第七話 VRMMO
太陽はビル群に飲み込まれ、秋空にたなびく雲は茜色から群青色へと染まってしまっていた。
夕焼け小焼けが鳴り響きだした街、子供達は手を繋いで帰っていった公園で、金属が擦れ合う不協和音を鳴らしながら男子中学生が二人。錆びたブランコに乗りながら他愛もない会話に興じようとしていた。
「VRMMOの世界に行きたい……」
『何を言うか霧島。俺たちが話しているこの公園は電脳仮想空間内の一角ではないか』
「おいこら。設定の鬼か貴様」
『そんな謎の称号は生憎持ち合わせてはおらん。軽いジョークではないか』
「お前常に無表情でテンション低いけど中身は全然クールじゃねーよな」
『人を見た目で判断するなと言われなかったか?』
「お前サイボーグだろが」
『だからサイボーグは人間を機械化改造したものであって――』
「アーハイハイソウデスカー」
「片言だと……? おいこっち来い。数発殴らせろ」
「でもまぁ、VRMMOって実際にあれば相当楽しいよな」
『露骨に話を逸らすな』
「VRMMOとか異世界トリップがやけに人気なのはさ、皆現実に嫌気がさしているからだと思うんだよな」
『お、おい霧島……?』
「だって現実世界は生きづらく、そして死にづらい。
昔は皆生きて行く為に必死で戦争ばっかだったのに、一部の地域の紛争を除いて比較的平和な現代の人間は皆生きるのに疲れているように見える……俺だって同じさ」
『どうした霧島。突然のシリアスなんて誰得でもないぞ』
「皆、結局は異世界という自分達の理想を詰め込んだ幻影に囚われて辛い現実から目を逸らしているんだ」
『……霧島ってたまに中学生とは思えない達観した発言をするよな』
「ドヤァ」
『うわっきも……』
「親友に対して酷い言い草だなオォイ!」
『馬鹿者が。貴様が親友だから素直に本音を言えるのだろうが』
「おぉ……グレンのデレキタコレ……!」
『デレ? 何を言っているのだ貴様は』
「厨二病とツンデレのコラボレーション……ありがとうございます……」
『どうした? 頭おかしくなったか?』
「元からさ」