第九話 チート
太陽はビル群に飲み込まれ、秋空にたなびく雲は茜色から群青色へと染まってしまっていた。
夕焼け小焼けが鳴り響きだした街、子供達は手を繋いで帰っていった公園で、金属が擦れ合う不協和音を鳴らしながら男子中学生が二人。錆びたブランコに乗りながら他愛もない会話に興じようとしていた。
『本格的に寒くなってきたな……このままでは凍えてシステムが強制ダウンしてしまう』
「高性能サイボーグがその程度でシステムダウンして堪るか。……しかし最近ぐっと冷え込んできたよな」
『耳あてにマフラーにコートに手袋と完全防備の貴様が平然とした顔で言っても説得力皆無だぞ。剥ぎ取ってやろうか』
「怖えよ。マフラー貸すから怒りなさんな。ほれ」
『むぅ……ぽかぽか……』
「マフラー一つでこんな幸せそうな顔してる奴初めて見た……でもそろそろ室内に移動した方が良いかもな」
『よし明日から霧島の家だな』
「何でだよ。普通に無理だかんな?」
『そんなにエロティックな本達を見せたくないのか……』
「殺すぞ。そんなんじゃなくて姉ちゃんがいるからだ」
『なっ……あの狂気のショタコンBLキラーが!?』
「帰宅部の暇人舐めんなよ……姉ちゃんと居たくないから俺此処にいるんだぞ……」
『漸くヒロインの登場フラグが経ったのにあまり嬉しくない……』
「それな……あ、話変わるけど凄い今更な事聞いていいか?」
『マフラーの恩だ、分からない事は何でも聞くがいい。Wikipediaで調べてやる』
「んじゃ聞く。小説ジャンル内にあるチートってどういう意味?」
『Wikipediaでチートを検索と……コンピューターゲームの……っておい。貴様先日俺と異世界転生について語り合っていたろうが』
「まあ異世界とか魔法とかは分かったから話は何となく通じてたけど。でもゲーム用語だったん? 何か違う気する……」
『すまんな、俺の携帯は検索に規制をかけられていてpixivすら見れない有様だからWikipediaくらいでしか調べられんのだ』
「pixiv見れないのはキツいな」
『知り合いの腐男子がpixivで18禁画像を見ようとしていたせいで18歳未満のサイボーグは携帯に規制をかけられたんだ』
「グレンとばっちりじゃねーか! 腐男子何してんだよ!?」
『「反省はするけど後悔はしてない」と言っていたな』
「喧しいわ」