」
「では、アルシア様をお連れするという方向で」
「上出来でしたよ。アルシア皇女殿下」
「フンッ!」
アルシアが僕に向かって銃を構えて撃ってきた。
「やはり化物か。貴様は」
「やめてください。この力を使うのも結構苦労するんですよ」
「で、要件は?」
「私と共にエルダン国支配下、アジャナ国を制圧してほしいのです」
「私がそんな安い女に見えるか」
「牢獄での一生をお望みですか?」
「貴様! 人の弱みを!!」
「まあまあまあ」
なんやかんやで縁談は済んだ。
アルシア皇女殿下。
この単語は使い物になる。
上手くいけば敵のいくらかは寝返ってくれるかもしれない。
使えるだけ使わせてもらおう。
ボロ雑巾のようにな!




