第二十八話「アルシアのプライド」
「アルシア皇女殿下、お会いしとうございました」
「何の用だ。下郎が」
アルシアが牢の中で悪口を吐く。
さすがは王族。プライドが高い。
「今のその立場でその発言ですか」
「私は貴様みたいな下郎に話す口を持ち合わせていない」
「貴方にとって良い情報を持ってきたのですがね」
僕が彼女にもってきた良い情報とは、
彼女に新しい機体を提供するということだ。
ハルサ国の長を仕切っていた彼女は、兵士達だけではなく自らも戦線に出ていた。
彼女の操縦技術を拝見したことがあるが、並みの兵士以上のものだ。
さすがは王族といったところか。
そんな彼女に新しい機体を提供すれば即戦力となろう。
もし、裏切られたとしても力を使えばいいだけだ。問題ない。
「私が貴様ごときに協力するとでも?」
「余生をこの牢獄でお過ごしになるつもりですか?」
「いづれ父上が私を助けに来てくれるだろう」
「残念ながら貴方は見捨てられたのですよ」
「そんなはずはない!」
彼女は声を荒らげて言い放った。
「父上が……父上が私を見捨てるはずがないのだ」
アルシアは今にも泣きそうな表情をしていた。
「貴方のお父上がどんな方かは貴方が一番知っているのでは?」
「ぐっ!」
「アルシア皇女殿下。選んでください。私と共に戦い相応の地位に就くか。それとも意味のないプライドを守り、この場で死ぬか」
そう言うと、僕は彼女に銃を向けた。
「クッ! 分かった。協力してやろう」
「有り難き幸せ」
早速、僕は彼女を新しい機体の元へ案内した。
「な!?」
「すごい機体でしょう。見栄えもいい。その上強力なレーザー砲を装備しています」
「これはカールス兄様の機体ではないか」
兄様?
もしかして、あの時、この機体に乗っていたパイロットは王族だったのか?
「貴様! カールス兄様に何をした!!」
アルシアは僕に向かって怒りをむき出しにした。
「殺すつもりはなかったんです。彼は意味のないプライドを守り、自決しました」
「…………」
「さて、どうします? 協力するならこの機体は貴方に捧げましょう」
「クッ!」
アルシアは長考の末
「仕方あるまい。協力してやろう」
と結論を出した。
「いい答えです」
さて、我が国も徐々に力を付け始める。
エルダンと対等に戦える日もそう遠くはないだろう。




